君だけのアオイロ

碧月あめり

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君の全部

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「陽菜と横谷くんが、蒼生くんにも謝っといてだって」

「自分たちで謝りにこねーのかよ」

「横谷くんはともかく、陽菜は意地っ張りだから」

 手にのせられた青のコードブレスレットに向かってつぶやくと、柚乃が眉尻を下げる。

 呆れているような、困っているような、複雑な感情をたっぷりと含んだ目で苦笑いする柚乃の頭をぽんっと軽く撫でると、彼女が急に恥ずかしそうにうつむいた。

 たったそれだけのことで、おれを意識してじわじわと頬を染めていく柚乃が可愛い。思わずふっと笑うと、耳まで真っ赤になった柚乃がちらっと上目遣いにおれを見てきた。


「とりあえず、謝ってもらえたからわたしは陽菜のこと許そうと思ってる」

「許すんだ? お人好しだな」

「他の人にされた嫌がらせだったら許したかどうかわからないけど。陽菜だから……」

 柚乃がボソリと、おれに言葉を返してくる。

 心配なんかしなくても、柚乃は江藤のことが好きだ。それに、おれと付き合ったからって江藤の友達を辞めるようなやつじゃない。

 おれよりも付き合いが長いくせに、柚乃のことをちゃんと信じてやらなかった江藤はバカだと思う。


「蒼生くんはどうかな。怒ってる?」

 黒目がちの瞳に見つめられて、しばらくじっと考える。

 柚乃の心配そうな顔を見たら、怒ってるとも許せないとも言えない。

 正直なところ、おれにとってはブレスレットが無事に手元に戻ってきたってことだけが重要で、それを盗ろうとした江藤や横谷の動機にはあまり興味がなかった。

「うーん。柚乃が目印でしかおれを見分けられないって見くびられてたこととか、ブレスレット盗んで別れさせようとしたこととか、柚乃のこと泣かせたことはすっげー腹立つけど……。友達をとられたくないって思った江藤の気持ちは全くわからなくもない。小学生のとき、自分と一番仲良いと思ってたやつが他のやつと遊んでるの見て、おれの友達なのにって軽く嫉妬した覚えはあるし」

「じゃあ、怒ってない?」

「別に。おれは怒ってないよ」

「そっか。よかった」

 ほっとした声でつぶやいた柚乃が、ふわっと無防備に笑う。その笑顔に、おれの胸がきゅっと狭まった。

「そういえば、柚乃のは?」

 背中を少し丸めて顔を覗き込むと、柚乃の肩が驚いたようにビクッと跳ねる。


「ちゃんと返してもらえた?」

 続けて訊ねると、赤い顔をした柚乃がコクコクと首を縦に振って、スカートのポケットからターコイズブルーのブレスレットを取り出す。


「これ。蒼生くんと一緒にもう一回つけ直したい」

 そう言って、柚乃が恥ずかしそうに笑いかけてくる。おれは彼女の手から無言でブレスレットを奪うと、留め金を外した。

 うつむいた柚乃がおれに左腕を差し出す。

 髪の隙間から覗く柚乃の耳の先は真っ赤になっていて。最初に柚乃の手首にブレスレットをつけたときのシチュエーションを思い出してドキドキした。

 あのときも、柚乃はうつむいて、耳の先まで顔を真っ赤にして、おれのことを待っていた。

 今も変わらず、おれの仕草にピュアな反応を返してくれる柚乃は可愛い。可愛くて、あのときよりももっとずっと愛おしい。

 柚乃にブレスレットを着けるのは二度目なのに、留め金を持つ指先が一度目よりも緊張で震えて。心臓がつぶれそうなほどにドキドキ鳴った。


「おれのは柚乃がつけてくれる?」

 柚乃の左手首にブレスレットをつけ終えると、彼女の左手をとって、そこにおれの濃い青のブレスレットをのせる。


「わかった」

 すぐにコクンと頷いた柚乃は、目に見えてわかるくらい手を震わせながら留め金を外すと、かなりの時間をかけておれの左腕にブレスレットをつけてくれた。


「できた……!」

 おれの左手をぎゅっと握り締めた柚乃が、達成感いっぱいの顔で笑う。最近見たなかで一番くらいに眩しい柚乃の笑顔に、心臓が鷲掴みにされて持っていかれるかと思った。

 堪らなくなって柚乃の肩に右手を伸ばそうとすると「さっきね」と彼女が何か話し始めたから、抱き寄せるタイミングを失った手をこっそり下げる。

 何も気付いていない柚乃は、おれの左手を指で潰すように押しながらにこにことして。


「さっき蒼生くんに話しかけたときね、わたし、教室の中にいる蒼生くんのことがちゃんとわかった」

 ふいに、そんなことを言ってきた。

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