狂い咲く花、散る木犀

伊藤納豆

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7章

101話 *いい子

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家まで残り15分といったところだろうか。晴柊はいつものように服を着て、きちんと座席に座っている。しかし、じわりと汗が滲み、足にぎゅっと力が入っている。時折赤信号で車が停止するとき、僅かな車体の揺れが晴柊を刺激する。


「ぁ、っ…」


晴柊がその振動で僅かに声を上げる度、運転手の日下部は罪悪感が襲うのだった。できるだけゆっくりと、刺激を加えないように、と神経を研ぎ澄ませながら運転していた。日下部も災難である。楽しそうなのは琳太郎1人だけだ。


「もうちょっとで着くぞ。そんなに物欲しそうな顔するな。家でちゃんと可愛がってやる。」


琳太郎が晴柊の尻をぽんっと叩く。


「ぅ˝っ……!や、やめろ…」


晴柊がキッと琳太郎を睨んだ。どうやら一人格闘しているらしい。さっきまで股をおっぴろげていたのに、いざきちんと席に座るとやはり恥ずかしさが勝つのか、尻のナカに入ったエネマグラを意識しないよう必死な様子だった。


やっとタワーマンションに戻ってきた。日下部は車を停めに行くため、先に琳太郎と晴柊を下ろす。琳太郎は当たり前の様にさっさと車を降りるが、晴柊はそうはいかない。動くだけでナカがぎゅっと締まるし、そうすれば前立腺を容赦なく刺激される。


「ほら、早く降りろ。」

「うるさいなぁっ……手、貸して…!」


誰のせいでこうなってると思っている、と晴柊は不満たらたらである。晴柊は琳太郎の手をぎゅっと握り車から降りると、そのままヨロヨロと歩き始めた。本当は抱きかかえて運んでもらいたいくらいだが、真昼間のエントランスでは問題ありありである。


晴柊は玄関に入るなり扉にもたれるようにして息を荒げている。ナカの異物を抜きたくてたまらない、という顔である。


「ベッドまで歩け。じゃないと褒美はやれないぞ。」

「それぐらいできる。」


鬼畜め。晴柊は靴を脱ぎ捨て、意地を張ったようにずかずかと寝室へと進む。早く自分を労われ、と、最早イライラし始めていた。寝室に入るなり、晴柊は急に意識し始めたのかまた自分の動機が上がるのが分かった。晴柊の後を追うようについていった琳太郎も、いつものベッドを見た瞬間、理解する。自分も大分我慢していたのだと。


琳太郎は晴柊を優しくベッドに寝かせた。


「りんたろ、抜いて……ナカの……早く…」

「急かすな。お前、これ好きじゃねえか。」


琳太郎がズボン越しに晴柊のナカに入ったモノをぐりぐりと押し込む。


「んぁっ……!ぁ、ん……」

「あ?…お前、ズボンの中ぐちゃぐちゃだな。何回か甘イキしたな?」

「車は、汚してないっ…」


シートを汚すなという言いつけは守ったぞ、と言わんばかりの晴柊の反応。


「着くまでイくなとも言っただろ。お仕置き決定な。」


琳太郎は晴柊のモノをズボン越しに握るように触る。心なしか楽しそうな顔である。


「ひぁっ…!ぁ、あっ…」


琳太郎はごそごそとクローゼットの中を漁っている。あのウォークインクローゼットには高そうなスーツとワイシャツ、少しの琳太郎の私服がキッチリ並べられている。その一角に、小さなカラーボックスがある。琳太郎のアダルトグッズ一式だ。仕事柄貰うのをそこに放り込んでいる、と以前は言っていたが、今は晴柊を嬲るコレクションである。以前までは気乗りしていなかったはずなのに、最近は積極的に仕入れていた。


「久しぶりに拘束でもするか。」

「い、いやだ、俺、動けないの嫌い…やりたくない…」

「お仕置きだから嫌なことするに決まってるだろ。」


晴柊は琳太郎の持ってきたものを見て顔を強張らせていた。黒い革にじゃらじゃらと伸びた鎖。なにかポールの様なものまで付いている。嫌な予感しかしないのだ。


晴柊は思わずベッドを降りようとハイハイするようにして逃げようとした。すぐに琳太郎は晴柊の足首を掴み引きずり込む。


「こら、逃げるな。」


琳太郎はそのまま晴柊をあっという間にすっぽんぽんにしてしまう。まるでマジシャンか?というほどの手つきである。


晴柊のナカでヒク付きながら押し込まれているエネマグラをまだ抜かないまま、琳太郎は晴柊に着々と拘束具を付けていく。晴柊は力では琳太郎に敵わないことを知っているので、この後の体力を温存することにシフトすることにした。賢明な判断である。


