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時瀬 蒼生・3
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◇◇◇
「榊はどこか行きたいところある?」
スタバを出てから訊ねると、榊は「うーん」と首を傾げた。
「今日はボウリングだと思ってたから、行きたいところは特に考えてなかったな」
「だったら、ボウリング行く?」
提案すると、榊が少し微妙な顔をした。
「もし行き先を選べるなら、ボウリング以外の場所がいいかな。実は、あんまり得意じゃない」
「あー、わかる。なんか、ガター連発してそう」
「否定はできないけど……」
ボウリングの球を重たそうに抱えて不器用にレーンに落とす榊の姿を想像してククッと笑うと、彼女がむっと頬を膨らませる。その横顔が可愛くて、おれはひとりで吹き出してしまった。
「じゃあ、映画でも見る? 今、何やってんだろ」
何気なくそう言ってスマホで上映映画を調べようとすると、おれのほうに一歩近寄った榊が横から手元を覗き込んできた。
「映画見るなら、アクションとかホラーとかがいいな」
「榊、ホラー好きなの? 今なんか怖いやつやってんのかな」
意外に思いつつ、スマホの画面をスクロールして上映中のホラー映画を探す。
おれの勝手なイメージでは、榊はホラー映画よりも邦画の恋愛系を好んで見てそうだけど。好みって見かけによらないよな。
「あ、今、ひとつやってるやつある」
スマホを寄せて見せると、榊が映画のタイトルを読んで微妙に顔を引き攣らせた。
「ごめん、やっぱりホラーはなしで。アクション系のほうがいいかも……」
「いいけど。見たいジャンルじゃなかった?」
「あ、うん……」
モジモジと何か言いたげにしている榊を変だな、と思っていると、彼女が「ごめんなさい……」と謝ってくる。
「ホラーが得意なわけじゃなくて、映画を見るなら、ストーリーがわかりやすそうなもののほうがいいかなって思ったの。わたし、出てる俳優さんとか女優さんの顔がよくわからないから、複雑な恋愛系とかサスペンス系の映画だと、誰が誰だがわかんなくなっちゃうんだ……」
「ああ、そっか。じゃあ、映画見ても楽しくねーよな」
「ごめん……、面倒くさいよね」
顔をうつむけた榊が、恐縮そうに謝ってくる。
なんだか今日は、会ってからずっと榊に謝られてばかりだ。せっかく一緒にいるのに申し訳ながられてばかりなのは違う気がする。
「謝んないでいいよ。今みたいに楽しめないことはちゃんと教えて。そのほうが、おれも嬉しいし」
「ありがとう……」
ボソッとそう答えた榊が、ほんのりと頬を染めて横目におれを見上げてくる。
物言いたげな視線に「ん?」と首を傾げたら、榊が足元に視線を落としてゆるゆると首を振った。
「いや、なんか……。時瀬くんてモテそうだなって思って」
「は? なんで? 全然、そんなんねーし。目付き悪くて怖そうって言われるのはしょっちゅうだけど」
優しいとか、モテそうとか。どうして榊は、今まであんまり言われたことのないような言葉でおれを持ち上げてくるんだろう。
おれの焦った声を聞いて、榊は下を向いてクスクス笑っていた。
顔の区別がつかなくても、赤くなってるとかそういうのはわかんのかな。もしわかるなら、今、最高潮に顔が火照ってるから、見られたら恥ずかしい。
榊から顔を背けると、しばらく周囲の人の流れに視線を向けて歩く。顔の火照りと気持ちを落ち着いてから、ふと視線を戻すと、隣から榊の姿が消えていてヒヤリとした。
おれがよそ見してる間に、他の誰かをおれと間違えて着いて行ったんじゃ……。待ち合わせのときの嫌な記憶が蘇ってきて、全身から血が引いていく。
焦ってきょろきょろと辺りを見回すと、榊はおれが立っている場所から一メートルも離れていないショーウィンドウの前で足を止めていた。
いた……!
ほっとして榊のほうに引き返そうとすると、ショーウィンドウに飾られた服を見上げていた榊がハッと振り向いて青褪める。
榊は、おれが歩み寄っていることにも気付かずに、泣きそうな顔で周囲を見回していた。そんな榊に向かってアピールするように手を振ってみたけど、おれを見失って余裕をなくしているのか、全然気付いてくれない。
目の前を行きすぎていく男の人を不安そうな目でひとりひとり確認するように見送っていて。わかっているようでわかっていなかった、「人の顔の区別がつかない」という榊の言葉の意味を思い知らされたような気がした。
「榊」
横から声をかけると、ビクッと肩を震わせた榊が怯えた目で振り返る。
「ごめん、よそ見してた。おれ、時瀬」
「時瀬くん」
榊がぼんやりとおれの顔を見ながら確かめるように名前を呼んで、赤いスニーカーに視線を落とす。それから、肩でほっと息を吐いた。
「ごめんなさい……。立ち止まったとき、声かけたつもりだったんだけど……」
「ごめん、聞こえてなかった」
人混みの中で離れたら、どうなるか。そんなことも想像できずに、一瞬でも目を逸らしていたおれも悪い。
「ほんとうに、わかんなくなっちゃうんだよな……」
「ごめん……」
ぼそっとつぶやくと、榊が心底申し訳なさそうな顔をする。
「そういう意味じゃないから」
榊が抱えてるものの意味を思い知らされたっていうだけで、彼女を否定したかったわけじゃない。言葉足らずな発言をしてしまったことに気付いて慌てて首を振ったけど、榊は哀しそうな目をしてキュッと口角を引き上げた。
「もう、帰る?」
無理やり作ったみたいな榊の笑顔。おれが最初に惹かれたのは、榊が瞬間的に見せるふわっとした無防備な笑顔だったのに。
今日一日、彼女に哀しい顔や不安そうな顔ばかりさせてしまう自分が情けなくて嫌になる。
「今帰ったら、榊が何も楽しめないままで終わっちゃうじゃん」
「でも、時瀬くんに迷惑かけてばっかりだし。また、離れて見失ったら――」
「じゃあ、離れないように掴んどいて」
だって、おれはまだ今日を終わらせたくない。
深く考えずに勢いのまま手を差し出すと、おれの手のひらを見つめた榊の頬がじわじわと赤く染まり始めた。
「え、っと……」
恥ずかしそうに躊躇われて、時間差でおれにも恥ずかしさが伝染してくる。
差し出した手をパッと掴んでもらえたらよかったけど、榊はそんなタイプじゃない。榊の反応からして、このまま手を繋ぐのはハードルが高そうだ。
仕方なく、榊の右手をそっと掴んでおれの左腕の服の袖に触らせる。
「ここ、どーぞ」
おれから服の左袖を提供された榊は、遠慮がちにそこを掴むとコクンと頷いた。小さな子どもみたいな彼女の仕草が、胸にぎゅっとくる。
ドキドキしながら足を一歩踏み出すと、ふと履いているスニーカーの赤が視界に飛び込んできた。
「そういえばさ、学校ではおれのことをどうやって認識してくれてんの?」
今日の赤いスニーカーは目立つけど、おれは学校中で特徴のあるものは身に付けていない。
うちの高校は、男子は規定服の黒ズボン、女子は規定服の紺のスカートを身につけていれば、上に着るトレーナーとかカーディガンやセーターは色も種類も自由だ。とはいえ、みんな似たり寄ったり。
不思議に思って訊ねたら、榊がおれの頭に視線を向けた。
「時瀬くんだって判断する基準は、髪の色と前髪の流し方」
「髪色はわかるけど、前髪?」
「今日は真ん中で分けてていつもと違うけど、学校ではおろしてちょっと斜めにワックスで流してるでしょ」
「ああ、そうだわ。てことは、前髪変わると区別付きにくい?」
「学校だったら、ちょっと迷っちゃうかもしれない……」
