3 / 110
トラファルガー噴火編
第二章 精霊機ハデスヘル
しおりを挟む
一つの太陽と、七つの月が輝く『世界』。
この世界には、はじめ、さまざまな神々と精霊たちに守られた、美しい七つの帝国があった。
ある時、赤き鳥と白き鳥を従えた『大神』が、遠き場所より来訪し、人々に、様々な「技術」を伝えはじめる。
しかし、その大神は、突然、姿を消してしまった。
人々は誰かがその神を隠したと疑心暗鬼に陥る。
加えてその神を探そうと、戦神と破壊神が人々が住まう大地を駆け抜けたため、大混乱とともに、大きな戦いが始まった……というのが、子どもの頃から耳にタコができるほどモルガが聞かされてきた昔話。
「その……大丈夫か?」
「………………」
ルクレツィアの声が聞こえているのか否か──言葉を失い、顔面蒼白のモルガが、がっしりとその黒い機体の、巨大な手の指にしがみつく。
ルクレツィア側からモルガの姿は確認できるが、心臓外のモルガは、無線機しか渡されていない。
とりあえず、モルガは、うなずくだけうなずいた。ほっとした息遣いが、無線機越しにモルガの耳に届く。
決してモルガは高所恐怖症というわけではない……のだが、気持ちばかりの命綱で体を縛ってもらったとはいえ、指の隙間から遠く離れた赤い砂漠の大地がチラチラ見えるし、巻き上げられた砂埃が頬に当たり、スピードもあって地味に痛い。
吹く風は強いが、機体そのものにあまり揺れがないことが、せめてもの救いか……。
闇の精霊機『ハデスヘル』。旧トレドット帝国の象徴であり、守護神。
この精霊機もまた、その『大神』がもたらした技術の一つ──と、言われていた。
『伝説』を間近で見るどころか、直接触れることができ、普段のモルガであるならば、諸手をあげて大喜びしているところだが……今はとても、そんな状況ではない。
七つの美しい帝国は、幾千年も続く戦乱のせいで、一つ、また一つと数を減らす。
最初に滅びたのは『地』の帝国イシャンバル。精霊機ヘルメガータは、滅ぼしたアレイオラに渡してなるものかと、トレドット帝国へ託された。
次に滅びたのは『風』の帝国リーゼガリアス。精霊機アレスフィードは、アレイオラのものとなる。
『闇』の帝国トレドットが滅びたのは、今から五十年ほど前の事。
当時のトレドット皇帝レイヴンの末の皇子と、イシャンバルから託されたヘルメガータとともに、ハデスヘルはフェリンランシャオへと譲られた。
「す、少し休憩するか?」
「いや、いい。大丈夫じゃ」
急いで、故郷に帰りたい気持ち半分。
そして、この地獄のような環境から、とっとと抜け出したい気持ちが半分。
しかし、無線越しのルクレツィアが、突然、息をのんだ。
「どうかしたか?」
「……マズイ。敵襲だ」
いぃッ! モルガが見上げると遠く──遥か遠くの青空の中に、黒い点が二つ、かろうじて視認できた。
周囲は砂漠で、隠れる場所など無い。
「ど……どうするんじゃ!」
「……」
ルクレツィアの沈黙に、モルガの顔面がみるみる蒼白になった。
だんだんと大きくなる黒い点に、ルクレツィアは腹をくくる。
「……仕方ない」
ルクレツィアはそう言うと、モルガの乗ったハデスヘルの手を、胸元の心臓へ寄せた。
「乗れ!」
「え?」
モルガはあんぐりと口を開ける。
精霊機は一人乗り。ましてや、自分とルクレツィアは、加護を受ける精霊が違う。
「このままだとハデスの武器が使えないし、相手の攻撃が直撃してみろ! 貴様は一撃で肉片だ」
ルクレツィアの言葉に、モルガはぶるりと震えてうなずいた。
ルクレツィアは、銃を下げたホルスターに付いた小型のナイフでモルガの命綱を切ると、そのまま彼を、心臓の中に引っ張り込む。
同時に、ガクンッと、今までにない揺れが機体に響いた。
ハデスヘルの心臓内は広く、むしろほとんど何も無いと言っていい。
硝子のように、透き通った透明な床。周囲は全天モニターと呼ばれる、上下左右全て外の光景がリアルタイムに投影されており、そこに立つと、モルガは一瞬、空中に浮かんでいる錯覚に陥る。
しかし、そこに、モルガの見たことがない、一人の女性が跪いていた。
赤い髪に、赤い瞳の、うら若い──けれども、どこか「母親」を思わせる、不思議な感覚を覚える女性。
誰……? モルガに向かって、彼女はにっこりとほほ笑んだ。思わずモルガが会釈を返すと、今度は女性が、驚いたように目を丸くする。
複雑な文様が浮かび上がる心臓の中央にルクレツィアが立つと、その動きを写し取るように、ハデスヘルが動く。
女性はルクレツィアに従うよう、そっと側に控えた。
「予想以上に、雑音が……ハデス。きこえるなら、連装砲の準備を!」
女性がこくり、と、うなずくと、胸に手を組んで、祈るようなしぐさをする。
すると、ハデスヘルの背中の装甲の一部がひらき、二対三本──計六本の筒が、静かに前方に向かって伸びた。
(この人が、ハデス……さん、なんかのぉ?)
