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5.それは、デートってことですか?
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青南学院から地元の駅まで戻ってきたわたし達は、駐輪場に置いた自転車を取りに行って、そこから五分の場所にあるスーパーに行った。
お母さんからラインで送られきた買い物リストは……。
鶏むね肉、にんじん、牛乳、小麦粉、バター。
それを見て、今日はきっとクリームシチューなんだろうなと思う。
うちのお母さんは特別料理上手ってわけではないけれど、昔から、クリームシチューは小麦粉とバターと牛乳でホワイトソースから手作りする。
お母さんのお母さん――、つまりわたしのおばあちゃんもそうしていたらしくて。うちのクリームシチューは日によって、まろやかだったりちょっとダマが残ってたりする。
でも、お母さんの作るクリームシチューはわたしも咲奈も拓も大好きだ。
野菜コーナーから順番にスーパーを回っていくわたしの後ろを、由井くんがついてくる。
お母さんから頼まれたものを次々とカゴに入れ、最後に牛乳の置いてある棚にやってきたとき、声を堪えて泣きながら歩いている男の子とすれ違った。
年は三歳か四歳くらいだろうか。男の子の近くに親がいる気配はない。
迷子、かな……。
気になって様子を見ていると、男の子が立ち止まって、ぎゅっと唇を噛みしめる。
やっぱり、迷子だ……。
そう思った瞬間、わたしの足は男の子のほうに向かって動いていた。
「どうしたの? お母さんか、お父さんは?」
買い物カゴを床に置いて、腰をかがめて話しかけると、男の子は泣き顔のまま小さく首を横に振った。
「どこに行ったかわからなくなっちゃったのかな?」
そんなふうに聞き直すと、男の子がコクンと頷く。
「どこで離れちゃったか、わかる?」
「おかしのところ……」
男の子が、涙交じりの声で教えてくれる。
「じゃあ、お姉ちゃんといっしょにお菓子売り場のところに戻ってみようか?」
わたしの提案に、男の子が唇をへの字にして、コクンとうなずく。
手を差し出すと、男の子がわたしの手にそろっと触れてきた。
怖がらせないように、男の子の小さな手を軽く握る。そのときに、ふと由井くんのことが気になった。
わたしが誰かと話したりすると、その相手に敵意のまなざしを向ける由井くんだけど……。
こんな小さな子のことはさすがに怖い目で見ないよね……。
心配になっていちおう確認したら、由井くんはわたしと手をつなぐ男の子のことを無表情で見ていた。
由井くんがなにを思っているかはわからないけど、とりあえずこの男の子になにかするってことはなさそう。
だから安心して、男の子といっしょにお菓子売り場のほうへ向かった。
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