榊が肩を竦めて苦笑いする。それを見て、おれは慌てて額の上で前髪をぐしゃぐしゃ撫でて、いつもどおりに見えるようにした。
「でも、うちの学校って茶髪のやつ結構いるじゃん。髪型だけでおれってわかるの?」
「髪型は時瀬くんって判断する要素のひとつだよ。それ以外にも、見てるところがある」
「なに?」
「隣に立ったときの身長差とか、ハキハキした迷いのない話し方とか……、あとは、上履きの踵」
「上履き?」
怪訝に眉を寄せながら訊ねると、榊がふふっと笑う。
「時瀬くん、上履きのサイズ合ってなくていつも踵踏んでるでしょ。踏み潰されすぎてひしゃげてる上履きも、時瀬くんだって認識するのに役立ってるよ」
「へえ。じゃあ、おれ、この先も一生、上履きの踵は踏み潰すして生きていくわ」
真顔で言うと、榊が一瞬目を見開いて、そのあと「え、あ、うん……」と挙動不審気味に頷く。
「それでも、おれが声かけたときにちょっとビビったり、語尾上がりに名前を呼んで確かめてくるのは、今教えてくれた基準だけじゃおれって確証が持てないから?」
「そう、だね。それでも、100%時瀬くんだって自信はない。同じような背格好の人が同じような髪型をして踵を踏ん付けてたら、時瀬くんと思っちゃうかもしれない」
「たしかに、今榊がおれを認識してくれてる基準って、ちょっと曖昧だもんな。上履きは一生踵踏んどけばいいとしても、髪型は切ったりしたら微妙に変わっちゃうし……」
何かもっと、いつもある絶対的な目印みたいなものがあれば榊に認識されやすくなるのかな……。
しばらく考えて、ハッとした。
「榊、ちょっと今から買い物付き合って」
「うん。いいけど……」
榊が頷くまでの数秒が待ちきれず、おれの左袖を掴んでいる彼女の手を上から包んで引っ張る。
「榊はどこか行きたいところある?」
スタバを出てから訊ねると、榊は「うーん」と首を傾げた。
「今日はボウリングだと思ってたから、行きたいところは特に考えてなかったな」
「だったら、ボウリング行く?」
提案すると、榊が少し微妙な顔をした。
「もし行き先を選べるなら、ボウリング以外の場所がいいかな。実は、あんまり得意じゃない」
「あー、わかる。なんか、ガター連発してそう」
「否定はできないけど……」
ボウリングの球を重たそうに抱えて不器用にレーンに落とす榊の姿を想像してククッと笑うと、彼女がむっと頬を膨らませる。その横顔が可愛くて、おれはひとりで吹き出してしまった。
「じゃあ、映画でも見る? 今、何やってんだろ」
何気なくそう言ってスマホで上映映画を調べようとすると、おれのほうに一歩近寄った榊が横から手元を覗き込んできた。
「映画見るなら、アクションとかホラーとかがいいな」
「榊、ホラー好きなの? 今なんか怖いやつやってんのかな」
意外に思いつつ、スマホの画面をスクロールして上映中のホラー映画を探す。
おれの勝手なイメージでは、榊はホラー映画よりも邦画の恋愛系を好んで見てそうだけど。好みって見かけによらないよな。
「あ、今、ひとつやってるやつある」
スマホを寄せて見せると、榊が映画のタイトルを読んで微妙に顔を引き攣らせた。
「ごめん、やっぱりホラーはなしで。アクション系のほうがいいかも……」
「いいけど。見たいジャンルじゃなかった?」
「あ、うん……」
モジモジと何か言いたげにしている榊を変だな、と思っていると、彼女が「ごめんなさい……」と謝ってくる。
「ホラーが得意なわけじゃなくて、映画を見るなら、ストーリーがわかりやすそうなもののほうがいいかなって思ったの。わたし、出てる俳優さんとか女優さんの顔がよくわからないから、複雑な恋愛系とかサスペンス系の映画だと、誰が誰だがわかんなくなっちゃうんだ……」