なんとなく、モルガは思った。
しかし、すぐに首を横に振る。
そんなワケはない。ない……とは思うのだが──まがりなりにも、神が造りし守護者。「どう頑張っても人間には、完璧に複製することができない」と言われる、ブラック・ボックスの塊……。
ハデスヘルは飛行高度を徐々に下げてゆく。揺れも強く、モルガは思わず、口を押えた。
「VD相手……精霊機がそう簡単に、やられるモノかッ!」
先手必勝! とばかりに、ルクレツィアが連装砲を全弾撃つ。六発のうちのいくつかが、相手の一機に命中したらしく、閃光を放って爆発した。
しかし、もう一機にはかすり、よろめきはしたものの、動きを止めるには至らない。
「ちッ!」
「うわぁぁあッ! こっち来たッ!」
心臓の隅まで後ずさるモルガに、正面を見据えたままルクレツィアが叫んだ。
「黙れッ! 舌を噛むぞッ!」
ハデスッ! ルクレツィアの声に、再び、女性が祈るような所作をした。すると足の装甲が開き、棒のようなものが左右から飛び出て、ルクレツィアは、それを一つに繋げた。
ヴンッという音がすると、棒の先から暗赤色の光の刃が現れ──大きな鎌の形となる。
「っつぅ……動きが鈍いッ」
相手の剣戟を鎌で受け止めるも、ハデスヘルは、じりじりと相手に圧される。
ルクレツィアの額に、じっとりと汗がにじんだ。
「ど……どうしたもんかのぉ……」
見ているだけで何もできないモルガは、ただ、おろおろと事の成り行きを見守ることしかできない。
相手の白い機体が、ハデスヘルの鎌を振り払い、そして、一蹴りハデスヘルに入れる。衝撃でバランスを崩した機体は、そのまま地面に叩きつけられた。
かなり高い位置から落ちたが、それでも、簡単に壊れないのはさすが『精霊機』といったところだろう。
もっとも。
「うぇ……」
「痛たた──あ、コラッ! 吐くな!」
ハデスヘルに宿る精霊の『加護』で守られたルクレツィアはともかく、異物でしかないモルガのダメージは凄まじい。
骨に異常は無いとは思うが、背中と尻をしこたま打ち付け、視界もまだ、グラグラと揺れる。
心配そうな表情の女性が、赤い瞳を潤ませてモルガの顔を覗き込んだ。
彼女の長い、透き通るような赤い髪が、さらりと揺れる。
「あぁ、大丈夫……大丈夫じゃ……」
モルガは、女性に手を伸ばした。
女性に触れれないことから、本当に、彼女は『精霊』……か……。
『加護』というものは昔からあるけれど、精霊自体を目視するなど、モルガは聞いたことがない。
しかし、『伝説』の『精霊機』であるのなら、そんな事もあるのかもしれない。
美しき精霊に、モルガはにっこりと笑い、何度も繰り返した。
「大丈夫じゃ」
ワシは……ワシらは、こんな所で……。
「死にとぉは、ないからのぉ」
女性が、突然、何かを叫んだ。
しかし、その『声』は、モルガの耳には聞こえない。
でも、『精霊機』が、その『声』に、強く反応した。
「え……」
「なんだッ! コレは!」
突然、心臓全体に警報が鳴り響く。
「一体何なんだ……私は、こんな能力は知らないぞ」
警報と同時に、ルクレツィアの周囲に立体映像が浮かび上がる。そのほとんどは、周囲の地形や気温や風速。そして、敵の機体の『情報』だ。
「Chorus illusio……?」
その情報が一つにまとまり、ルクレツィアの命令を待つ。彼女は何が何だかわからないが……と前置きしつつも、愛機に命じた。
「ハデス! Chorus illusio!」
女性がこくりとうなずいた。すると、突然、敵の機体の命中率が格段に悪くなり、そして、動き自体が徐々に悪くなる。
動かない敵など、本来の能力が出せないハデスヘルでも、簡単に倒すことができる。
ハデスヘルは飛び上がると、ルクレツィアが鎌を振りかぶって一薙ぎし、白の機体は空中で体制を崩して、そのまま地上へ落下した。
◆◇◆
「あんたが、助けてくれたんか?」
爆発した敵機を背に、モルガは女性に語りかける。女性はというと、はにかんだようにモルガに微笑んだ。
「ありがと! 本当に、ありがとの!」
モルガは女性に、深々と頭を下げた。
声は相変わらず聞こえないが、女性は慌てたようにモルガに駆け寄る。
──しかし。
「お前は一体、先ほどから、誰と話しているのだ?」