「なんだこれっ……」

「一ミリも動けないだろ?」


晴柊は両手首に手枷を嵌められ、それぞれの膝元に括られていた。そして足には1本のポールが固定され、足を閉じられない格好にされると、そのポールは首元へと鎖で繋がれている。足を動かそうとすれば晴柊の首が締まるうえに、両手両足も動かせない、ガチガチの拘束であった。


「ちょっとは抵抗されたほうが面白いけど、たまにはこういうのもいいだろ。俺がいないと何もできない。このままお前をずーっと放置して俺がいなくなれば、お前は死んじゃうな。俺がお前の全部を握ってる。どうだ?怖いだけじゃなくて、興奮してきたんだろ?」


琳太郎が晴柊の核心を突く。琳太郎への服従心が煽られ、恐怖と不安、少しの興奮が晴柊の中でふつふつと湧き上がっていた。身体が緊張すればナカのエネマグラを締め付けることになり、晴柊の腰が僅かに浮く。


「り、りんたろ…」

「ああ、これつけるの忘れてたな。」


そういうと、琳太郎が手に持っていた金属をぴたりと晴柊の立ち上がったモノの根元にはめ込んだ。ぴったりと、窮屈なくらいフィットするソレは、晴柊の精子をせき止めるものだった。


「なに、……?」

「コックリング。」


晴柊は名称を告げられてもピンと来ていない様子だった。琳太郎はすぐにわかる、と詳しくは説明しないまま、晴柊のモノをゆっくりと扱き始めた。


「ぁあっ…!…ん、ぅ……ぁ…」


今日はナカの刺激ばかりで放ったらかしにされていたこともあり、晴柊は少し触れられただけで敏感な反応を見せる。


「下手に抵抗しようとしたら痕残るぞ。大人しくしとくのが無難だな。」


身を捩らせようとする晴柊に、琳太郎が忠告する。真っ直ぐ貫くような快感に晴柊はただじっと、受け入れるしかなかった。琳太郎のもう片方の手が、晴柊の乳首をきゅっと摘まむ。


琳太郎の晴柊のモノを扱く手が先端を掠める。ぎゅっと尻が締まればエネマグラが容赦なく前立腺を押しつぶす。イってしまいそうだ、と、晴柊が足の爪先に力を込め、強烈な快感に備えた時だった。


「ん、ぁ、あ、イぐ、イっ……!!?……はぁ、ぁ……ぁ……?」


晴柊の身体はビクビクと痙攣していた。晴柊が望んでいた快感が放出されない。ただモヤモヤと、身体の中に留まっている。晴柊の脳裏に琳太郎が自分のモノにつけた金属を思い出した。


「出せなくて辛いか?さっき勝手にイッてたからな。お仕置きって言ったろ。」

「嫌、いやだぁ……こわい、これっ…」

「大丈夫。時間さえ守れば酷い目には合わない。イイ子にしてたら直ぐに外してやる。できるよな?」


琳太郎が晴柊の髪を撫でる。晴柊の大きな目が不安でたまらないと言いたげな色をしていた。しかし、必死に頷いている。琳太郎は自分の心臓が高鳴るのを覚える。晴柊は出せないもどかしさをただただ頭で受け入れるしかできない状況だった。


「そうだ。これから少し打ち合わせしなきゃいけなくてな。…ああ、そんな不安そうな顔するなよ。向こうの部屋でするし、すぐに終わる。」

「う、うそ……すぐって……ん、すぐ、って……いつ、だよぉっ…!」

「まあ、打ち合わせ次第だな。晴柊、いい子にするって約束したろ。」


晴柊は息を飲んだ。イイ子にしてたら、拘束具も、コックリングも外してもらえる。イイ子にしてたら、褒められる。


「ぁ、ん、んっ……早く、かえってきて……おねがい…」


お仕置きされている立場なのにお願いとは、と、虐めたくなるが必死に抑える。潮らしい晴柊に琳太郎は揺らいだのだった。


「寂しくないようにこれ入れといてやるよ。打ち合わせの邪魔になっちゃいけねえからな、口も塞ぐか。」


琳太郎はエネマグラを抜くと、バイブを取り出し晴柊のナカに埋めた。スイッチを強にすると、抜け落ちないように追加で固定する。晴柊は思わず甘い声を上げたが、琳太郎はすぐに晴柊の口もタオルで縛るようにして塞いだ。


「俺に見られてるって想像していたら、頑張れるだろ?」


琳太郎はそういうと、最後の仕上げに晴柊に目隠しをすると、一式、卑猥な格好になった晴柊の姿を目に焼き付け、寝室を後にした。塞がれた視界のなかで、晴柊は必死に琳太郎のことを思い描いた。無機質に自分のナカで震えるバイブも、琳太郎のモノだと無理矢理意識変換しようと試みる。何度イきそうになっても、射精は許されない。ただ、じっと、ご主人様の帰還を待つ。イイ子にするのだと、自分に言い聞かせた。
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