「ああ、そっか。じゃあ、映画見ても楽しくねーよな」
「ごめん……、面倒くさいよね」
顔をうつむけた榊が、恐縮そうに謝ってくる。
なんだか今日は、会ってからずっと榊に謝られてばかりだ。せっかく一緒にいるのに申し訳ながられてばかりなのは違う気がする。
「謝んないでいいよ。今みたいに楽しめないことはちゃんと教えて。そのほうが、おれも嬉しいし」
「ありがとう……」
ボソッとそう答えた榊が、ほんのりと頬を染めて横目におれを見上げてくる。
物言いたげな視線に「ん?」と首を傾げたら、榊が足元に視線を落としてゆるゆると首を振った。
「いや、なんか……。時瀬くんてモテそうだなって思って」
「は? なんで? 全然、そんなんねーし。目付き悪くて怖そうって言われるのはしょっちゅうだけど」
優しいとか、モテそうとか。どうして榊は、今まであんまり言われたことのないような言葉でおれを持ち上げてくるんだろう。
おれの焦った声を聞いて、榊は下を向いてクスクス笑っていた。
顔の区別がつかなくても、赤くなってるとかそういうのはわかんのかな。もしわかるなら、今、最高潮に顔が火照ってるから、見られたら恥ずかしい。
榊から顔を背けると、しばらく周囲の人の流れに視線を向けて歩く。顔の火照りと気持ちを落ち着いてから、ふと視線を戻すと、隣から榊の姿が消えていてヒヤリとした。
おれがよそ見してる間に、他の誰かをおれと間違えて着いて行ったんじゃ……。待ち合わせのときの嫌な記憶が蘇ってきて、全身から血が引いていく。
焦ってきょろきょろと辺りを見回すと、榊はおれが立っている場所から一メートルも離れていないショーウィンドウの前で足を止めていた。
いた……!
ほっとして榊のほうに引き返そうとすると、ショーウィンドウに飾られた服を見上げていた榊がハッと振り向いて青褪める。
榊は、おれが歩み寄っていることにも気付かずに、泣きそうな顔で周囲を見回していた。そんな榊に向かってアピールするように手を振ってみたけど、おれを見失って余裕をなくしているのか、全然気付いてくれない。
目の前を行きすぎていく男の人を不安そうな目でひとりひとり確認するように見送っていて。わかっているようでわかっていなかった、「人の顔の区別がつかない」という榊の言葉の意味を思い知らされたような気がした。
「榊」
横から声をかけると、ビクッと肩を震わせた榊が怯えた目で振り返る。
「ごめん、よそ見してた。おれ、時瀬」
「時瀬くん」
榊がぼんやりとおれの顔を見ながら確かめるように名前を呼んで、赤いスニーカーに視線を落とす。それから、肩でほっと息を吐いた。
「ごめんなさい……。立ち止まったとき、声かけたつもりだったんだけど……」
「ごめん、聞こえてなかった」
人混みの中で離れたら、どうなるか。そんなことも想像できずに、一瞬でも目を逸らしていたおれも悪い。
「ほんとうに、わかんなくなっちゃうんだよな……」
「ごめん……」
ぼそっとつぶやくと、榊が心底申し訳なさそうな顔をする。
「そういう意味じゃないから」
榊が抱えてるものの意味を思い知らされたっていうだけで、彼女を否定したかったわけじゃない。言葉足らずな発言をしてしまったことに気付いて慌てて首を振ったけど、榊は哀しそうな目をしてキュッと口角を引き上げた。
「もう、帰る?」
無理やり作ったみたいな榊の笑顔。おれが最初に惹かれたのは、榊が瞬間的に見せるふわっとした無防備な笑顔だったのに。
今日一日、彼女に哀しい顔や不安そうな顔ばかりさせてしまう自分が情けなくて嫌になる。
「今帰ったら、榊が何も楽しめないままで終わっちゃうじゃん」
