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11 誘拐事件の真実
しおりを挟む「それは、リンが囮になるって事だな。分かった」
「そうだね、見た限りかなりの実力を持ってるみたいだし」
二人は、理解してくれた。どうやら【鑑定】は個人の力量まで見れるみたいだ。
「じゃあ、作戦を練ってリンを持っていこう。日付は…明後日くらいがいいか」
「まぁ、でもとにかく今日は休もう。リンちゃんは私が見るよ」
「そうだな。何が起こるか分からないし、今日はレイジに任せる」
た、頼れる…!
何かと二人が勝手にテキパキと進めていってくれる。
「さ、行こう。リンちゃん」
そう言うレイジ先輩について私は部屋を出た。
廊下を歩いて建物の右側へと進んでいく。
「ここは何処ですか?」
「ん?ああ。此処は私達の家さ」
「綺麗でオシャレですね。ここ」
「ありがとう。最初はボロ屋敷でね~、掃除が大変だったんだけど結構稼業に役立つし、良い買い物をしたよ」
仕事の為もあり、二人は寮には住まず王都にある此処に住んでいるらしい。かなり設備が整っていて、羨ましく感じる。
「リンちゃんも一緒に住む?」
「え…!良いんですか?」
「ふふっ、そんなに食いつくんだ。私もアイツ以外がいた方が何かと安心するし。いいよ全然」
事が終わったら検討しようかな…!
「…?え、でもリュカ先輩と二人の方が安心するんじゃないんですか?」
「あはは、そうだな。後で教えてあげるよ」
そう言って人差し指を口に当ててウインクする先輩はかなりいい(語彙力)。
何だろう?普段二人は学園内でも基本一緒にいるし、仲がとても良さそうだから全く検討がつかない。
◇
「部屋に着いたよ」
「ありがとうございます」
「私はこっちの部屋にいるから何かあれば言ってね」
「はい」
とりあえず部屋に入る。
しかし、荷物も何も無しだった事に今気づく。どうしよう
「先輩、私何も持って無くて…」
「ああ、そっか。でも、私達も客とか全然来ないから用意してないから…とりあえず私のを貸すよ」
「ありがとうございま……す」
まって、ちょっと所じゃないほど恥ずかしいぞ。何にせよ、相手は学園にファンクラブが出来る程の美貌を持つ先輩…私だって、年頃の女の子なのだ。
「……?あ、そっか。流石に歳を考えればそうか。でも大丈夫。私、女だから」
「女の人なのか。なら大丈夫…え?え、嘘」
「嘘じゃないよ」
駄目だ、脳がフリーズして反応が遅くなるし、何も考えられなくなった。
「え、嘘?でも、名前…レイジって」
「私の本名はレイナなんだ」
あかん、追加攻撃受けそう。
「リュカ先輩には…」
「言ってないんだよねぇ、それが。だから、ここにリンちゃんが住んでくれると安心するんだよ」
「ば、バレないんだ!?」
驚きすぎて、口調が素になってしまう。そんな私を見て、レイジ改め、レイナ先輩はクツクツと笑いながら私を見て来る。
「アイツ、バカだよ。本当に」
苦笑しながらそう言った後、先輩に「後で話たげる」と言われ、お風呂に入れられた。
しかし案の定、考え込んだせいで風呂にのぼせる寸前で先輩に救出される事となった。
◇
二人共パジャマ且つ部屋のベッドの上。
女子の恋バナするやつだ、これ。私知ってる。前世を含め、した事は無いけど青春系漫画でめっちゃ見た。
「お待たせ~」
そう言って部屋に入って来た瞬間、先輩の色気に押しつぶされそうになる。
確かに、よく見るとさっきまで無かった胸が………ある!
「せ、先輩…胸あるんですね」
「あるよ~。いつもはさらし巻いてるけどね」
「先輩が女だって知ったら、学園の女子に患者が出そう。色んな意味で」
「そんな事は無いと思うけど、まぁ、なんて言うか。小さい頃からだったんだよね、こんな格好するのは」
恋バナ違う。
恋バナとか浮かれていた自分を殴りたくなる。
「私、小さい頃から此処に住んでたわけじゃないんだけど、当時住んでいた国に母と父と兄と住んでたんだ。幸せな日々だった。でも、私が8歳くらいの頃に兄が亡くなってしまった。私、お兄ちゃんがとても好きでさ、お兄ちゃんの真似事をしてよく遊んでたんだけど、私、お兄ちゃんと容姿が似ている方だったからか、その遊びが人を救う物になってしまったんだ。兄の葬儀の後から…」
「まさか……」
「父は精一杯母を看病したんだけど、私が兄になるしか精神を保つ方法が無かったんだ。ま、私はこの姿気に入ってるし、女の子にチヤホヤされるのも好きだから関係なく続けてるのもあるけどね」
思いの外、重い理由に心が詰まる。
「この国に来たのが6年くらい前かな?確かリンちゃんと一緒だったはず。そこで偶々会ったリュカと仲良くなって、最初は何でも屋のリュカの手伝いをしてるだけだったんだけど、父が疲れちゃってからは私も働くようになったんだ」
「で、今も仲良くしているんですか」
「ははっ、そうだね。一応、部屋とかも殆ど別にしてたからか気付かれてないらしいんだよ」
確かに、先輩達を見ている限り分かっている雰囲気は無かった。
「ーーーーー」
「先輩、何か言いましたか?」
「いや、…何でもないよ」
最後、先輩のボソッと呟いた言葉私には届かなかった。
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