今日も、由井くんに憑けられています…!

碧月あめり

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8.約束してくれますか。

由井 周・1

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 優秀で容姿の整った兄と違って、おれは地味で消極的で口下手で、小さな頃からどちらかと言うといじめられ体質だった。

 小学校低学年の頃は、同じ学校に在籍していたちょっと過保護気味な兄に守られてイジメにあうことはなかったけど、ひとたび兄が卒業すると、同級生の主に男子から、物を隠されたり、仲間はずれにされたり……、そういう嫌がらせを受けることが多くなった。

 背が高くて成績やスポーツも万能だった兄と違って、おれは骨が細くて色白で、男にしては頼りない見た目だったし。他の子どもに強く言われたら、怖くていつも逆らえなかった。

 だから、受験して青南学院の中等部に入ってからも、そのままエスカレーター式で高等部に進学してからも、クラスの中心人物的な生徒にはなるべく近付かないように気を付けていた。

 友達はあまりいなかったけど、カースト上位の生徒に目を付けられないように気を付けていれば、それなりに平和な学校生活を送ることができる。

 伸ばした前髪で顔を隠して、必要なこと以外はしゃべらず、クラスメートたちから無害だと思われるように心がけて。

 そうやって、地味に、静かに、海の底で呼吸をするように過ごしてきたのに……。

 高校一年の終わり頃、同級生の中条瑛士に目を付けられた。


「お前、由井原総合病院の息子なんだってな」

 教室でいきなり足を引っかけられて転び、驚くおれを見下ろして、中条瑛士がニヤリと笑う。

 その瞬間、頭のなかに試合終了のゴングが響き、おれが守ってきた平穏が崩れた。

 青南学院は中高一貫の進学校で、おれも含めて高等部にいる生徒の7割は中学受験で入った内部組。

 中条瑛士は高校から入ってきた外部組で、成績はよかったが、素行は悪かった。

 中条の父親は市議会議員で、うちの学校の卒業生。母親は、PTA関係の役員。

 学校にも多額の寄付をしているという中条の家は裕福だったはずだし、中条自身も特に不自由のない暮らしをしてきたはずだ。

 だから、このあたりでそこそこ大きい病院の息子であるおれに目を付けたのは、きっとただの暇つぶし。

 ほとんど無理やり中条と連絡先を交換させられたおれは、それ以来、中条とその仲間にしょっちゅう呼び出されて、金をとられたり、殴られたりした。

 両親が病院の仕事で家を開けることが多かった分、兄のとおるは面倒見が良かった。

 というより、おれに対してかなり過保護で。

 おれがたまにケガして帰ってくることや、親が銀行に貯めてくれていた貯金をしょっちゅうおろしていることに気が付いていた。

 兄は「困ってることがあるなら言え」と、何度も言ってきたけど、おれは中条たちのことを兄には相談しなかった。

 高校生になってまで、兄に守ってもらわなきゃいけないなんて情けないと思ったし、医学部に入って勉強も忙しくなった兄に迷惑をかけたくなかった。

 だけど、中条たちの嫌がらせにひとりで耐え続けるのはやっぱり苦しくて……。

 高二の一学期が始まって少しした頃、限界がきた。
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