四本目の矢

南雲遊火

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序章

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 唯今虫けらのやうなる子とも候、
(今自分には、側室から生まれた、虫けらのような分別の無い幼い子供がいます)

 かやうの者、もし──此内かしらまたく成人候するは、心もちなとかたのことくにも候するをは、
(そのような者でも、もし今後、知恵や心がまえなど、立派に成人した時には)

 れんみん候て、何方之遠境なとにも可被置候、
(どうぞ憐れに思い、どこぞの辺境の地などに領地を与え、一族の末に置いてやって下さい)

 又ひやうろく無力之者たるへきは治定之事候間、
(また、間抜け、無能でありましたら)

 さ様之者をは何とやうに被申付候共、はからひにて候──、何共不存候──、
(そんな者は、どのようなあつかいを仰せ付けられようとも構いません)

 今日まての心持、速に此分候、三人と五竜之事は、少もわるく御入候者、
(しかし、この子どもたちのせいで、あなたたち三人と、五竜の仲が、少しでも悪くなれば)

 我々にたいし候ての御不孝迄候──、更無別候──、
(私たちにとって、それは不孝この上なき事です)

 ──毛利元就三子教訓状(毛利家文書四○五) 第九条 より
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