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幕間
99話 メンタルコーチ(2)
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「…はぁ?」
「うわぁ…」
今にでも殴り掛かりそうな琳太郎、その横でまるで面白いものをみるような天童。2人がリビングに入ると、そこには2人仲良くラグの上で眠っている晴柊と篠ケ谷の姿がいた。
人の気配に気が付いたのか、篠ケ谷がごそごそと体を動かし始めた。天童はまぁまぁと琳太郎を宥めている。まだこの面白い様子を見ていたい、といった様子だ。
「………ん~…」
「……げ……おはよーございます…」
つられて晴柊も起きるがまだ眠たそうにぐずっている。その横で篠ケ谷は目を覚ましたのか、視界に琳太郎と天童の姿を捉えるとバツの悪そうな顔をした。何より自分の上裸という格好も最悪である。
「おはよ~……あれ、りんたろう、早いね……おかえり…」
今の時刻は昼時。早朝に出かけた割には確かに早い帰還である。晴柊はまるで何事もないかのように目を擦りながら上半身を起こす。前髪がぴょこんと跳ねるようについた寝ぐせすら琳太郎の心をくすぐるが、今はそれよりも勝る篠ケ谷の存在であった。
「添い寝は浮気だ。」
「雑魚寝だよ雑魚寝。」
晴柊はしれーっとキッチンの方に行ってコーヒーを淹れようとしている。一人だけこの状況で暢気である。晴柊の肝の据わり方は異常だなと天童は思った。
篠ケ谷は、帰ってくるの早くねえかと天童に視線を送る。不満気だ。急遽予定が変更になったのだから仕方が無い。
「じゃぁ俺が一緒に寝てても文句ねえのか?」
「シノちゃん達とってこと?文句も何も、微笑ましいなあとしか思わないけど。」
自分と晴柊の側近たちに対する尺度の違いに琳太郎は気付きより一層不満を持つのだった。琳太郎は側近たちを部下として認め「男」と認識しているが、晴柊にとっては「家族」や「兄弟」なのである。
「俺がその辺の男と女と寝てたら?」
「は?それは浮気。嫌に決まってる。比べる相手が違いすぎるじゃん。」
晴柊はあからさまに嫌な顔をすると、琳太郎をあしらいながら朝食(昼食)の準備を始めた。これは晴柊を責めてもどうにもならないとわかったのか、琳太郎の怒りの矛先が篠ケ谷に向く。篠ケ谷は面倒ごとを避けたいとでも言うように天童が持ってきてくれた着替えを受け取りそそくさと退散しようとしていた。
「お前、減給な。」
「勘弁してくださいよ組長……」
「もーそうやっていじめるな!」
「なぁ~晴柊、今度俺ともお昼寝して♡」
「天童さんも元気無いときは良いよ~。」
「え、シノ、やっぱり昨日ヘコんでたんだぁ~!だから晴柊に慰めてもらってたんだぁ~!」
「ヘコんでなんかねーようるっせえなぁ!!」
どうやら晴柊はこの組のアニマルセラピー的役割を担っているらしい。
「…はぁ?」
「うわぁ…」
今にでも殴り掛かりそうな琳太郎、その横でまるで面白いものをみるような天童。2人がリビングに入ると、そこには2人仲良くラグの上で眠っている晴柊と篠ケ谷の姿がいた。
人の気配に気が付いたのか、篠ケ谷がごそごそと体を動かし始めた。天童はまぁまぁと琳太郎を宥めている。まだこの面白い様子を見ていたい、といった様子だ。
「………ん~…」
「……げ……おはよーございます…」
つられて晴柊も起きるがまだ眠たそうにぐずっている。その横で篠ケ谷は目を覚ましたのか、視界に琳太郎と天童の姿を捉えるとバツの悪そうな顔をした。何より自分の上裸という格好も最悪である。
「おはよ~……あれ、りんたろう、早いね……おかえり…」
今の時刻は昼時。早朝に出かけた割には確かに早い帰還である。晴柊はまるで何事もないかのように目を擦りながら上半身を起こす。前髪がぴょこんと跳ねるようについた寝ぐせすら琳太郎の心をくすぐるが、今はそれよりも勝る篠ケ谷の存在であった。
「添い寝は浮気だ。」
「雑魚寝だよ雑魚寝。」
晴柊はしれーっとキッチンの方に行ってコーヒーを淹れようとしている。一人だけこの状況で暢気である。晴柊の肝の据わり方は異常だなと天童は思った。
篠ケ谷は、帰ってくるの早くねえかと天童に視線を送る。不満気だ。急遽予定が変更になったのだから仕方が無い。
「じゃぁ俺が一緒に寝てても文句ねえのか?」
「シノちゃん達とってこと?文句も何も、微笑ましいなあとしか思わないけど。」
自分と晴柊の側近たちに対する尺度の違いに琳太郎は気付きより一層不満を持つのだった。琳太郎は側近たちを部下として認め「男」と認識しているが、晴柊にとっては「家族」や「兄弟」なのである。
「俺がその辺の男と女と寝てたら?」
「は?それは浮気。嫌に決まってる。比べる相手が違いすぎるじゃん。」
晴柊はあからさまに嫌な顔をすると、琳太郎をあしらいながら朝食(昼食)の準備を始めた。これは晴柊を責めてもどうにもならないとわかったのか、琳太郎の怒りの矛先が篠ケ谷に向く。篠ケ谷は面倒ごとを避けたいとでも言うように天童が持ってきてくれた着替えを受け取りそそくさと退散しようとしていた。
「お前、減給な。」
「勘弁してくださいよ組長……」
「もーそうやっていじめるな!」
「なぁ~晴柊、今度俺ともお昼寝して♡」
「天童さんも元気無いときは良いよ~。」
「え、シノ、やっぱり昨日ヘコんでたんだぁ~!だから晴柊に慰めてもらってたんだぁ~!」
「ヘコんでなんかねーようるっせえなぁ!!」
どうやら晴柊はこの組のアニマルセラピー的役割を担っているらしい。
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