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10 誘拐事件の真実
しおりを挟む意識が戻った私がいたのは、質素でまあまあ綺麗な部屋だった。
軽く身動きをしてみるが、手に錠がついているようであまり上手く身動きが取れない。
「あ、起きたか」
声のする方を向くと、リュカ先輩とレイジ先輩がいた。
「先輩……」
「あまり動くなよ。今動くと体に響やすいからな」
「いやー、でも見事に失敗したなぁ、リュカ」
「本当にそうだ。リンに先輩としての面を立てられねぇよ。」
今、どういう状況か。それを知るには約7日前にまで遡る事になる。
◇
捕まったあと、私は一度起こされた。事の経緯はこうだ。
お、見つけた獣人捕まえよ
↓
ん?何か見た事あるやつだな
↓
あれ?これリンだ
↓
依頼主に渡す前に起こそうぜ!
という感じらしい。
そして、私の見立て通り、先輩達は獣人を誘拐していたそう。けれど、先輩達は毎回、こんな事をしても良いのかかなり悩んでいたという。
「そうなんだよ。俺達、元々は王都端っこで各々の生活の為に“何でも屋”として高齢のおばあちゃんの手伝いとか、ガキンチョ共の面倒とかを見ていただけだったんだ」
「ああ、だけど突然見知らぬ高貴な服に身を包んだ人が私達を尋ねて来たんだ。『私の手を取ったら、莫大な金と学園への切符、安定した将来をやろう』ってね」
「本当、たまったもんじゃないぜ。俺達は平民。しかも、平民の中でもかなり下級の方だっていうのに、断れるわけないからさ」
リュカ先輩達自身に犯行の思考があったわけではかった事にホッとする。良い先輩だったし、私もかなり慕っていたから対立したく無かったからだ。
「私はレイジ。リュカと同じ平民出身なんだ。そしてごめんね、リンちゃん。勝手にこんな事してしまって。許されない事だとは分かっている」
レイジ先輩が私に謝る。
しかし、私から見たライトに照らされたレイジ先輩の顔は、輝いているのであまり直視出来ない。
何故か。
それは、普通に顔が良いのだ。顔面の威力がかなり強い。すまなそうにしている顔は、もう舞台の悲劇のヒロインのようだ。
「知っていると思いますが、私はリンです」
そうか、私を捕えるという事はこの人達は私が獣人だと知っているのか。
「あと、父が獣人、母がこの国出身の人間です」
「そうだったんだな。びっくりしたよ、【鑑定】に引っかかるんだから」
「【鑑定】?」
「そうだ。簡単に言うと、どんな人間なのか視る事が出来るんだ」
そんな便利な力を持つんだ。初めて知った。何だろう?精霊の力……だろうか?
「……じゃあ、許す代わりと言ってはなんですけど、私にその力を貸して下さい」
「何かするのか?」
「はい。丁度私、獣人誘拐について探っていたんですよ」
「まじか…」
私はこの事件を探りたい理由を話すしていく。
どうだろうか…。分かってくれるだろうか…そんな心配と恐怖が顔をのぞかせて来来てしまう。きっと、この人に心を許してしまったからだ。自分の弱さに悔やむ。
しかし、私のそんな思いとは裏腹に
「そうだったんだね」
「よく頑張ったな」
そう言って二人で私の頭撫でてくれた。
「……っ…」
言葉に詰まってしまう。喉がグッと押されたように窮屈になる。
おまけに目の前がぼやけて来た。その手から伝わってくる温かさが胸に沁みた為か、私の事を分かってくれた為か。
私の今まで張っていた、前世の記憶によって得た防波堤が優しく溶かされた。
私は、子供みたいに泣いてしまった。
◇
「もっと泣いていいんだぞ」
「もう泣きません。子供みたいですし」
「いや、リンちゃんはまだ子供だろう」
そう言ってレイジ先輩が頭をポンポンとしてくる。
「そうだな、前に相手していた子供達みたいだ」
「子供扱いしないで下さい!恥ずかしいです!!それに、先輩達は私の年齢の一つ上じゃないですか。変わらないですよ」
私の抗議に二人は顔を見合わせる。
「ああ、そっか。それも言わなきゃだ」
「俺達、16歳じゃ無いんだ」
先輩達が16歳じゃないという事にかなりの衝撃と謎の納得を得る。
「「本当は20歳なんだ」」
そう言った、先輩達がパチンっと指を鳴らす。
すると、二人は大人の色気を纏った綺麗なレイジ先輩とただ背が伸びて筋肉がついただけのリュカ先輩となった。
「それは……」
「ああ、精霊の加護だ」
やっぱり。だが、授業で習った限りでは精霊の加護はそんなに簡単に扱えるものじゃないはず。私も初めて見た。
まず大前提に精霊に気に入られていなければ祝福はもらえないし、力を行使するには精霊が"見えて"いなければならない。
この国では光の精霊の加護を受ける者は一定数いるが、見える人は殆どいないと聞いた。
「驚いた?何故か二人共昔から出来るんだよね、これ。きっと、これもあって主人に目をつけられたんだろうと思ってる」
「そうだったんですね」
「ま、安心して俺達を頼ると良いぞ。それで、どうしようか」
かなり強力な味方を手に入れて心が強くなる。
「では、まず私を捕える上に差し出して下さい」
いつも、お読みいただきありがとうございます!
不定期更新にはなりますが、これからもよろしくお願いします
すみません!精霊の加護を精霊の祝福にしていました!
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