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2.憑いていっちゃダメですか?
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しおりを挟む記憶を思い返してみると、たしかに、何ヶ月か前にホームの端で気分が悪そうに蹲って震えている他校の男子高校生に声をかけたことがあって。そのときからずっと、彼は登下校時にたまに電車に一緒になるわたしのことを見てくれていたらしい。
彼からの告白をイヤだとは思わなかった。だけどそのときのわたしは、彼の気持ちには応えられなかった。
「まあ、でも、あの人はナシだよね。青南学院に通ってるってことは頭はいいんだろうけど、ブレザーのボタン全部ビシッと止めて、髪の毛もろくに整えてなくて見た目がダサかったし。前髪長すぎて目もよく見えなかったし、ボソボソ喋ってて性格も暗そうだったし。わたしが衣奈でも断ってただろうなー。衣奈にフられて、結局名前も言わずに去って行ったし」
夏休み明けに告白してきた青南学院の男子のことを思い出していると、瑞穂がわたしの隣で彼のことを辛口評価する。
瑞穂は、自他ともに認める面食いだ。
アイドルや俳優も端正な顔立ちをした綺麗なイケメン推しだし、付き合っている先輩もやっぱり顔がカッコいい。
だから、陰気な印象だった青南学院の男子は見た目的に全くタイプじゃないのだと思うけど……。
わたしは別に、見た目で判断して彼の告白を断ったわけじゃない。
告白されたとき、わたしはアキちゃんに対する恋心を自覚したばかりで。そんな状況で誰かと付き合ったりなんかできないと思ったからだ。
アキちゃんへの想いは実らないってわかってるけど、アキちゃんを好きって気持ちが消えない限り、新しく好きな人を作るのはたぶんムリ。
彼氏の存在も瑞穂の指輪も羨ましいけど、わたしが次の恋をするまでにはもう少し時間が必要だ。
おぼろげにしか顔を覚えていない男の子からの告白と片想いの憂鬱さを思い、ため息をこぼす。
その頃には、駅のホームで見た青南学院の制服を着たイケメンユーレイのことなんて、わたしの頭の中からすっかり抜け去ってしまっていた。
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