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番外編 ガーネット編集部

第6話

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「ただいま」
 おれは帰るなり、挨拶をした。
 今日は疲れた。
 何で、こんなに疲れるのか、自分でもわからなかった。

 アクアマリン編集部に嫉妬してしまう。
 アクアマリン編集部は、専業主婦の妻を持つ社員が多いし、
 シングルファザーとかいたりするらしい。

 炎は、家にいた。
 そうか、これはこれからどうするのか切り出さなくてはならないけれど、
 今の年収では到底、結婚なんてかんがえなれなかった。

 ガーネット編集部の平均年収が、売上激変のため、 
 200万ぐらいで、
 ブラックな企業に働いているようなものだった。
 ボーナスや残業代がついても、この年収だった。
 なるべく、残業や休日出勤はしないようにという会社の方針はある。

 トパーズ編集部の平均年収は、300万。
 節約して、子なしなら、結婚できそうな年収だと思える。

 トルコ石編集部の平均年収は、400万。

 ムーンストーン編集部の平均年収は、500万。

 アクアマリン編集部の平均年収は、600万。
 エリートも多いし、ハイスペック社員も、多いように感じた。

 おれの年収は、250万。
 これで、結婚するとか、人生の決断とか、できそうになかった。

 炎の年収は、知らない。
 世帯年収にしても、今の時代、そんなに給料のいい会社なんてないと思うから、
 二人で給料を合わせても、ぎりぎり生活できるくらいでしかないように感じた。

「どうしたの?顔色がよくないね」
「実は・・・・」

 会社が倒産しそうなことを話したほうがいいのか迷った。
 おれ自身のプライドを傷つけそうで、こわかった。

「会社が、赤字なんだ」
「うん。聞いた」
「どこで?」
「テレビでも、話題になっていた」
「そうか」
「編集部は、オンラインで雑誌が読めるように販売しているのに、
ガーネットはどうして、やらないのかな?
今の時代は、オンラインで読む時代なのに」

 おれも、同感だ。
 オンラインで販売した方が安いだろうし、
 ターゲットとしている年代にも読まれる可能性もでてくるし、
 そうすればいいと思うのに、
 なぜか、やらない。

 社員会議で、そういった話もでていたはずなのに、
 一行に実行されなかった。

「さあ、何でだろうね」

 おれも、子供を考えていたけれど、
 子供なんて望める状況かな?
 おれが女と結ばれたとしても、この年収では子育てなんてできそうになかった。

 日本の社会は、どうなっている?
 バブルの時みたく、ほぼ全員が結婚して、子供が育てられる時代じゃない。

 おれが学生の頃にアルバイトで稼いだ貯金も、
 使うことになるのかと思うと、おれがそれだけ稼いでこれていないという現実を突き付けられ、疲れてくる。
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