37 / 77
3章 アラサー女子、ふるさとの祭りに奔走する
3-5 突然クイズですが
しおりを挟む
こんなところで、流斗君に会えるなんて。
「素芦さん、月祭りのことで今から打ち合わせします。いいですか?」
流斗君にしては怖いほど低い声。まっすぐ突き刺すようなやぶ睨み。
彼は怒っている。全身で怒っている。
まだ彼は、私を許してくれないのね。だから怒っているんだ。
「あー、朝河せんせー、さきほどは、お疲れさんでした」
飯島さんが、流斗君の怒りを宥めようと割り込んでくる。
「飯島さん、さっき素芦さんがどこにいるか聞いたら、ここにはいない、って断言しましたよね?」
流斗君は飯島さんに食い下がる。飯島さんは「あ、いや、その……素芦さん、ほら急がんと」
飯島さんの態度の意味がわかった。
飯島さんは、先ほどまで流斗君の取材に立ち会った。何があったのかはわからないが、私と流斗君を引き合わせるとよくない、と気がついたのだ。意外だが、飯島さんは流斗君の怒りから私を守ろうとしてくれる。
「すみません朝河先生。私、今から購買に行くので、終わったら内線します」
私は一礼して、背を向けた。
「それなら立ち話でいいから。僕も付き合いますよ」
なおも食い下がる流斗君に、沢井さんが割り込んできた。
「素芦さん、先生が来てくれたんだから、そこで打ち合わせすれば?」
沢井さんは、奥のパーテーションで区切られたスペースを指した。
「ふーん、なるほど……ま、いいでしょう」
ざっと彼は沢井さんを見やると、私に向き直った。
「じゃ素芦さん、あっち行きましょうか。祭りのこと調べたいから、スマホ忘れないで」
私は、表情を変えない沢井さんと、おろおろする飯島さんを見比べつつ、月祭りの資料を手に、流斗君を追った。
三週間ぶりに彼と会った。
「先生、月祭りの件ですか? 棟ごとにブースを出すので、私は、棟の代表の先生と進めています。先生、ご要望がありましたら、邦見先生にお願いします」
邦見先生とは流斗君の先生にあたる教授で、宇宙棟のリーダーだ。
素っ気なくされた仕返しをしているわけではない。効率よく仕事を進めたいだけ。
「邦見先生は僕よりずーっと忙しい。国の委員会をいくつも掛け持ち、他の大学の客員教授も務めたりだ。この件、先生から僕に任されてる」
怒りだけは伝わる。私も自然、硬直する。
「わかりました。朝河先生も衛星プロジェクトを抱えて忙しいかと思います。今回のテーマにかなった先生と打ち合わせてもいいですよ」
「テーマ? ウサギ、亀、月、水のどれかに関係すればいいんですよね」
「先生のご専門は、宇宙生成論です。月は、宇宙生成のずっと後にできたんでしょう?」
「へー、勉強したんですね」
流斗君が、ニヤッと笑った。
「じゃあ、月がどうやってできたか知ってる?」
うっ、それを聞かれると、えーと……どうなんだろう……。
「何か、ふらふらしている小さな星を捕まえた、とか?」
またドヤ顔された。
「うん、そういう説もある。最近有力なのは、地球に火星ほどの大きさの星がぶつかり、バラバラになった破片の一部が月になったという説かな」
「先生、何でも知ってるのね」
「宇宙棟の先生方の研究分野は把握してます。月の研究をする先生との打ち合わせも僕が進めます」
彼は怒っている。なのに私は、このようなやり取りを喜んでいる。
「それで月のことがわかるサイト見つけたんだ。今からそっちにURL送るからチェックして」
それでわざわざ『スマホ』忘れないで、と言ったんだ。
アプリがメッセージの受信を知らせる。
私は、事務的にメッセージを確認する。そして、声を上げそうになった。
『取材させないとクビだったの?』
流斗君の目は、相変わらず怒りに満ちていた。
流斗君のメッセージに私はただ釘付けになる。どうして流斗君がそれを?
「どう? URLチェックした? どう思った?」
「私には難しくてわかりません」
取材の時、飯島さんが漏らしたのかもしれない。
飯島さんがなぜ私とここから追いだそうとしたのか、流斗君がなぜ怒っているのか、ようやくわかった。
「そんなはずない。そのサイトのクイズ、イエスかノーかの二択ですよ」
「じゃ、ノーです」
「僕はイエスだ。じゃ、次に行きますね」
流斗君はまたスマホをいじりだした。今度は、西都科学技術大学宇関キャンパスのホームページを表示した。
「月の研究は、この都倉光先生ですね。月の石の分析をしています。ウサギに見える月の影の話をしてもらってもいいかな」
「あ、あの、ですから……」
その後、彼は、自分が送ったメッセージに触れることなく、祭りのブースの話をすすめた。
「祭りは、ブースの周辺だけじゃないんだ」
「公園のブースは、宇関の外から来た人に宇関をPRするため、新しく始めました。宇鬼川の源流のある珂目山の滝つぼに、折り紙で作った小さな舟を流します。宇関町内で川沿いの区域ごとに流します」
その滝つぼに彼と出かけ、同じ話をした。
「ということは、川沿いの地域、一斉に同じことをするわけだね。川はどれぐらい長いの?」
「宇関町の東と南の境目を流れています。町全体が、祭りに参加するんです」
「そんなに広範囲なら、ウェブカメラを置いて、祭り特別のサイトを立ち上げ、各地の様子をライブで見られるようにしたら?」
「それいいですね。役員さんに提案してみます」
「システムを作るなら情報棟の先生がいいな。尾谷先生に話しておくよ」
この前インタビューを録画した情報工学のイケメン先生だ。流斗君とは、宇宙観測衛星プロジェクトのプログラム開発で関わっている。
カメラの話が終わったところで、流斗君は立ち上がった。
「素芦さん、大体わかりました。じゃ、また」
私も一緒に打ち合わせコーナーを出て、席に戻る。飯島さんが、チラチラ私をうかがい「どうやった?」と小声で聞いてきた。
「祭りの宇宙ブースは朝河先生にお任せします」
私はいつもの仕事に戻る。
流斗君は、沢井さんに告げた。
「打ち合わせ終わりましたよ。雑誌の取材も上手く行きました」
人懐っこい笑顔だ。そうだ。流斗君は、取材の後、ここに来たのだ。
「今後、取材の立ち合いは、この人にお願いします」
彼が指名したのは、私の先輩パートにあたる海東さんだった。
流斗君は、取材の立ち合いにパートの海東さんを指名した。海東さんは「はい?」とぽかんとしている。
沢井さんが抵抗した。
「いえ、この海東は、取材関係の仕事はタッチしていませんので、先生に迷惑かけます。飯島が何かしたのでしょうか?」
「飯島さんに問題ありません。でも、僕と飯島さん、ほとんど年、変わりませんよね。同じ年の人に立ち会われると緊張しますから」
そこで飯島さんも入っていった。
「いやいやいやいや、先生、全然緊張なんてなくて、取材慣れされとるなあと思いました」
「そう見せただけです。その……僕と同年代ってほとんどが学生でしょう? だからどうしても飯島さんに対して学生扱いしそうで、怖いんです」
「沢井さん、朝河先生は全然そんなんありませんから!」
なおも飯島さんが訴える。が、沢井さんは頭を振った。
「わかりました。どうであれ飯島が苦手とおっしゃるなら、今後は私が立ち会います」
それでも流斗君は引き下がらない。
「それも緊張します。課長にわざわざ立ち会ってもらうまでもありません」
「でも、私も飯島もダメだとすると後はパートですよ」
「どうしてパートだとダメなんですか?」
流斗君は、何が何でも譲らない。
「僕は、立ち合いがない方がいいけど、それがダメなら、なるべく邪魔をしない人がいいんです。それなりに取材の経験はありますし……まあメディアがちゃんとしたところならね」
彼の顔が曇った。やはりカルト教団の取材を安易に受けたことを悔やんでいるんだ。
「広報で立ち会う人の指名もできないなら、取材はこれきりにします」
そう言い切った流斗君に、沢井さんは尚も抵抗する。
「先生はそれでよくても、海東が可哀相です」
それまで自分の話なのに、蚊帳の外にされていた海東さんが入ってきた。
「朝河先生の研究室に行って、インタビューの様子を見ていればいいのですか?」
沢井さんが首を振る。
「それだけじゃないわよ。ちゃんと中身を理解しないと」
「えー、海東さんだっけ? それで充分ですよ」
流斗君が笑っている。
「でも先生、記者は無謀なリクエストしてきます」
「僕が断ればいい。中身は発表前に記事や映像を送ってもらってチェックすればいい。そのチェックは、首都本部の広報に頼みます」
「いや、せめてチェックぐらいは私たちが……」
沢井さんは尚も食い下がる。
「宇関の広報の皆さんは忙しいでしょう?」
突然、押し付けられた仕事に海東さんが、口を開いた。
「朝河先生って宇宙ですよね。私SFとか宇宙大好きなんです。楽しくなりました」
私は前に海東さんから聞いていたが、誰もが驚いている。仕事を押し付けた流斗君も含めて。
「海東さん、それは助かります。じゃ、さっそく次の取材も頼みます。調整は本部がやるから大丈夫ですよ」
流斗君は、スマホのデータを呼び出し、海東さんに見せている。
「ま、待ってください。朝河先生! 立ち合いを海東にというのはわかりましたが、段取りは、私がしますから」
沢井さんが割って入った。
「メディアへの窓口は本部の広報に頼みます。じゃ」
流斗君が微笑んで立ち去った。
海東さんは「沢井さん、今度はこの人の取材希望です。面白そうですね」と、笑っている。
「ええ、そうね。私たちは、本部の広報に任せればいいから」
沢井さんはおろおろしながら、海東さんに説明した。
私は別の仕事に取り掛かる。飯島さんの突き刺さる視線を感じながら。
「素芦さん、月祭りのことで今から打ち合わせします。いいですか?」
流斗君にしては怖いほど低い声。まっすぐ突き刺すようなやぶ睨み。
彼は怒っている。全身で怒っている。
まだ彼は、私を許してくれないのね。だから怒っているんだ。
「あー、朝河せんせー、さきほどは、お疲れさんでした」
飯島さんが、流斗君の怒りを宥めようと割り込んでくる。
「飯島さん、さっき素芦さんがどこにいるか聞いたら、ここにはいない、って断言しましたよね?」
流斗君は飯島さんに食い下がる。飯島さんは「あ、いや、その……素芦さん、ほら急がんと」
飯島さんの態度の意味がわかった。
飯島さんは、先ほどまで流斗君の取材に立ち会った。何があったのかはわからないが、私と流斗君を引き合わせるとよくない、と気がついたのだ。意外だが、飯島さんは流斗君の怒りから私を守ろうとしてくれる。
「すみません朝河先生。私、今から購買に行くので、終わったら内線します」
私は一礼して、背を向けた。
「それなら立ち話でいいから。僕も付き合いますよ」
なおも食い下がる流斗君に、沢井さんが割り込んできた。
「素芦さん、先生が来てくれたんだから、そこで打ち合わせすれば?」
沢井さんは、奥のパーテーションで区切られたスペースを指した。
「ふーん、なるほど……ま、いいでしょう」
ざっと彼は沢井さんを見やると、私に向き直った。
「じゃ素芦さん、あっち行きましょうか。祭りのこと調べたいから、スマホ忘れないで」
私は、表情を変えない沢井さんと、おろおろする飯島さんを見比べつつ、月祭りの資料を手に、流斗君を追った。
三週間ぶりに彼と会った。
「先生、月祭りの件ですか? 棟ごとにブースを出すので、私は、棟の代表の先生と進めています。先生、ご要望がありましたら、邦見先生にお願いします」
邦見先生とは流斗君の先生にあたる教授で、宇宙棟のリーダーだ。
素っ気なくされた仕返しをしているわけではない。効率よく仕事を進めたいだけ。
「邦見先生は僕よりずーっと忙しい。国の委員会をいくつも掛け持ち、他の大学の客員教授も務めたりだ。この件、先生から僕に任されてる」
怒りだけは伝わる。私も自然、硬直する。
「わかりました。朝河先生も衛星プロジェクトを抱えて忙しいかと思います。今回のテーマにかなった先生と打ち合わせてもいいですよ」
「テーマ? ウサギ、亀、月、水のどれかに関係すればいいんですよね」
「先生のご専門は、宇宙生成論です。月は、宇宙生成のずっと後にできたんでしょう?」
「へー、勉強したんですね」
流斗君が、ニヤッと笑った。
「じゃあ、月がどうやってできたか知ってる?」
うっ、それを聞かれると、えーと……どうなんだろう……。
「何か、ふらふらしている小さな星を捕まえた、とか?」
またドヤ顔された。
「うん、そういう説もある。最近有力なのは、地球に火星ほどの大きさの星がぶつかり、バラバラになった破片の一部が月になったという説かな」
「先生、何でも知ってるのね」
「宇宙棟の先生方の研究分野は把握してます。月の研究をする先生との打ち合わせも僕が進めます」
彼は怒っている。なのに私は、このようなやり取りを喜んでいる。
「それで月のことがわかるサイト見つけたんだ。今からそっちにURL送るからチェックして」
それでわざわざ『スマホ』忘れないで、と言ったんだ。
アプリがメッセージの受信を知らせる。
私は、事務的にメッセージを確認する。そして、声を上げそうになった。
『取材させないとクビだったの?』
流斗君の目は、相変わらず怒りに満ちていた。
流斗君のメッセージに私はただ釘付けになる。どうして流斗君がそれを?
「どう? URLチェックした? どう思った?」
「私には難しくてわかりません」
取材の時、飯島さんが漏らしたのかもしれない。
飯島さんがなぜ私とここから追いだそうとしたのか、流斗君がなぜ怒っているのか、ようやくわかった。
「そんなはずない。そのサイトのクイズ、イエスかノーかの二択ですよ」
「じゃ、ノーです」
「僕はイエスだ。じゃ、次に行きますね」
流斗君はまたスマホをいじりだした。今度は、西都科学技術大学宇関キャンパスのホームページを表示した。
「月の研究は、この都倉光先生ですね。月の石の分析をしています。ウサギに見える月の影の話をしてもらってもいいかな」
「あ、あの、ですから……」
その後、彼は、自分が送ったメッセージに触れることなく、祭りのブースの話をすすめた。
「祭りは、ブースの周辺だけじゃないんだ」
「公園のブースは、宇関の外から来た人に宇関をPRするため、新しく始めました。宇鬼川の源流のある珂目山の滝つぼに、折り紙で作った小さな舟を流します。宇関町内で川沿いの区域ごとに流します」
その滝つぼに彼と出かけ、同じ話をした。
「ということは、川沿いの地域、一斉に同じことをするわけだね。川はどれぐらい長いの?」
「宇関町の東と南の境目を流れています。町全体が、祭りに参加するんです」
「そんなに広範囲なら、ウェブカメラを置いて、祭り特別のサイトを立ち上げ、各地の様子をライブで見られるようにしたら?」
「それいいですね。役員さんに提案してみます」
「システムを作るなら情報棟の先生がいいな。尾谷先生に話しておくよ」
この前インタビューを録画した情報工学のイケメン先生だ。流斗君とは、宇宙観測衛星プロジェクトのプログラム開発で関わっている。
カメラの話が終わったところで、流斗君は立ち上がった。
「素芦さん、大体わかりました。じゃ、また」
私も一緒に打ち合わせコーナーを出て、席に戻る。飯島さんが、チラチラ私をうかがい「どうやった?」と小声で聞いてきた。
「祭りの宇宙ブースは朝河先生にお任せします」
私はいつもの仕事に戻る。
流斗君は、沢井さんに告げた。
