31 / 80
5.それは、デートってことですか?
4
しおりを挟む
「勉強が終わったらでいいんだけど、お買い物頼まれてくれない?」
「買い物? いいよ」
そう答えながら、ふと思った。
そういえば、由井くんとは学校と家までの往復と、近所のスーパー、それから図書館くらいにしか出かけてない。
青南学院の学校の近くとか、あの学校の生徒が行きそうな場所を巡ってみたら、なにか思い出したりしないかな……。
うん、名案かもしれない。
そう思ったわたしは、階段の上からお母さんに呼びかけた。
「おかあさーん、わたし、ちょっと出かける用事思い出した。買い物はその帰りでもいい~?」
「夕方でも大丈夫よー」
お母さんの返事を確認してから、後ろの由井くんを振り返る。
「ねえ、由井くん。今から、一緒に出かけよう」
「それって、デート?」
部屋の中からわたしの様子をうかがっていた由井くんの瞳が、嬉しそうにキラリと輝く。
デート……。わたし的には、全然そんなつもりはなかったけど……。
ふたりで出かけるっていう点では、まあ……。
「デート、なのかな……?」
首をひねりながらつぶやくと、由井くんがぴょんっと部屋から飛び出してきた。
「衣奈ちゃんとデート、嬉しい。行こう、今すぐ」
「デートって言ったって、青南学院の近くにちょっと行ってみるだけだよ。由井くんがなにか思い出せるかもしれないから……」
「衣奈ちゃんとふたりで出かけられるなら、どこだっていいよ」
にこにこ笑顔の由井くんが、わたしの左腕に両腕をからめてくる。そこに体温や質感はなくて、実際には由井くんがわたしと腕をからめてるふうにくっついてきているだけなのだけど……。
デートって言葉に喜んでいる由井くんは、無邪気でちょっとかわいく見える。
由井くんがユーレイじゃなくて生身の人間だったときに知り合えたら、もうちょっとふつうの友達になれたのかな……。
ぼんやり考えていると、「衣奈ちゃん?」と由井くんがわたしの顔を横から覗き込んできた。
心配そうに目の奥をジッと見つめられて、ドキッとした。由井くんは、整った綺麗な顔立ちをしているのだ。
四六時中いっしょにいるとはいえ、間近で見つめられると変に緊張してしまう。
「衣奈ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫、大丈夫」
わたしは由井くんからパッと顔をそらすと、部屋に戻ってスマホと近所に出かけるときにいつも持ち歩く黒のボディバッグを手に取った。
それから、「行こう」と由井くんに声をかけて、先に階段を駆け降りる。
「衣奈ちゃん、ちょっと待って」
追いかけてくる由井くんの気配を感じながら玄関に向かうと、お母さんがリビングから顔を出した。
「衣奈、出かけるの?」
「うん。帰りに買い物してくるから、あとでラインにリストを送っといて」
「ありがとう。お願いね」
「はーい、いってきます」
お母さんに軽く手を振ると、わたしは靴箱の上の小物入れから自転車のカギを取って外に出た。
玄関の横の通路からガレージに抜けて、自転車を道路に出すと由井くんがわたしのことを不思議そうに見てきた。
「おれが通ってた学校の近くまで行くんだよね? そこまで自転車で行くの?」
「それはさすがにムリだよ。遠いもん。自転車で行くのは地元の駅まで。帰りに買い物寄るとき、自転車があると楽だから」
「ふーん」
「じゃあ、行こうか」
「あ、ちょっと待って」
わたしが自転車に乗ってペダルを漕ぎ出そうとすると、由井くんがストップをかけてくる。
なんだろう? って思ったら……。
「おれも乗りたい」
にこっと笑った由井くんが、わたしの自転車の荷台にふわりと腰かけた。
「買い物? いいよ」
そう答えながら、ふと思った。
そういえば、由井くんとは学校と家までの往復と、近所のスーパー、それから図書館くらいにしか出かけてない。
青南学院の学校の近くとか、あの学校の生徒が行きそうな場所を巡ってみたら、なにか思い出したりしないかな……。
うん、名案かもしれない。
そう思ったわたしは、階段の上からお母さんに呼びかけた。
「おかあさーん、わたし、ちょっと出かける用事思い出した。買い物はその帰りでもいい~?」
「夕方でも大丈夫よー」
お母さんの返事を確認してから、後ろの由井くんを振り返る。
「ねえ、由井くん。今から、一緒に出かけよう」
「それって、デート?」
部屋の中からわたしの様子をうかがっていた由井くんの瞳が、嬉しそうにキラリと輝く。
デート……。わたし的には、全然そんなつもりはなかったけど……。
ふたりで出かけるっていう点では、まあ……。
「デート、なのかな……?」
首をひねりながらつぶやくと、由井くんがぴょんっと部屋から飛び出してきた。
「衣奈ちゃんとデート、嬉しい。行こう、今すぐ」
「デートって言ったって、青南学院の近くにちょっと行ってみるだけだよ。由井くんがなにか思い出せるかもしれないから……」
「衣奈ちゃんとふたりで出かけられるなら、どこだっていいよ」
にこにこ笑顔の由井くんが、わたしの左腕に両腕をからめてくる。そこに体温や質感はなくて、実際には由井くんがわたしと腕をからめてるふうにくっついてきているだけなのだけど……。
デートって言葉に喜んでいる由井くんは、無邪気でちょっとかわいく見える。
由井くんがユーレイじゃなくて生身の人間だったときに知り合えたら、もうちょっとふつうの友達になれたのかな……。
ぼんやり考えていると、「衣奈ちゃん?」と由井くんがわたしの顔を横から覗き込んできた。
心配そうに目の奥をジッと見つめられて、ドキッとした。由井くんは、整った綺麗な顔立ちをしているのだ。
四六時中いっしょにいるとはいえ、間近で見つめられると変に緊張してしまう。
「衣奈ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫、大丈夫」
わたしは由井くんからパッと顔をそらすと、部屋に戻ってスマホと近所に出かけるときにいつも持ち歩く黒のボディバッグを手に取った。
それから、「行こう」と由井くんに声をかけて、先に階段を駆け降りる。
「衣奈ちゃん、ちょっと待って」
追いかけてくる由井くんの気配を感じながら玄関に向かうと、お母さんがリビングから顔を出した。
「衣奈、出かけるの?」
「うん。帰りに買い物してくるから、あとでラインにリストを送っといて」
「ありがとう。お願いね」
「はーい、いってきます」
お母さんに軽く手を振ると、わたしは靴箱の上の小物入れから自転車のカギを取って外に出た。
玄関の横の通路からガレージに抜けて、自転車を道路に出すと由井くんがわたしのことを不思議そうに見てきた。
「おれが通ってた学校の近くまで行くんだよね? そこまで自転車で行くの?」
「それはさすがにムリだよ。遠いもん。自転車で行くのは地元の駅まで。帰りに買い物寄るとき、自転車があると楽だから」
「ふーん」
「じゃあ、行こうか」
「あ、ちょっと待って」
わたしが自転車に乗ってペダルを漕ぎ出そうとすると、由井くんがストップをかけてくる。
なんだろう? って思ったら……。
「おれも乗りたい」
にこっと笑った由井くんが、わたしの自転車の荷台にふわりと腰かけた。
0
あなたにおすすめの小説
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる