狂い咲く花、散る木犀

伊藤納豆

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7章

100話 *帰路

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「あんたのせいで!!あんたのせいで!!!」

「おい、大変だ!早く救急車!!」

「取り押さえろ!」

「この悪魔!!!!悪魔の子供め!!!」


珍しく都心で雪が降り、酷く寒い冬の日であった。幼い琳太郎の目の前に赤く広がる、血の海。叫ぶ女の声。慌てる組員たちの声。騒がしいはずの音が、段々と遠のいていくのがわかる。琳太郎の体温を奪うかのように、雪がうっすらと、小さな身体に降り積もっていった。



遥か昔の夢を見ていた。心地の悪い目覚めに、動悸が激しいことに早朝から嫌気がさした。


「りんたろう…?」

「ああ…起こしたか。」


隣で眠っていた晴柊も、琳太郎の空気を感じ取ったのか目を覚ましていた。晴柊はすぐに琳太郎の異変に気が付くと、身体を起こし、顔を覗き込む。


「具合、悪いのか?顔色悪い…。」

「平気だ。…昔の夢を見た。」


琳太郎でも嫌な夢を見ることがあるのかと晴柊は思ったが、心配が勝ち背中をさする。琳太郎は気を紛らわすように晴柊ごともう一度寝転がった。晴柊は心配そうに琳太郎を見ているが、琳太郎は大丈夫だと、自分にも言い聞かせるようにして晴柊を力強く抱く。


琳太郎の昔の話。晴柊は聞いたことが無かった。いつかは聞きたいと思いながらも、琳太郎はヤクザなのだ。軽々しく聞けるような内容ではないのではないか、と予想が付く。


「晴柊。明日、晴柊のおばあさんの墓参りに行こう。」

「えっ…いいの…?」

「遅くなってすまない。」

「ううん。嬉しい。」


晴柊はぎゅっと琳太郎の背中に手を当てる。年末、晴柊は祖母の墓参りにいきたいと願い出ていたことを、琳太郎は忘れてはいなかった。晴柊はそれだけで胸がいっぱいになった。


次の日、琳太郎は約束通り晴柊を祖母の墓参りに連れて行ってくれた。晴柊は祖母の眠る墓地の前にしゃがみこみ、手を合わせる。琳太郎は入口かどこかで待とうと考えていたが、晴柊が付いてきて欲しいというので共に手を合わせた。ヤクザなうえにこの少年を買った自分なんかが手を合わせれば罰が当たりそうだと思っていたのだが、晴柊は琳太郎にも手を合わせて欲しいと頼んだのだった。


晴柊は数十秒、目を閉じ天国の祖母と会話をしていた。そして静かに、ゆっくり目を開ける。


「ありがとう、手合わせてくれて。ばあちゃんも喜んでるよ。」

「まさか。寧ろ、恨まれてるよ。お前を地獄から大地獄に連れ込んだんだからな。」

「なあ、ばあちゃん。俺の恋人、こういうこと言っちゃうんだよ!ありえないだろ?…でもさ、俺、どうしてもこの人の隣にいたいんだ。琳太郎と一緒にいられるなら、地獄でも大地獄でもいいや。だからさ、心配しないでね、ばあちゃん。」


晴柊が太陽の様に眩しい笑顔で墓地に報告する。その言葉は真っすぐで、恐ろしいほど綺麗だった。琳太郎の心がこれでもかというほど満たされてゆく。空は晴れ渡り、冬らしい冷たく澄んだ空気が琳太郎の脳裏に焼き付いた。


帰りの車内で、晴柊は隣に座る琳太郎をチラチラと見ていた。琳太郎の幼少期、家族、学生時代…色々と聞こうと迷っていた。先日誕生日を祝われたときも感じていた、晴柊の琳太郎への無知が、祖母のお墓参りを終えふと蘇ってきていたのだった。


