君だけのアオイロ

碧月あめり

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榊 柚乃・1

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 授業後のホームルームが終わってすぐに、わたしの机のそばに男子生徒がやってきた。

 捲ったシャツの袖から伸びた、少し日に焼けた腕。その左手首には、シルバーのトップスが付いた青色のコードブレスレットが嵌められている。それは、わたしが彼を識別するための大切な目印だ。

「榊、帰ろ」

 わたしが顔を上げるのとちょうど同じタイミングで声をかけてきたのは、時瀬ときせ 蒼生あおくん。

 最近の彼は、わたしに声をかけるときに手首の目印が見えやすいように正面に立つ。そして必ず、「榊」と最初にわたしの名前を呼んでから話し始める。それらは全部、わたしが彼のことを少しでも識別しやすくなるようにと考えてくれた気遣いだ。

「優しい」と言ったら、時瀬くんは否定するけど、彼は初めて話したときからずっと、わたしに優しい。

 そんな時瀬くんから、突然の告白を受けたのは一ヶ月前。

 驚いたし信じられない気持ちでいっぱいだったけど、時瀬くんからの告白は素直に嬉しくて。現在、わたしと彼は付き合っている。

 時瀬くんは、わたしにとって生まれて初めてできた彼氏だ。

 恋愛シロウトのわたしは、男の子との付き合い方がそもそもあまりよくわかっていないのだけど……。時瀬くんは、たぶん初めてじゃない。

 確かめたわけではないけれど、なんとなく、女の子の対応に慣れている気がする。

 教室でもわたしがひとりでいると、さりげなく近寄ってきて声をかけてくれるし、週三日ある美術部の活動日以外は、必ず時瀬くんのほうから「一緒に帰ろう」と誘ってくれる。

 時瀬くんの態度がそんな感じだから、告白をオッケーした一週間後には、わたしたちの関係はクラス公認になっていて。しばらくのあいだは、これまで話したこともないクラスメートたちから声をかけられて戸惑った。

 突然複数人に囲まれて一気にしゃべられたりすると、相手が誰だか認識するのに時間がかかって、一瞬頭が混乱してしまうのだ。


「今日、帰りにどこか寄る?」

 並んで教室を出ると、時瀬くんがわたしのほうを向いて首を傾げた。

「いいよ」

 そう答えた瞬間に、時瀬くんの口角が上がるのがわかる。

「じゃあ、マックでちょっとしゃべってから帰ろ」

 時瀬くんの綺麗な薄茶の髪が跳ねるようにふわりと揺れ、誘いかけてくる彼の声が弾む。

 笑ってくれてるのかな……。

 肌に感じる雰囲気や弓状にしなる口の動きでその気配はわかるけど、実を言うと、わたしは自分の彼氏がどんな顔をしているのか、その全貌がわからない。

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