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番外編 ハーレムな光の勇者の夢を見た

第3話

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 母親の所に行くことになった。
 どうゆう経緯で来ることになったかはわからないけど、お兄さんかお姉さんかわからないけど、後をついていけばついた。
 気がつけば、そいつはいなくなっていた。

 数年の時が流れ、14歳の誕生日に、勇者として旅立つことになって、告げられたことがある。
「伝えなくてはならないことがあるの」
「何を?」
「実は本当の母親ではないのよ」
「うん、わかってた」

 そんな思い出に浸っていると、
 青い髪の女の子、アシュリーが「ヤンゲル様」とかけよってきた。
「ヤンゲル様、お会いできて光栄です」
「光栄って、昨日会ったばかりじゃん」
「ヤンゲル様に少しでも、一緒にいたいんですわ」
「いつでも会えるよ」
「わがままは言いませんわ。わたくしは、ヤンゲル様と一緒にいられる時間がほしいのです。そのためなら、何だってしますわ」
「俺たち、ずっと一緒にいるはずなのに…」

 俺はアシュリーが好きだけど、気持ちを伝えられずにいる。
 アシュリーの敬語を常に忘れない話し方、
貧乳だけどそれに負けないくらい清楚で穏やかなところ、
気が弱くて守ってあげたくなるような雰囲気、
短髪だけど撫でると柔らかい髪、
俺の好きな青が彼女の髪の色になっていて、
小柄の部類になるけど、身長は俺と同じくらい、
俺より年下だけど、10歳以上は離れていない、
怒るところを一切見たことがないし、
一途で、他の男になびかない。
 そんな彼女の好みのタイプは、心情に溢れる人らしい。

 アシュリーは、一人っ子ではないし、兄はいないらしい。
 彼女の姉妹弟きょうだい構成は聞かされていない。
 アシュリーには、母親というものがいないらしく、母親がいるって言うのをどういったものか知りたいと言い出す。
 
 彼女とよく二人旅をする。
「わたくしたち、結婚できるのでしょうか?」
「いきなり、何を言い出すんだ?」
「ヤンゲル様は、何故モテるのかしら?嫉妬してしまいますわ」
「あはは…」

 もかして、実は俺たちは両思いなのではと思わせるような発言はがりするから、
俺から告白しようか、アシュリーの方から告白してくれるかもしれないと、
二つの気持ちがさまよった。
 こんな会話されたら、俺のことを好きとしかとりようがないような気もする。

 アシュリーの手を握りながら、二人で歩いた。
 嫌がる気配がない?
 付き合ってもない男から、手を握られたら嫌がるはずなんだが。
 むしろ、喜んでるようにも見える。

「他のやつといたいとか、思わないのか?」
「今更何をおっしゃるのですか?
ヤンゲル様と一緒でいいんですわ」
 そんなことを言い切るアシュリーも、アシュリーだがな。

 ついた先は、洞窟。
 こわいなあ。だけど、アシュリーの前でそんなプライドを崩すようなことは言えなかった。
 震えていたら、どうしようか?
 俺はごまかせる自信がなかった。

 誰にも内緒だけど、俺は今二人の女性に恋をしている。
 アシュリーとは、正反対の女性に。
 恋をしているだけで、付き合ってはいない。

 髪は短いとも、長いとも言えない。
 胸は小さくもなければ、大きくもない。
 あいつの怒るところなんか、しょっちゅう見る気がする。
 笑うところとか見たことないが。
 かわいいよりも、かっこいい。
 アシュリーは嫉妬深いところがあるけど、嫉妬とかする様子がないから俺のことを好きでないように思えてくる。
 性格は、お転婆。
 アシュリーは薄い青い髪なのに対し、彼女は濃い青い髪だ。
 名前は、リッキー。本名かどうかは不明。
 
 そんなことを考えながら、洞窟の中に入る。

 俺が頭の中で考えていることを読まれたかなと思いながら、
 横目で見たけど、
 アシュリーは微笑みながら腕組みに夢中になっていたから、
 胸を撫でおろした。

 他の女の子のことを考えていることを知られたら、
 アシュリーの嫉妬は半端ないからな、
 思うならほどほどにして勘づかれないくらいにしておかないと。

 洞窟に入る理由、それは俺が勇者だからだ。
 勇者として、魔王とやらと戦わなくてはならない。
 俺もこわいんだよ。
 何故、魔王と戦わなくてはならない?