「でも、時瀬くんに迷惑かけてばっかりだし。また、離れて見失ったら――」
「じゃあ、離れないように掴んどいて」
だって、おれはまだ今日を終わらせたくない。
深く考えずに勢いのまま手を差し出すと、おれの手のひらを見つめた榊の頬がじわじわと赤く染まり始めた。
「え、っと……」
恥ずかしそうに躊躇われて、時間差でおれにも恥ずかしさが伝染してくる。
差し出した手をパッと掴んでもらえたらよかったけど、榊はそんなタイプじゃない。榊の反応からして、このまま手を繋ぐのはハードルが高そうだ。
仕方なく、榊の右手をそっと掴んでおれの左腕の服の袖に触らせる。
「ここ、どーぞ」
おれから服の左袖を提供された榊は、遠慮がちにそこを掴むとコクンと頷いた。小さな子どもみたいな彼女の仕草が、胸にぎゅっとくる。
ドキドキしながら足を一歩踏み出すと、ふと履いているスニーカーの赤が視界に飛び込んできた。
「そういえばさ、学校ではおれのことをどうやって認識してくれてんの?」
今日の赤いスニーカーは目立つけど、おれは学校中で特徴のあるものは身に付けていない。
うちの高校は、男子は規定服の黒ズボン、女子は規定服の紺のスカートを身につけていれば、上に着るトレーナーとかカーディガンやセーターは色も種類も自由だ。とはいえ、みんな似たり寄ったり。
不思議に思って訊ねたら、榊がおれの頭に視線を向けた。
「時瀬くんだって判断する基準は、髪の色と前髪の流し方」
「髪色はわかるけど、前髪?」
「今日は真ん中で分けてていつもと違うけど、学校ではおろしてちょっと斜めにワックスで流してるでしょ」
「ああ、そうだわ。てことは、前髪変わると区別付きにくい?」
「学校だったら、ちょっと迷っちゃうかもしれない……」
榊が肩を竦めて苦笑いする。それを見て、おれは慌てて額の上で前髪をぐしゃぐしゃ撫でて、いつもどおりに見えるようにした。
「でも、うちの学校って茶髪のやつ結構いるじゃん。髪型だけでおれってわかるの?」
「髪型は時瀬くんって判断する要素のひとつだよ。それ以外にも、見てるところがある」
「なに?」
「隣に立ったときの身長差とか、ハキハキした迷いのない話し方とか……、あとは、上履きの踵」
「上履き?」
怪訝に眉を寄せながら訊ねると、榊がふふっと笑う。
「時瀬くん、上履きのサイズ合ってなくていつも踵踏んでるでしょ。踏み潰されすぎてひしゃげてる上履きも、時瀬くんだって認識するのに役立ってるよ」
「へえ。じゃあ、おれ、この先も一生、上履きの踵は踏み潰すして生きていくわ」
真顔で言うと、榊が一瞬目を見開いて、そのあと「え、あ、うん……」と挙動不審気味に頷く。
「それでも、おれが声かけたときにちょっとビビったり、語尾上がりに名前を呼んで確かめてくるのは、今教えてくれた基準だけじゃおれって確証が持てないから?」
「そう、だね。それでも、100%時瀬くんだって自信はない。同じような背格好の人が同じような髪型をして踵を踏ん付けてたら、時瀬くんと思っちゃうかもしれない」
「たしかに、今榊がおれを認識してくれてる基準って、ちょっと曖昧だもんな。上履きは一生踵踏んどけばいいとしても、髪型は切ったりしたら微妙に変わっちゃうし……」
何かもっと、いつもある絶対的な目印みたいなものがあれば榊に認識されやすくなるのかな……。
しばらく考えて、ハッとした。
「榊、ちょっと今から買い物付き合って」
「うん。いいけど……」
榊が頷くまでの数秒が待ちきれず、おれの左袖を掴んでいる彼女の手を上から包んで引っ張る。
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