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7.永遠のさようなら
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しおりを挟む絶望的な気持ちで地面についた手をぎゅっと握りしめたとき、
「大丈夫?」
ふと、聞き覚えのある声がした。
はっとして顔をあげると、目の前に桜介くんがいる。
驚いて目を見開くと、桜介くんはわたしの前にしゃがんで笑いかけてきた。
首をかしげながら目を細める桜介くんの表情はいつも通りにやさしくて、わたしには彼が幽霊だなんて信じられない。
桜介くんが桜の木の下の幽霊だなんて、なにかの間違いなんじゃないか。
そう思って桜介くんに向かって手を伸ばす。だけど、わたしの手は彼の手に触れることなく、すり抜けてしまう。
ショックを受けるわたしに、桜介くんが「ごめんね」と謝ってきた。
「……どうして?」
「ほんとうは、おれは心桜ちゃんとあまり仲良くなっちゃいけなかった。でも、誰かと話せたのはひさしぶりのことで、嬉しくて、心桜ちゃんにほんとうのことを言えなかったんだ」
「ほんとうのことって……。桜介くんが桜の下の幽霊だってこと?」
「そう……。ほんとうのおれは何十年も前におれの人生から逃げ出したんだ」
「嫌がらせのせい……?」
わたしの質問に、桜介くんが悲しそうにうなずく。
わたしがみさとちゃんに嫌がらせを受けていることを打ち明けたとき、桜介くんもクラスになじめていないことを教えてくれた。わたしと同じように、嫌がらせを受けてたって。
クラスでうまくいかなくて、桜の木の下でいつもたったひとりで。きっと、悲しくて苦しかったはずだ。
それで、十五歳だった桜介くんは自らの命を絶ってしまった。
どうして、わたしはそのときの桜介くんと出会うことができなかったんだろう……。そのときも、今も、桜介くんの役に立てない自分が悔しい。
「桜介くんが……、一番つらい時に出会えたらよかったのに……」
涙ぐむわたしに、桜介くんが小さく首を横に振ってみせる。
「おれは、心桜ちゃんが一番つらい時に出会えてよかったと思ってる。桜が季節を間違えて咲いてくれてよかった。心桜ちゃんこそ、おれの居場所を守ってくれてありがとう」
桜介くんの言葉に、わたしの目からぽたぽたと涙が落ちた。
「違うよ。わたしは、なにもできてない……」
今だって桜の木を切る音が響いていて、わたしにはもう止められない。
涙が止まらなくなってしまったわたしに、桜介くんが「そんなことないよ」とやさしく微笑む。
「そういえば、次はおれのターンだったよね」
「……え?」
「しあわせゲーム。最後に、おれが幽霊になってから一番嬉しかったこと言うね」
桜介くんが、メガネの奥でいたずらっぽく目を細める。
「秋に咲いた桜の下で、心桜ちゃんに会えたこと」
桜介くんがそう言って笑った瞬間、わたしは胸がぎゅーっと押しつぶされるような心地がした。
桜介くんの言葉が嬉しいのに、せつなくて、すごく苦しい。
だって、桜介くんは「最後に」って言った。
だから、桜介くんがくれる嬉しい言葉は全部、お別れの言葉ってことでしょう……?
それを認めるのが嫌で、わたしは泣きながら首を横に振る。
「次に桜が咲くときに、また会えるよね?」
わたしの質問に困ったように眉を下げた桜介くんは、あいまいに笑うだけだった。
代わりに「心桜ちゃん」と名前を呼んで、わたしに右手を差し出してくる。
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