狂い咲く花、散る木犀

伊藤納豆

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2章 寄り添い

33話 *仲良くなりたい

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苦しそうにする晴柊だが、琳太郎が少し玩具を動かせば途端に気持ちよさそうな声をあげる。その一瞬、体が弛緩したところに琳太郎が一気に残り2つを埋め込んだ。


「ぁあ゛んっ…!?……ひっ、ぅ……ま、て…う、ご…かさない、ん…でっ…!」


今まで琳太郎のものでもこじ開けられたことのない奥に、異物が挿入される。晴柊が思わず言葉で琳太郎を制止する。そんなことしては逆効果になりただ琳太郎を煽るだけだという普段できるはずの判断ができないほど、晴柊は慌てていた。しかし腕を拘束され足も琳太郎に掴まれている状態で晴柊は何もすることができない。


「わかった。動かしはしねえよ。」

「はぁっ……ぁ………んぅ、いっ…あぁんっ!?!?あ゛、だめ、ぁんっ……!!」


琳太郎が珍しく晴柊の要求を飲んだことに、晴柊は驚きと少しの安堵を感じていた。しかしそれも束の間。晴柊にさらなる圧迫感だけではない熱い快感が迫る。琳太郎が晴柊の下っ腹当たりを上から押しつぶすようにして力を入れていた。晴柊のナカに入ったアナルパールに肉壁が押し当てられる。今までとは違う方向の流れで快感が走った。晴柊は頭の中を真っ白くさせた。丸いものの形が腹の神経を伝って晴柊に伝わる。苦しい。気持ちい。早く抜いてほしい。それなのにはしたない声が漏れ続けることが恥ずかしくて、晴柊は耐えるようにして唇を噛んだ。


「声が聞こえないとつまらん。」

「ん、っ……ぅ、……あ、あっ…」


琳太郎が晴柊の口に人差し指と中指を入れた。晴柊の口が閉じることを防がれ、開いた口から声が漏れ出る。息も余計にしづらくなったせいで、晴柊は肩で息をするようにして呼吸を乱していた。晴柊の目が少しずつ蕩けていく。この表情は、晴柊が気持ちよくてボーっとしている証拠だった。この時の晴柊の身体は緊張状態から解放され、全身の筋肉が弛緩しているのだった。琳太郎はそれをわかっていて、晴柊の尻から唯一出ているリングの取っ手に指をかける。


そして、勢いよく引き抜いた。晴柊のナカに無理やり押し込まれていた6つの球が、一気に、ずるずると出てくる。


「ぁあ゛ぁ˝ん゛っ…!?……ひっ…ぁ˝…!?!?!?」


晴柊の脳天に雷が落ちたような刺激が襲う。初めての気持ちよさに晴柊の目の前には火花が飛んでいた。頭が溶けそうなほど熱い。抜かれた勢いで、晴柊は射精していた。球が無くなった穴が、ぽっかりと開いている。琳太郎はそれをじっと眺めた。可愛い顔した晴柊の穴がこんなにいやらしくしたのは自分で、これを知っているのは自分だけという優越感に浸っていた。


晴柊はまだイッた余韻が抜けきらず、体を震わせてベッドシーツを握っていた。琳太郎はたまらず、晴柊の内腿や足の付け根にもキスマークを落としていく。これは自分のものである、と主張するように。



琳太郎は晴柊をいつもの如く抱き潰すと、ぐったりする晴柊とは真逆の、ピシッとしたいつものスーツ姿に身を包み仕事に行った。時刻は昼の12時半。晴柊は朝からの濃厚なセックスで早速足腰が辛かった。しかし、体力を消耗したのでお腹は減っている。そろっとリビングに行く。


今朝、新しく紹介された3人のうち、初めてお世話になるのが遊馬だとは晴柊の気が少し重くなった。遊馬は人一倍晴柊との間に壁を置いていた。晴柊にもそれが伝わっていたので、余計に気まずかった。


リビングに出ると、テーブルにご飯らしきものが置かれていた。出前で取ったと思われる、ビニール袋に入った何かはきっとご飯だろう、と晴柊は駆け寄った。遊馬が少し離れたところでゴミを纏めている。テーブルの上に置かれたビニール袋を覗くと、


「か、カレーだ…!」


ナンカレーであった。最近の出前はバリエーション豊富で、大手チェーンを始めとする多くの飲食店のテイクアウト商品を配達してくれるというサービスがあるらしい。晴柊には程遠い世界のことだったので、ここに来て初めて知った。どこかのインドカレーのお店らしいロゴが容器についてある。


「ありがとうございます。いただきます!」


片付けをしてくれている遊馬に晴柊が声をかける。ナンってこんなに大きいのか、と晴柊が手でちぎってカレーに浸けて食べ始めた。遊馬はその様子を見ながら、少し前に朝ご飯をあんなに食べたはずなのに、よく食べるなと思った。何時でもお腹が減れば自分で好きに食べてくれたらいいというつもりで、適当に配達を頼んだものであったのだが、こんな早く食べるとは想定外であった。


遊馬はそれより、晴柊の身体に気が留まる。ワイシャツに下は下着のみという晴柊の肌が見える部分に、これ見よがしに付けられた無数のキスマーク。勿論付けたのはあの組長なわけだが、遊馬は苛立ちとも違う複雑な感情になった。


あの組長がなぜこんな餓鬼に固執するのか。


それが遊馬には納得できないのだった。琳太郎のことを尊敬し、憧れとして慕っているからこその気持ちだった。晴柊は黙々とカレーを食べている。何も言わない遊馬に対し、晴柊も何も気にしていないようにカレーを頬張っているように見えていた。


しかし、晴柊は秘かに気まずさを感じていた。日下部とは他愛もない世間話くらいはするし、篠ケ谷とはいつも大体何か喋って(言い合い)している。何か喋った方がいいのか、でも喋りたくはなさそうだし…と一人で悩んでいた。遊馬、天童、榊の3人は日下部と篠ケ谷同様琳太郎に近しい部下であるみたいだし、これからお世話になるのならできるだけ仲良くなりたい、と晴柊は思うのだった。


「遊馬さん……は、西洋美術?が、好きなんですよね。きっかけとかあったんですか?」


晴柊は勇気を振り絞って聞いてみた。遊馬が睨みはしないものの、無感情な冷たい目で晴柊を見る。篠ケ谷とはまた違った威嚇の仕方であった。


「別に、昔適当に入ったギャラリーでそういうのに興味持っただけ。無理やり距離を詰めようとなんてしなくていいって言っただろ。俺にとってお前はただの組長命令の仕事相手にしかすぎないし。」


他の2人や篠ケ谷なら暇潰しくらいに付き合うのだが、遊馬にはその気にはなれなかった。晴柊は「そうですよね…」と小さく返事をするとまた黙々とご飯に戻った。これで懲りただろう。遊馬は晴柊に興味はないし、気に食わないのでこれでいい、と、また部屋の片づけに戻った。


まるで初対面のときの篠ケ谷のようだなと晴柊は思うのだった。あの二人は真逆のようでよく似ている。
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