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3.離れられないみたいです。
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しおりを挟む「衣奈ちゃん?」
考え込んでいると、由井くんがわたしの顔を覗き込んでくる。
「ああ、ごめん。ちょっといろいろ考えてて」
「いろいろ?」
「うん。あなたにわたしから離れてもらうためにはどうすればいいか、とか」
「やっぱり、おれ、衣奈ちゃんから離れなきゃダメ……?」
「ダメだよ。さっきのクレイの反応覚えてるでしょ。あなたが憑いてる限り、わたしはあの子に嫌われたままなんだよ」
きっぱりとそう言うと、由井くんがしょんぼりと悲しそうな顔をする。
そんな顔を見せられたら、ちょっと可哀想な気持ちになるけど……。
わたしだって、クレイに嫌われたままなのは悲しいんだ。
「大丈夫。今はわたしのことしか思い出せないから不安なだけで、他になにかもっと大事なことを思い出したら、わたしから離れられるよ」
「そうかな……。衣奈ちゃんより大事なことなんてないと思うけど……」
ボソリとつぶやく由井くんの表情は暗い。
「そんなことないよ。今は忘れてるかもしれないけど、家族とか、友達とか、あなたがわたしよりも大事に思ってた人が必ずいるはずだよ」
だってわたしは、由井くんと知り合いでもなんでもないはずなんだもん。
「そうかな……」
「そうだよ。あなたがどこの誰だったのか、わたしも一緒に手がかりを探るから」
疑心暗鬼な目をする由井くんを、明るい声で励ます。
「とりあえず……、あなたのことは由井くんって呼んでいいよね?」
本人はいまいちピンときていないらしい名前を呼ぶと、由井くんが困った顔で頷いた。
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