今日も、由井くんに憑けられています…!

碧月あめり

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4.いつも見ていた気がします。

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「里桜先輩、早く良くなって学校に来てくれるといいね」

 悲しい気持ちが表に出ないように無理やりに口角を引き上げると、アキちゃんが笑って頷いた。


「ありがとう。じゃあ、行くか」

「そうだね」

 アキちゃんに促されて歩き出そうとしたとき、ふと、横顔に視線を感じた。

 振り向くと、3両目の乗り場に立ったままの由井くんが、わたしを――、というよりも、アキちゃんのことを凝視している。そのまなざしに、なんとなくだけど、アキちゃんに対する敵意が混ざっているような気がした。

 なんか、由井くん、怒ってる――?

 なんで……? もし、由井くんがアキちゃんを金縛りに合わせてしまったら……。

 由井くんは基本的には害のなさそうなユーレイだけど、わたしを金縛りに合わせたあのときだけは、様子が違って怖かった。


「あ、アキちゃん、行こうか……」

 なるべく由井くんの視界にアキちゃんが入らないように、アキちゃんの肩を押す。

 このまま改札の外に出れば、由井くんを引き離せるだろうか。それとも、やっぱり憑いてきちゃう……?

 いずれにしても、アキちゃんだけは無事に改札の外に送り出してしまわなければいけない。


「ほら、アキちゃん、早く行こう」

「なんだよ、急に」

 背中を押して急かすわたしのことを、アキちゃんが不思議そうに見てくる。


「べつに。遅刻したら困るでしょ」

「まだ遅刻するような時間じゃないけど」

「そうだけど。わたし、日直当たってるんだよ。だから、早めに行って職員室に日誌取りに行かなきゃ」

「ふーん……?」

 納得したような、していないような表情を浮かべるアキちゃんの背中をぐいぐい押して、改札へと向かう。

 カバンからIC定期を取り出したアキちゃんが、ひと足先に改札を抜ける。アキちゃんに続いて改札を出ようとIC定期をかざすと、ピッと電子音が鳴る。

 左右に開いた改札を通り抜けようとしたそのとき、とつぜん、わたしの前で、改札の扉がバタンとしまった。

 ちゃんと定期を通したのに、なんで……?

 おかしいなと思いながら、もう一度定期をセンサーにかざすと、改札の扉が開いて、わたしが通り抜けようとする直前でまたバタンと閉まる。

 なにこれ。壊れてる?

 わたしが通ろうとするたびに扉が開いたり閉じたりするのを見て、あとから来た人たちが、迷惑そうな顔でほかの改札を通るために迂回する。


「何してんの、衣奈」

「わたしじゃなくて、改札の扉が変なの」

 改札の外から声をかけてくるアキちゃんに答えていると、不意に背後から何かが近付いてくる気配がした。

 背中から感じる冷たい空気に身震いしていると、わたしの耳に低い声が届く。


「衣奈ちゃん、どうして先に行っちゃうの? それに、アイツ、誰?」

 振り向かなくても、背後に由井くんがいるのがわかる。

 作戦、失敗……。

 やっぱり、3両目の乗り場で彼を置いてくるのは無理だったみたいだ。

 改札の扉が、わたしの前でバタン、バタンと開いたり閉じたりを繰り返す。

 これはもう、故障とかじゃなくて怪奇現象。

 意図的なのかはどうかはわからないけど、この現象を引き起こしているのは由井くん……? 


「この改札、変だよな。ちょっと待ってな、衣奈。俺、駅員呼んでくる」

「え、アキちゃんっ!」

 バタバタと動いと止まらない改札の扉を見て、アキちゃんが走っていく。

 アキちゃんの姿が見えなくなると、改札の扉が閉じた状態で動きが止まった。

 ゆっくりと振り向くと、由井くんが無表情でわたしを見つめている。

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