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4.いつも見ていた気がします。
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しおりを挟むリビングに降りると、すでに制服姿の咲奈がダイニングに座っていて。両手で持った大きめなスープカップのフチに、ふーふーと息を吹きかけていた。
朝食用にレトルトのコーンスープを温めたらしい。ほんのりと甘く香ばしい匂いが漂ってくる。
その匂いに誘われて、わたしもコーンスープが飲みたくなった。
「おはよう」
キッチンに行く前に咲奈に声をかけると、「おはよ~」と、まだ半分寝起きの声が返ってくる。
「今日は早いじゃん」
「うん……。英語の小テストで五回連続合格点切っちゃったから、朝のホームルーム前に再テストなんだよ……」
「え~、それ、大丈夫? 来年はもう受験生なのに……」
すでに仕事で出かけているお母さんに代わって小言をいうと、咲奈がコーンスープをふーふーと冷ましながら、「へーき、へーき」と適当に返してくる。
それから、ふとなにか思い出したようにわたしを見てきた。
「そういえばお姉ちゃん、さっき大声で叫んでたけどどうしたの? 朝から部屋にGでも出た?」
咲奈が、朝からは絶対に出会いたくない虫のイニシャルを口にする。
部屋に出たのは虫じゃなくてユーレイなんだけど。目覚めたらユーレイが隣に寝てたとは言えないので、笑ってごまかす。
「夢見て寝ぼけただけだよ」
「朝から絶叫するって、いったいどんな夢見てたの? お姉ちゃん」
「さあ、目覚めた瞬間忘れた」
会話しながら、冷蔵庫に入れてあるパックのコーンスープを取り出して、カップに注いで電子レンジで温める。
熱々になったカップを電子レンジから取り出すと、わたしは咲奈と向かい合うように座った。
スープにたつ湯気にふーっと息を吹きかけながらカップに口をつけたとき、トントンッと階段を駆け降りてくる音がして、弟の拓がリビングに入ってきた。
「おはよう」
いつもわたしが揺り起こすまで寝ている拓が、今朝はもう着替えまで済ませている。
「おはよう、拓。今日はひとりで起きれたんだ?」
声をかけると、拓がわたしを見て顔をしかめた。
「そりゃ、起きるよ。だって、衣奈姉、隣の部屋ですげー叫ぶんだもん。朝からあんなうるさくされたら、嫌でも目ぇ覚める」
拓が生意気にそう言って、キッチンに入っていく。
「朝ごはん、どうする? トーストと卵焼く?」
冷蔵庫から牛乳を出して飲んでいる拓に聞くと、「じゃあ、目玉焼き。半熟で」と返ってくる。
「咲奈は?」
「あたしは、もうすぐ出かけるからスープだけでいい」
「はい、はーい」
わたしはカップのスープを半分ほど飲むと、拓と自分の分の朝食を作るために立ち上がった。
キッチンに向かおうとするわたしの元に、ソファーのそばで丸まっていたクレイがゆっくりと歩み寄ってくる。
昨日、由井くんがそばにいるときは、クレイにめちゃくちゃ警戒されていたけど、今は大丈夫みたい。
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