転生獣人少女は攻略対象〜悪役令嬢のお助けキャラになろうと思います!〜

こん

文字の大きさ
16 / 19

10 誘拐事件の真実

しおりを挟む

意識が戻った私がいたのは、質素でまあまあ綺麗な部屋だった。
軽く身動きをしてみるが、手に錠がついているようであまり上手く身動きが取れない。

「あ、起きたか」

声のする方を向くと、リュカ先輩とレイジ先輩がいた。

「先輩……」
「あまり動くなよ。今動くと体に響やすいからな」
「いやー、でも見事に失敗したなぁ、リュカ」
「本当にそうだ。リンに先輩としての面を立てられねぇよ。」

今、どういう状況か。それを知るには約7日前にまで遡る事になる。




 
捕まったあと、私は一度起こされた。事の経緯はこうだ。

お、見つけた獣人捕まえよ

ん?何か見た事あるやつだな

あれ?これリンだ

依頼主に渡す前に起こそうぜ!

という感じらしい。
そして、私の見立て通り、先輩達は獣人を誘拐していたそう。けれど、先輩達は毎回、こんな事をしても良いのかかなり悩んでいたという。

「そうなんだよ。俺達、元々は王都端っこで各々の生活の為に“何でも屋”として高齢のおばあちゃんの手伝いとか、ガキンチョ共の面倒とかを見ていただけだったんだ」
「ああ、だけど突然見知らぬ高貴な服に身を包んだ人が私達を尋ねて来たんだ。『私の手を取ったら、莫大な金と学園への切符、安定した将来をやろう』ってね」
「本当、たまったもんじゃないぜ。俺達は平民。しかも、平民の中でもかなり下級の方だっていうのに、断れるわけないからさ」

リュカ先輩達自身に犯行の思考があったわけではかった事にホッとする。良い先輩だったし、私もかなり慕っていたから対立したく無かったからだ。

「私はレイジ。リュカと同じ平民出身なんだ。そしてごめんね、リンちゃん。勝手にこんな事してしまって。許されない事だとは分かっている」

レイジ先輩が私に謝る。
しかし、私から見たライトに照らされたレイジ先輩の顔は、輝いているのであまり直視出来ない。
何故か。
それは、普通に顔が良いのだ。顔面の威力がかなり強い。すまなそうにしている顔は、もう舞台の悲劇のヒロインのようだ。

「知っていると思いますが、私はリンです」

そうか、私を捕えるという事はこの人達は私が獣人だと知っているのか。

「あと、父が獣人、母がこの国出身の人間です」
「そうだったんだな。びっくりしたよ、【鑑定】に引っかかるんだから」
「【鑑定】?」
「そうだ。簡単に言うと、どんな人間なのか視る事が出来るんだ」

そんな便利な力を持つんだ。初めて知った。何だろう?精霊の力……だろうか?

「……じゃあ、許す代わりと言ってはなんですけど、私にその力を貸して下さい」
「何かするのか?」
「はい。丁度私、獣人誘拐について探っていたんですよ」
「まじか…」

私はこの事件を探りたい理由を話すしていく。
どうだろうか…。分かってくれるだろうか…そんな心配と恐怖が顔をのぞかせて来来てしまう。きっと、この人に心を許してしまったからだ。自分の弱さに悔やむ。

しかし、私のそんな思いとは裏腹に

「そうだったんだね」
「よく頑張ったな」

そう言って二人で私の頭撫でてくれた。

「……っ…」

言葉に詰まってしまう。喉がグッと押されたように窮屈になる。

おまけに目の前がぼやけて来た。その手から伝わってくる温かさが胸に沁みた為か、私の事を分かってくれた為か。

私の今まで張っていた、前世の記憶によって得た防波堤が優しく溶かされた。
私は、子供みたいに泣いてしまった。





「もっと泣いていいんだぞ」
「もう泣きません。子供みたいですし」
「いや、リンちゃんはまだ子供だろう」

そう言ってレイジ先輩が頭をポンポンとしてくる。

「そうだな、前に相手していた子供達みたいだ」
「子供扱いしないで下さい!恥ずかしいです!!それに、先輩達は私の年齢の一つ上じゃないですか。変わらないですよ」

私の抗議に二人は顔を見合わせる。

「ああ、そっか。それも言わなきゃだ」
「俺達、16歳じゃ無いんだ」

先輩達が16歳じゃないという事にかなりの衝撃と謎の納得を得る。

「「本当は20歳なんだ」」

そう言った、先輩達がパチンっと指を鳴らす。
すると、二人は大人の色気を纏った綺麗なレイジ先輩とただ背が伸びて筋肉がついただけのリュカ先輩となった。

「それは……」
「ああ、精霊の加護だ」

やっぱり。だが、授業で習った限りでは精霊の加護はそんなに簡単に扱えるものじゃないはず。私も初めて見た。
まず大前提に精霊に気に入られていなければ祝福はもらえないし、力を行使するには精霊が"見えて"いなければならない。
この国では光の精霊の加護を受ける者は一定数いるが、見える人は殆どいないと聞いた。

「驚いた?何故か二人共昔から出来るんだよね、これ。きっと、これもあって主人に目をつけられたんだろうと思ってる」
「そうだったんですね」
「ま、安心して俺達を頼ると良いぞ。それで、どうしようか」

かなり強力な味方を手に入れて心が強くなる。



「では、まず私を捕える上に差し出して下さい」







いつも、お読みいただきありがとうございます!
不定期更新にはなりますが、これからもよろしくお願いします


すみません!精霊の加護を精霊の祝福にしていました!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。 なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。 超ご都合主義のハッピーエンド。 誰も不幸にならない大団円です。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...