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2.憑いていっちゃダメですか?
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しおりを挟む「いいなあ、指輪。わたしの場合、羨ましがる前にくれる相手がいないけど」
「衣奈も誰か好きな人作りなよー」
友人の右手に光る指輪を見つめながら自嘲気味に笑うと、瑞穂が他人事みたいに軽い口調でそう言った。
わたしには好きな人がいないわけではないのだ。ただ、思ったところでどうにもならないだけ。
瑞穂と話しながら歩いていると、アキちゃんと里桜先輩がわたし達のそばを通り過ぎていく。
里桜先輩と顔を寄せ合うようにして歩くアキちゃんは、彼女以外何も見えていないみたいで。わたしには目もくれない。
幸せそうなアキちゃんの横顔をさりげなく目で追いながら、心の中でため息を吐く。
アキちゃんへの気持ちは、瑞穂には打ち明けていなかった。
友達から「彼女ができた幼なじみのことが好きだと気付いた」と打ち明けられたって、瑞穂もどう慰めればいいのか困るだろう。
「好きな人作るとか、そんな簡単にムリだよ」
苦笑いを浮かべながら言うと、瑞穂が「でもさー」と横からわたしの顔を覗き込んできた。
「衣奈って、わりとモテるじゃん」
瑞穂にじっと見つめられて、「えー、まさか」とプルプル首を横に振る。
「モテたら、とっくに彼氏ができてるよ」
「それは衣奈が告白断るからでしょ。一学期は他クラスの男子からの告白断ってたし、最近だと他校の男子からの告白断ってたじゃん。青南学院の」
「あー……」
そういえば、あの男の子も青南学院の生徒だったけ。
視線をちょっと上に向けながら思い出したのは、昨日の放課後と今朝、駅のホームで見かけた青南学院の制服を着たイケメンユーレイ(たぶん)……、のことではなく。
今からちょうど二ヶ月ほど前。夏休みが終わってすぐに、駅の校内で声をかけてきた青南学院の男子のことだ。
放課後に瑞穂と一緒に電車を待っていたわたしに突然声をかけてきた彼は、目の下まで前髪を伸ばしていて表情がよく見えず、おどおどとしていて挙動不振だった。
「あの……」と声をかけてきたきり何も言わない彼に困っていると、ホームに電車が入ってきた。
「もう、行こうよ。衣奈」
電車のドアが開いても何も言わずに肩を小さく震わせている彼のことを、瑞穂が気味悪そうに見遣る。
気になりながらも、瑞穂に引っ張られて3両目の電車に乗ろうとすると、彼が喉から絞り出したような震える声で告白をしてきた。
「お、れ……、あなたのことが好きです。助けてもらったあの日からずっと……」
電車に乗るのをやめて話を聞くと、彼は五月の連休が明けた頃、ホームから落ちそうになったところをわたしに助けられたのだという。
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