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5.それは、デートってことですか?
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脇目も振らずに自転車を漕いでいると、「衣奈ちゃん、前!」と由井くんがわたしの耳元で叫ぶ。
ハッとして顔を上げると、目の前に電柱が迫っていて。衝突しそうになっている。
ハンドルを横に切って、急ブレーキをかけても、最悪転倒は免れないかもしれない。
目をつぶってハンドルを左に傾けながらブレーキをかけた、その瞬間。わたしの身体がふわっとした空気にやわらかく包まれた。
自転車ごと電柱にぶつかるか、ハンドルを切り損ねて派手に転倒する。
その二択しかないと思っていたのに、自転車が電柱からわずか数センチ手前で止まる。
あれ、わたし、助かった――?
「衣奈ちゃん、大丈夫?」
自転車のハンドルを握りしめたまま、まばたきしていると、由井くんが荷台からひょいっと降りて、わたしの前まで移動してきた。
「ギリギリで止めれてよかった。ケガしてない?」
そう訊ねながら、由井くんがわたしの顔を心配そうに覗き込んでくる。
どうして助かったのか、まだ実感の持てないわたしは、無言でコクコクとうなずいた。
「急に家とは反対方向に暴走し始めたから、びっくりしたよ。気をつけなきゃ」
由井くんに、はぁーっとため息を吐かれて、ようやく少し、頭が働き始める。
「電柱にぶつかりそうになったとき、空気で守られたみたいな気がしたんだけど……。由井くんが助けてくれたの?」
「たぶん……」
「ありがとう。ユーレイって、あんな力も使えるんだね。びっくりした」
お礼を言うと、由井くんが自分の手のひらに視線を落として少し照れ臭そうに笑う。
「うん、おれもびっくり。でも、衣奈ちゃんが危ない、守らなきゃって思ったら、不思議と力が出た」
「そう、なんだ……」
「おれ、たぶん、衣奈ちゃんのためならなんでもできるんだと思う」
わたしに視線を戻した由井くんが、唇に弧を描くようにして綺麗に微笑む。その笑みの妖しいまでの美しさが、わたしをドキリとさせた。
「衣奈ちゃんが急に心を失っちゃったのは、あいつのせいだよね」
「あいつ……?」
「アキちゃんだよ。あいつと彼女がキスしてるのを見て、動揺しちゃったんでしょ」
由井くんが、わたしに微笑みかけたまま、しっかりと核心をついてくる。
「ち、がうよ。そんなんじゃない……」
すぐに否定したけど、由井くんは貼り付けたような綺麗な笑みを崩さなかった。
「できれば気付きたくなかったけど……。衣奈ちゃんは、あいつのことが好きなんだよね」
「アキちゃんは、ただの幼なじみだよ」
「ほんとうは、あいつと付き合いたかった?」
「違うってば……!」
否定すればするほど、動揺で声が震える。
笑顔でわたしを見つめる由井くんは、言葉にできないわたしの気持ちを見透かしているみたいだった。
「あいつが衣奈ちゃんに振り向くように、おれが協力しようか?」
「なに言ってるの。アキちゃんは、里桜先輩のことが好きなんだよ。それに由井くんだって、わたしがほかの人と仲良くするのはいやだって言ってたじゃない」
ゆるりと首を横に振ると、由井くんが「いやだよ」とつぶやく。
「衣奈ちゃんがほかのやつと仲良くするのはいやだ。でも、おれ、衣奈ちゃんのこと好きだから。衣奈ちゃんが望めば、おれは衣奈ちゃんのためならなんでもするよ」
口元にだけ笑みを浮かべる由井くんの目は、本気では笑っていない。
わたしを見つめる空洞みたいな目が、なんだか少し怖かった。
ハッとして顔を上げると、目の前に電柱が迫っていて。衝突しそうになっている。
ハンドルを横に切って、急ブレーキをかけても、最悪転倒は免れないかもしれない。
目をつぶってハンドルを左に傾けながらブレーキをかけた、その瞬間。わたしの身体がふわっとした空気にやわらかく包まれた。
自転車ごと電柱にぶつかるか、ハンドルを切り損ねて派手に転倒する。
その二択しかないと思っていたのに、自転車が電柱からわずか数センチ手前で止まる。
あれ、わたし、助かった――?
「衣奈ちゃん、大丈夫?」
自転車のハンドルを握りしめたまま、まばたきしていると、由井くんが荷台からひょいっと降りて、わたしの前まで移動してきた。
「ギリギリで止めれてよかった。ケガしてない?」
そう訊ねながら、由井くんがわたしの顔を心配そうに覗き込んでくる。
どうして助かったのか、まだ実感の持てないわたしは、無言でコクコクとうなずいた。
「急に家とは反対方向に暴走し始めたから、びっくりしたよ。気をつけなきゃ」
由井くんに、はぁーっとため息を吐かれて、ようやく少し、頭が働き始める。
「電柱にぶつかりそうになったとき、空気で守られたみたいな気がしたんだけど……。由井くんが助けてくれたの?」
「たぶん……」
「ありがとう。ユーレイって、あんな力も使えるんだね。びっくりした」
お礼を言うと、由井くんが自分の手のひらに視線を落として少し照れ臭そうに笑う。
「うん、おれもびっくり。でも、衣奈ちゃんが危ない、守らなきゃって思ったら、不思議と力が出た」
「そう、なんだ……」
「おれ、たぶん、衣奈ちゃんのためならなんでもできるんだと思う」
わたしに視線を戻した由井くんが、唇に弧を描くようにして綺麗に微笑む。その笑みの妖しいまでの美しさが、わたしをドキリとさせた。
「衣奈ちゃんが急に心を失っちゃったのは、あいつのせいだよね」
「あいつ……?」
「アキちゃんだよ。あいつと彼女がキスしてるのを見て、動揺しちゃったんでしょ」
由井くんが、わたしに微笑みかけたまま、しっかりと核心をついてくる。
「ち、がうよ。そんなんじゃない……」
すぐに否定したけど、由井くんは貼り付けたような綺麗な笑みを崩さなかった。
「できれば気付きたくなかったけど……。衣奈ちゃんは、あいつのことが好きなんだよね」
「アキちゃんは、ただの幼なじみだよ」
「ほんとうは、あいつと付き合いたかった?」
「違うってば……!」
否定すればするほど、動揺で声が震える。
笑顔でわたしを見つめる由井くんは、言葉にできないわたしの気持ちを見透かしているみたいだった。
「あいつが衣奈ちゃんに振り向くように、おれが協力しようか?」
「なに言ってるの。アキちゃんは、里桜先輩のことが好きなんだよ。それに由井くんだって、わたしがほかの人と仲良くするのはいやだって言ってたじゃない」
ゆるりと首を横に振ると、由井くんが「いやだよ」とつぶやく。
「衣奈ちゃんがほかのやつと仲良くするのはいやだ。でも、おれ、衣奈ちゃんのこと好きだから。衣奈ちゃんが望めば、おれは衣奈ちゃんのためならなんでもするよ」
口元にだけ笑みを浮かべる由井くんの目は、本気では笑っていない。
わたしを見つめる空洞みたいな目が、なんだか少し怖かった。
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