 年頃の少年らしいことしていたいよ。
 彼女を作って、デートして、宿があれば…。
 あんまり想像を膨らませないでおこう。

 剣を構えながら、進んでいく。
 アシュリーは俺の左を腕組みしてるから、はっきり言うと戦うのに邪魔でしかない。
 こいつ、何しに来てるんだ?
 アシュリーって、戦闘能力とかあるのかな?戦ったところを一回も見たことないような気がする。
 
 ここはどんな言い方をしよう?
 彼女を傷つけたくない。
 
「アシュリーって戦えるの?」
「大丈夫ですわ。ヤンゲル様が守ってくださるのなら、どんなに弱くても足手まといになりません」
 ええー!

 それが一番困るんだよ。
 アシュリーを守りながら戦うとか、器用なことができるかな?
 戦えないくせに、一緒にいることが足手まといそのものでしかない。

 そして、俺とアシュリーは、洞窟で魔王に出会うのではなく、牛が沢山いる牧場に辿り着いた。

 魔王の罠?
 罠にしてみたら、まともではないな。
 もし、魔王が幻覚を見せるとしたら、綺麗なお姉さんとかを見せるならわかる。
 牛なんか見たところでどうってことはない。

「可愛い~」
 どこが?
 草食って、「モー」しか鳴かない牛のどこが可愛い?

「魔王、出てこい!いるんだろ!」
 こんなところ見たところで、感動なんかするわけない。
 
「ふはははははは」
 と魔王が登場したものの、すぐに転んで擦りむいた。

「痛い!痛すぎる!もうだめだ、立てない」
 魔王は泣いていた。
 なんて弱い魔王なのだろう。

「牛は解放する、だから許してくれ」
「解放?」
「そうだ、食肉として出荷されそうな牛をさらったんだ」
 悪い魔王じゃなさそうな気がしてきた。

「わかりましたわ。その代わり、その牛をくれませんか?」
「いいとも」
「いいんかい!」 

「ただ、牛は大事な食用肉となる。となると、食肉ハンターから狙われる危険性がある」
「食肉ハンターですか?」
「そうだ、食肉ハンターは豚、牛、鶏などを狙う」
「食欲ハンターの間違いだろ?」
「とにかく、この牛を食肉ハンターから守ってほしいんだ。
わしは痛くて立てん」

 俺とアシュリーは、牛を村に持ち帰ることにした。
 
 牛は顔が似てるから、見分けがつかないな。

「大変だ、食肉ハンターが来たぞ!」
 村人の叫びを聞き付けて、俺は剣で食肉ハンターと戦う。
 何匹かは食肉ハンターに連れてかれてしまう。
 
 俺一人じゃ、勇者の力が覚醒してるようでしてない今では、複数で襲いかかる食肉ハンターに勝てそうになかった。
 アシュリーはどこにいるかわからないけど、頼りになるかどうかわからないのならいなくていいや。
 
 食肉ハンターは、一人一人は強くないけど、数が多すぎた。
 村人はただ俺を応援するだけで、なにもしない。

 とうとう、俺は疲れきってしまう。
 食肉ハンターから牛を守りきれなかったのだ。
 食肉ハンターは、牛を連れ去ってしまった。

「お前さんはよく頑張った…」
 村長は俺を慰めてくれたけど、お前も見てるだけじゃなく、何かしろよな。
 いくら勇者だからって、何で俺一人の役目になっている?

「今日は体を休めるとよい」
「親切にどうも」
 俺は皮肉を村長に吐いたつもりだった。
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