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一章 僕は彼女を忘れない
3 ZOOMで女子と盛り上がる
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整理しよう。彼女はネットで小説を書いている。で、エッチシーンを書きたいが経験がないから困っている。彼女の友人も同じように経験がなく、大学で唯一話せる男の知り合いである僕に相談した。
なるほど。
が、僕にもどうしようもない。僕も知らないのだ。元カノの星佳とはそれなりに付き合ったが、そこまで進まず終わった。
「他の小説を参考にしたら?」
「それはやっちゃいけないの! レポートだってコピーペーストはダメでしょ?」
実験レポートでそれは許されない。が、趣味で書いてる小説で、そんなうるさいこと言わなくてもいい気がするが……いや、確かにそれは良くない。
「写すんじゃなくて雰囲気を参考にすれば? エッチなんて同じだろ?」
「そうなの? 三好君、みんな同じなの?」
ときどきお世話になっている二次元コンテンツによると、うーん、違うような同じような……そうだ!
シンプルな解決方法を思いついた。
「その手の動画、見れば? ネットにゴロゴロ転がってるよ」
「やだ! うち自宅だよ! 親にバレたら恥ずかしいよ!」
彼女は実家から通っているんだ。スッピンで、いつも地味なシャツとジーンズを履いているから、田舎からの上京組だと思い込んでいた。ひとつ彼女のことを知った。
「うち貧乏なのに、無理して浪人したから、これ以上、親に変に思われたくない」
あいらは浪人……つまり僕より年上だ。全然、年上に見えないけど。
「三好君は現役で推薦なんだよね。すごいなあ」
そうか? 一般入試だろうが推薦入試だろうが、大事なのは入学してからでは?
「そうだ、高校の時、情報オリンピックに出たんでしょ?」
どこでどう話が伝わったのか知らないが、宗太にも他の友人にも、何度も質問された。悪い気はしないが嘘はよくない。僕はそのたびに訂正する。
「世界のオリンピックじゃないよ。国内のオリンピックだって。残念ながら、代表には選ばれなかったんだ」
「充分すごいって! 一年生なのに、もう研究室に通ってるんでしょ?」
「どこの研究室にするかは決めてないよ。気になる先生の部屋を訪ねて話を聞いてるだけ」
「うわあ、私なんか、レポート出すので精一杯。研究室なんて考えたこともないや」
四年になったら研究室で卒研が始まるんだけど、彼女は知らないのか?
「僕もまだ勉強中だよ。ディープラーニングとか、センシングとか……今、気になるのはBMIかな」
「BMI? うわ! 私、デブだからやばいな」
BMIと言うと、そういう反応になるのか。まあ、あいらは痩せてはいないがデブでもない。標準に収まるだろう。
「篠崎さんが言ってるのは、Body Mass Indexでしょ。僕が気になるのは、Brain Machine Interface。脳と機械を繋げるってこと」
こういう話をするのは楽しい。
「脳と機械を繋げるの? なんか怖いよ」
「怖くないよ。病気や障害で動けず意思表示できない人がいるだろ? そういう人が、トイレに行きたいとか、機械を通して希望を伝えられたら、いいと思わない?」
「ごめんね、怖いなんて言って。三好君、すごい研究目指してるんだ」
反射的に僕は、手を振った。
「いやいやいやいや、目指すって程じゃないよ。そういう研究をしている先生の話を聞いてるだけで」
彼女と物理実験以外の話で盛り上がれるなんて。
「三好君、すごい研究なのはわかったけど……私、どうしたらいいかな?」
せっかく盛り上がってきたのに、話はそっちに戻るんだ。
仕方ない。僕は、第二案を持ちかけた。
「……じゃあ、僕のうちで動画、見る? 一人暮らしだから気にしなくていいよ」
あいらは口を開けてポカンと固まっている。大きな口だ。
やばい。変に思われただろうか。僕は下心ではなく、実験パートナーの悩みを解決したいという、親切心から提案をしただけなのに。
「ありがとう! 三好君!」
大きな目の中、星がキラキラと揺れていた。
なるほど。
が、僕にもどうしようもない。僕も知らないのだ。元カノの星佳とはそれなりに付き合ったが、そこまで進まず終わった。
「他の小説を参考にしたら?」
「それはやっちゃいけないの! レポートだってコピーペーストはダメでしょ?」
実験レポートでそれは許されない。が、趣味で書いてる小説で、そんなうるさいこと言わなくてもいい気がするが……いや、確かにそれは良くない。
「写すんじゃなくて雰囲気を参考にすれば? エッチなんて同じだろ?」
「そうなの? 三好君、みんな同じなの?」
ときどきお世話になっている二次元コンテンツによると、うーん、違うような同じような……そうだ!