「打ち合わせ終わりましたよ。雑誌の取材も上手く行きました」
人懐っこい笑顔だ。そうだ。流斗君は、取材の後、ここに来たのだ。
「今後、取材の立ち合いは、この人にお願いします」
彼が指名したのは、私の先輩パートにあたる海東さんだった。
流斗君は、取材の立ち合いにパートの海東さんを指名した。海東さんは「はい?」とぽかんとしている。
沢井さんが抵抗した。
「いえ、この海東は、取材関係の仕事はタッチしていませんので、先生に迷惑かけます。飯島が何かしたのでしょうか?」
「飯島さんに問題ありません。でも、僕と飯島さん、ほとんど年、変わりませんよね。同じ年の人に立ち会われると緊張しますから」
そこで飯島さんも入っていった。
「いやいやいやいや、先生、全然緊張なんてなくて、取材慣れされとるなあと思いました」
「そう見せただけです。その……僕と同年代ってほとんどが学生でしょう? だからどうしても飯島さんに対して学生扱いしそうで、怖いんです」
「沢井さん、朝河先生は全然そんなんありませんから!」
なおも飯島さんが訴える。が、沢井さんは頭を振った。
「わかりました。どうであれ飯島が苦手とおっしゃるなら、今後は私が立ち会います」
それでも流斗君は引き下がらない。
「それも緊張します。課長にわざわざ立ち会ってもらうまでもありません」
「でも、私も飯島もダメだとすると後はパートですよ」
「どうしてパートだとダメなんですか?」
流斗君は、何が何でも譲らない。
「僕は、立ち合いがない方がいいけど、それがダメなら、なるべく邪魔をしない人がいいんです。それなりに取材の経験はありますし……まあメディアがちゃんとしたところならね」
彼の顔が曇った。やはりカルト教団の取材を安易に受けたことを悔やんでいるんだ。
「広報で立ち会う人の指名もできないなら、取材はこれきりにします」
そう言い切った流斗君に、沢井さんは尚も抵抗する。
「先生はそれでよくても、海東が可哀相です」
それまで自分の話なのに、蚊帳の外にされていた海東さんが入ってきた。
「朝河先生の研究室に行って、インタビューの様子を見ていればいいのですか?」
沢井さんが首を振る。
「それだけじゃないわよ。ちゃんと中身を理解しないと」
「えー、海東さんだっけ? それで充分ですよ」
流斗君が笑っている。
「でも先生、記者は無謀なリクエストしてきます」
「僕が断ればいい。中身は発表前に記事や映像を送ってもらってチェックすればいい。そのチェックは、首都本部の広報に頼みます」
「いや、せめてチェックぐらいは私たちが……」
沢井さんは尚も食い下がる。
「宇関の広報の皆さんは忙しいでしょう?」
突然、押し付けられた仕事に海東さんが、口を開いた。
「朝河先生って宇宙ですよね。私SFとか宇宙大好きなんです。楽しくなりました」
私は前に海東さんから聞いていたが、誰もが驚いている。仕事を押し付けた流斗君も含めて。
「海東さん、それは助かります。じゃ、さっそく次の取材も頼みます。調整は本部がやるから大丈夫ですよ」
流斗君は、スマホのデータを呼び出し、海東さんに見せている。
「ま、待ってください。朝河先生! 立ち合いを海東にというのはわかりましたが、段取りは、私がしますから」
沢井さんが割って入った。
「メディアへの窓口は本部の広報に頼みます。じゃ」
流斗君が微笑んで立ち去った。
海東さんは「沢井さん、今度はこの人の取材希望です。面白そうですね」と、笑っている。
「ええ、そうね。私たちは、本部の広報に任せればいいから」
沢井さんはおろおろしながら、海東さんに説明した。
私は別の仕事に取り掛かる。飯島さんの突き刺さる視線を感じながら。
1
あなたにおすすめの小説
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる