消えたい神様と三百年の眠りから覚めた生贄

碧月あめり

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祭りの夜

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「あれは——?」

 由椰が小さな体に随分と重たそうな銃を抱えている子どもを心配そうに見ていると、パンッとまた音がして、屋台の奥の棚にあたる。

「あ~あ、だめだった」

 屋台の店主に銃を渡すと、男の子は残念そうに肩を落として店から離れている。そばには父親らしき人が待っていて、悔しそうに何か話す男の子を宥めるように頭を撫でてやっていた。

 その様子を由椰が眺めていると、

「ここの祭りは、ああいう遊戯の店も多いな。少しやってみるか?」

 烏月がぼそりとつぶやいた。

「ちょっと待ってください……」

 屋台のほうへ歩き出そうとする烏月の浴衣の袖を、由椰は慌ててつかまえる。

「なんだ?」
「あの銃は危険ではないのですか?」

 由椰が不安そうに訊ねると、烏月が目を細めてククッと笑う。

「あれはコルク弾を詰めて打つ簡易なもので、子どもも使える遊戯用だ。火など上がらないから安心しろ」

 烏月はそう言うと、屋台の店主に金を払って銃を借りた。一回の遊戯で使える弾は五つ。屋台の奥には三段の木の棚が作られていて、そこに的となる玩具や菓子が並べられている。

「あそこにある的のいずれかに弾をあてて倒せば、それが景品としてもらえる」

 銃の筒の先端にコルクの弾を詰めながら、烏月が遊戯のやり方を説明してくれる。

 烏月の両隣では、それぞれ若い男女と子どもが銃を構えて的を狙っていたが、うまく弾が当たらなかったり、当たっても商品の玩具や菓子は簡単には倒れない。

 意外と難しいのだなと思って由椰が見ていると、コルク弾を詰め終えた烏月が浴衣の袖を少したくし上げて、構えた銃を的に向けた。

 烏月の美しい立ち姿に目を奪われていると、パンッと破裂音がして、コルクの弾が小さな的に当たる。その勢いで、小さな菓子の箱がひとつ倒れた。

「わあ、すごいですね!」

 跳ねるようにして由椰が手をたたくと、そのそばで、烏月が次々とコルクの弾を的に当てていく。

 烏月が倒したのは全て、菓子の入った小さな箱で。遊戯を終えて銃を返却するのと引き換えに、五つの菓子の箱を受け取ると、それを全部、由椰の手に預けてきた。

「いただいてもいいのですか?」
「お前は甘い砂糖菓子が好きなのだろう。キャラメルにチョコレート。お前の好きそうなものばかりだぞ」

 由椰が目をぱちくりさせながら訊ねると、烏月が少しぶっきらぼうにそう言った。

 棚にはほかにもいろいろな種類の景品があったが、どうやら烏月は初めから、由椰のために菓子の箱ばかりを狙ってくれたらしい。

 祭りに連れてきてくれたり、由椰のために手鏡の贈り物をしてくれたり、遊戯で菓子をとってくれたり。今日の烏月は特別に優しい。

「ありがとうございます。大切にいただきます」

 由椰は烏月からもらった菓子を大事そうに胸に抱いてお礼を言うと、提げてきた巾着の中へと入れた。

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