「なんだ?可愛い顔して、誘ってるのか?」

「なっ…馬鹿!違うよ!超真面目なこと考えてたのに!」

「早く帰ろう。シたくなってきた。」


琳太郎は晴柊に車内で迫る。無駄に大きいはずの後部座席が、なぜか狭い。運転してくれている日下部の視線などどうでもいいというように、琳太郎は晴柊にキスをした。


「ま、ちょっと、家まで待って…!」

「家まで遠い。」


晴柊の祖母の墓がある墓地は東京の外れ、山奥にあった。そのため、家までの時間は確かに長い。ただ、ここでがっつかれるのはあまりにも晴柊の羞恥心が耐えられそうにないのだった。


「ここはダメだってば…!あ、ちょっ……ぁ、…」


琳太郎は抵抗する晴柊の手を抑えつけ、無理矢理耳と首元に吸い付いていく。晴柊が弱いことを知ってのことである。特に、タトゥーを入れてからという物、晴柊は項に触れられることが苦手だった。琳太郎の指が、まるでタトゥーをなぞるように触ってくる。まるで拘束具の様に機能しているシートベルトのせいでうまく動ききれないのも、晴柊の焦りと興奮を煽っていく。


「篠ケ谷や遊馬なら駄目だけど、日下部ならいいだろ。」

「なにその基準、駄目だバカ!!」

「ああでも、見せつけであいつらの前でやるのもいいか。篠ケ谷のときなんてお前、見られて興奮してたしな。」

「はぁ!?そんな訳ないじゃん!大体、そういう趣味あるのは琳太郎だろ、もう、ぁっ…!!」


琳太郎にとって日下部は一番長い付き合いである。というのも、琳太郎が8歳の時、時期頭首となった時からの部下役兼教育係役兼ボディーガードなのである。琳太郎は日下部がどんな人物なのかも、自分にどれほど忠誠心を持っているかも、理解しているのだ。


琳太郎の手が晴柊の服の下へと潜っていく。琳太郎の勢いは止まらなかった。晴柊はパーカーの下に一枚インナーを着ていた。冬空の下の墓参りだったのである。防寒は完璧にしたことが、どうやら仇となったらしい。


琳太郎の手が晴柊の乳首をインナー越しに掠める。


「ぁ、っ……!だ、だめ、それっ…ん…!」

「薄い生地だもんな、コレ。肌にぴったり密着したインナー越しに乳首カリカリされるの、堪らないんだろ?」

「ぅ、うっ……ち、が…ぁ…ふ、ぅ……っ」


晴柊からどんどんと力が抜けていく。さっきまで抵抗し藻掻いていた気迫はどこにいったのやら、蕩けた顔で快感に浸っている。声が出ることをいつも以上に気にしているのか、唇を噛みしめ吐息交じりの声が漏れていく。


「はは、もうガチガチ。いつもより興奮してる。」


琳太郎の手が晴柊のズボンにかかると、そのまま勢いよく引き下げる。晴柊は社内であろうことかズボンを下ろされ下着丸見えの状態にされた。こうなると、晴柊が気になるのは外の視線であった。隣を走る車、赤信号、どのシチュエーションでも人の視線が気になる。


しかし、琳太郎と日下部はこの車の後部座席はマジックミラーなのを知っていた。知らないのは、晴柊だけであった。


「車のシート、汚すなよ。汚したらお仕置きだ。」


車のシートぐらい本当はどうってことはない。しかし、晴柊を虐めたい気分になった琳太郎はそれを利用してプレイの一環にするのだった。


「ぅ、……ん、ぁ……りん、たろ……」


晴柊が声を僅かに震わせながら琳太郎を見る。顔は真っ赤である。琳太郎の乳首を執拗にする手は止まらない。晴柊は足をもじもじさせながら物欲しそうな視線を向けていた。


「口でいわないと分からないぞ。俺はお前が嫌がることはしたくないしな。ほら、何かして欲しいことがあるならちゃんと言え。」


琳太郎が意地悪く笑った。晴柊は悔しそうな表情をするが、どうやらこの状況に興奮しているのは確からしい。いつもよりも堪え性も無ければ快感に貪欲である。


「さわ、って………ち、んぽ……触ってほしぃ……尻も、早く…」

「さっきまであんなに嫌がってたくせに。気持ちいことには本当に堪え性がないな。」


琳太郎はきゅぅっと少し痛いくらい乳首をつねると、晴柊のモノを下着越しに擦り始める。


「ケツんナカも弄ってやるから、脚広げろよ。………もっと広げねえと、やりづれえんだけど。」


座席シートに横になっている状態では背もたれが邪魔してうまく晴柊の足は開かなかった。そのため琳太郎は晴柊の背もたれ側の足を大きく広げ持ち上げると、ヘッドレストにかけさせる。晴柊は車内で股をおおっぴろげる形になった。


「あ、い、いやっ!」


晴柊は思わず顔を真っ赤にして自分の服をグイグイと下げようと引っ張っている。晴柊の目に映る外の景色、運転席にいる日下部に羞恥心が限界に来たのだろう。


「でも、疼いてたまらないんだろ?」


琳太郎はどこから取り出したのか、ローションを晴柊の尻に仕込み始める。琳太郎の言う通りだ。ナカも前も、触ってほしくて仕方ないのだ。晴柊はゆっくり頷く。こんな気持ちにさせてきたのは琳太郎なのに、ズルい奴である。家まではまだ1時間弱はある。


琳太郎の指が、ナカをほぐす様に動く。晴柊は短く息をもらしながら、声を必死に我慢しているようだった。ヘッドレストにかけた晴柊の足に、ぎゅぅっと力が入る。


「忘れてると思うが、ここ、汚せねぇからな。イかせてやれねえぞ。」

「え、あ、うそっ……」

「お前は快感に弱すぎるんだから、我慢の練習だ。」


琳太郎はそういうと、またどこから取り出したのか、見覚えのある道具を見せてくる。この人はどうしてこうもほいほいアダルトグッズが出てくるのか。琳太郎はナカにうずめた指を抜くと、エネマグラを晴柊の入り口にぴったりと当てた。


晴柊のナカにぴったりとハマるようにして挿入されたエネマグラ。ぴんぴんに勃起し先走りで自分の服を汚しまくってるモノ、車内で痴態を晒した格好の晴柊に少なからず琳太郎も当てられていた。身体をまるで縛るかのようなシートベルトすら、特殊なプレイを連想させる。


すると、車が赤信号になり止まった。ふと、晴柊の視線に、琳太郎越しの窓の外の風景が飛び込んでくる。隣に並ぶようにして信号待ちしている車の人と、晴柊の視線がばっちりと交わった。無論、向こうは高そうな車かつ後部座席がマジックミラーなことに興味が引かれじっと見ていただけなのだが、晴柊にはバッチリと自分のこの姿を見られているような感覚になるのだった。


「りんたろぉ……いや、いやだ……目、合った……絶対合ったぁ…!バレちゃうっ……やだぁ…」


晴柊が今にも泣きそうなほど目に涙を溜めている。琳太郎の服をぎゅっと掴みしがみつくようにして懇願した。種明かしするのも惜しい程怖がり恥ずかしがる晴柊が可愛かったので、琳太郎は晴柊の足を下ろさせると、脱ぎ捨てていた下着とズボンを器用に履かせる。


晴柊は元の姿勢で座らせてもらえたが、一つ、晴柊のナカに埋め込まれているエネマグラの存在だけが、晴柊を煽り続けていた。



「こ、これ……やばぃ……ぁ、あっ…!」


晴柊が普通に座れば、必然とエネマグラがナカの奥へと埋まる。さっきのようにおっぴろげた姿勢のほうが幾分か楽だったはずなのに、とすら思わせる。特異なその形は、晴柊のイイところを圧迫し続けている。


「晴柊、我慢だ、我慢。着くまでイくんじゃねえぞ。いいな?」


琳太郎が晴柊の耳元で囁く。じわじわとナカが熱くなる。背筋がきゅっと弓なりに反ると、晴柊は服の裾をぎゅぅっと掴み唇を噛みしめて耐えている。


普段は甘いくせに、こういう時はまるで自分を服従させようてしてくる琳太郎。晴柊も晴柊で、興奮しているのだ。彼に掌握され、説き伏せられていることに。
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