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2.憑いていっちゃダメですか?
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しおりを挟むギリギリで駆け込み乗車してきたわたしを見て、ドア付近に立っていた人たちが少し迷惑そうに顔をしかめる。
いつもだったら他人にそんな顔をされたら恥ずかしさで消えたくなっちゃうけど、今は人の視線なんて気にしていられない。
とにかく、自分の身の安全が第一だ。
わたしが乗り込んだあとすぐに、電車がゆっくりと走り出す。
電車がホームを出ると、わたしはドアに背中を預けて、右手で左肩を触った。
もう肩は重たくないし、体も自由に動かせる。
ちゃんと、振り切れたよね。
だってあのユーレイは、あの駅の3両目の乗り場から動けない。
ほっと息を吐いたそのとき。
「やっぱり、衣奈ちゃんがキーパーソンだったんだね」
聞き覚えのある声がした。
落ち着いていたはずの心臓が、また、バクバクと早鐘を打ち始める。
どうか。どうか、空耳であれ……!
祈るような気持ちで視線をあげたわたしの前にいたのは、さっき駅で振り切っていたはずの青南学院の制服を着たイケメンユーレイ。
彼が、わたしの目の前でにこにこと嬉しそうに笑っている。
「あ、あ、あなた……!」
思わず大声を出したら、周囲の乗客達からいっせいに不審な目で見られた。
ついさっき駆け込み乗車という迷惑行為をしたこともあって、周囲の人たちのまなざしがことさら冷たく感じる。
わたしは口元に手をあてると、軽く咳払いして目を伏せた。うつむけば自然と前に流れてくる横髪で周囲から顔を隠しつつ、やや上目遣いにイケメンユーレイのことをジッと見る。
「あなた、誰なの」
小声でひそひそささやくと、イケメンユーレイが眉をハの字に下げて首をかしげた。
「さあ……? おれ、誰だと思う?」
人にこんなにも怖い思いをさせておいて、「さあ……?」はない。
「ふざけないで」
ぎゅっと眉間にシワを寄せると、イケメンユーレイが「でも、ほんとうにわからないんだ……」とちょっと泣きそうな声を出す。
「衣奈ちゃんがキーパーソンだと思ったけど、違ったのかな……」
イケメンユーレイが、ぼそぼそとつぶやいている。
これは、生前の記憶がないまま魂が彷徨ってるって状態なのだろうか。そういう設定、小説とかマンガで見たことがある。
かわいそうだけど、フツーの女子高生のわたしが力になれることはないだろう。
誰か、ほかに視える人が彼を見つけてくれますように……。
彼がひとりでぶつぶつ言っているあいだに、そーっと少しずつ距離をとる。
他の乗客に紛れながら移動して、別の車両まで逃げちゃおう。
そろそろと横歩きで動いて、赤ちゃんを抱っこしたお母さんと他校の女子高生のグループのあいだに身を隠そうとしていたとき。
「どこ行くの、衣奈ちゃん」
鼓膜に突き刺さるような鋭く低い声が、わたしを呼び止めた。
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