シンプルな解決方法を思いついた。
「その手の動画、見れば? ネットにゴロゴロ転がってるよ」
「やだ! うち自宅だよ! 親にバレたら恥ずかしいよ!」
彼女は実家から通っているんだ。スッピンで、いつも地味なシャツとジーンズを履いているから、田舎からの上京組だと思い込んでいた。ひとつ彼女のことを知った。
「うち貧乏なのに、無理して浪人したから、これ以上、親に変に思われたくない」
あいらは浪人……つまり僕より年上だ。全然、年上に見えないけど。
「三好君は現役で推薦なんだよね。すごいなあ」
そうか? 一般入試だろうが推薦入試だろうが、大事なのは入学してからでは?
「そうだ、高校の時、情報オリンピックに出たんでしょ?」
どこでどう話が伝わったのか知らないが、宗太にも他の友人にも、何度も質問された。悪い気はしないが嘘はよくない。僕はそのたびに訂正する。
「世界のオリンピックじゃないよ。国内のオリンピックだって。残念ながら、代表には選ばれなかったんだ」
「充分すごいって! 一年生なのに、もう研究室に通ってるんでしょ?」
「どこの研究室にするかは決めてないよ。気になる先生の部屋を訪ねて話を聞いてるだけ」
「うわあ、私なんか、レポート出すので精一杯。研究室なんて考えたこともないや」
四年になったら研究室で卒研が始まるんだけど、彼女は知らないのか?
「僕もまだ勉強中だよ。ディープラーニングとか、センシングとか……今、気になるのはBMIかな」
「BMI? うわ! 私、デブだからやばいな」
BMIと言うと、そういう反応になるのか。まあ、あいらは痩せてはいないがデブでもない。標準に収まるだろう。
「篠崎さんが言ってるのは、Body Mass Indexでしょ。僕が気になるのは、Brain Machine Interface。脳と機械を繋げるってこと」
こういう話をするのは楽しい。
「脳と機械を繋げるの? なんか怖いよ」
「怖くないよ。病気や障害で動けず意思表示できない人がいるだろ? そういう人が、トイレに行きたいとか、機械を通して希望を伝えられたら、いいと思わない?」
「ごめんね、怖いなんて言って。三好君、すごい研究目指してるんだ」
反射的に僕は、手を振った。
「いやいやいやいや、目指すって程じゃないよ。そういう研究をしている先生の話を聞いてるだけで」
彼女と物理実験以外の話で盛り上がれるなんて。
「三好君、すごい研究なのはわかったけど……私、どうしたらいいかな?」
せっかく盛り上がってきたのに、話はそっちに戻るんだ。
仕方ない。僕は、第二案を持ちかけた。
「……じゃあ、僕のうちで動画、見る? 一人暮らしだから気にしなくていいよ」
あいらは口を開けてポカンと固まっている。大きな口だ。
やばい。変に思われただろうか。僕は下心ではなく、実験パートナーの悩みを解決したいという、親切心から提案をしただけなのに。
「ありがとう! 三好君!」
大きな目の中、星がキラキラと揺れていた。
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