「……え?」
ルクレツィアの言葉に、モルガは一瞬固まり、そして女性の方を見る。
「えっと、ここに……その……おらんかのぉ?」
一体モルガに何が見えているのか解らず、ドン引くルクレツィア。
女性はにっこりと……しかしながら、少し悲しそうに、微笑むだけだった。
この世界には、はじめ、さまざまな神々と精霊たちに守られた、美しい七つの帝国があった。
ある時、赤き鳥と白き鳥を従えた『大神』が、遠き場所より来訪し、人々に、様々な「技術」を伝えはじめる。
しかし、その大神は、突然、姿を消してしまった。
人々は誰かがその神を隠したと疑心暗鬼に陥る。
加えてその神を探そうと、戦神と破壊神が人々が住まう大地を駆け抜けたため、大混乱とともに、大きな戦いが始まった……というのが、子どもの頃から耳にタコができるほどモルガが聞かされてきた昔話。
「その……大丈夫か?」
「………………」
ルクレツィアの声が聞こえているのか否か──言葉を失い、顔面蒼白のモルガが、がっしりとその黒い機体の、巨大な手の指にしがみつく。
ルクレツィア側からモルガの姿は確認できるが、心臓外のモルガは、無線機しか渡されていない。
とりあえず、モルガは、うなずくだけうなずいた。ほっとした息遣いが、無線機越しにモルガの耳に届く。
決してモルガは高所恐怖症というわけではない……のだが、気持ちばかりの命綱で体を縛ってもらったとはいえ、指の隙間から遠く離れた赤い砂漠の大地がチラチラ見えるし、巻き上げられた砂埃が頬に当たり、スピードもあって地味に痛い。
吹く風は強いが、機体そのものにあまり揺れがないことが、せめてもの救いか……。
闇の精霊機『ハデスヘル』。旧トレドット帝国の象徴であり、守護神。
この精霊機もまた、その『大神』がもたらした技術の一つ──と、言われていた。
『伝説』を間近で見るどころか、直接触れることができ、普段のモルガであるならば、諸手をあげて大喜びしているところだが……今はとても、そんな状況ではない。
七つの美しい帝国は、幾千年も続く戦乱のせいで、一つ、また一つと数を減らす。
最初に滅びたのは『地』の帝国イシャンバル。精霊機ヘルメガータは、滅ぼしたアレイオラに渡してなるものかと、トレドット帝国へ託された。
次に滅びたのは『風』の帝国リーゼガリアス。精霊機アレスフィードは、アレイオラのものとなる。
『闇』の帝国トレドットが滅びたのは、今から五十年ほど前の事。
当時のトレドット皇帝レイヴンの末の皇子と、イシャンバルから託されたヘルメガータとともに、ハデスヘルはフェリンランシャオへと譲られた。
「す、少し休憩するか?」
「いや、いい。大丈夫じゃ」
急いで、故郷に帰りたい気持ち半分。
そして、この地獄のような環境から、とっとと抜け出したい気持ちが半分。
しかし、無線越しのルクレツィアが、突然、息をのんだ。
「どうかしたか?」
「……マズイ。敵襲だ」
いぃッ! モルガが見上げると遠く──遥か遠くの青空の中に、黒い点が二つ、かろうじて視認できた。
周囲は砂漠で、隠れる場所など無い。
「ど……どうするんじゃ!」
「……」
ルクレツィアの沈黙に、モルガの顔面がみるみる蒼白になった。
だんだんと大きくなる黒い点に、ルクレツィアは腹をくくる。
「……仕方ない」
ルクレツィアはそう言うと、モルガの乗ったハデスヘルの手を、胸元の心臓へ寄せた。
「乗れ!」
「え?」
モルガはあんぐりと口を開ける。
精霊機は一人乗り。ましてや、自分とルクレツィアは、加護を受ける精霊が違う。
「このままだとハデスの武器が使えないし、相手の攻撃が直撃してみろ! 貴様は一撃で肉片だ」
ルクレツィアの言葉に、モルガはぶるりと震えてうなずいた。
ルクレツィアは、銃を下げたホルスターに付いた小型のナイフでモルガの命綱を切ると、そのまま彼を、心臓の中に引っ張り込む。
同時に、ガクンッと、今までにない揺れが機体に響いた。
ハデスヘルの心臓内は広く、むしろほとんど何も無いと言っていい。
硝子のように、透き通った透明な床。周囲は全天モニターと呼ばれる、上下左右全て外の光景がリアルタイムに投影されており、そこに立つと、モルガは一瞬、空中に浮かんでいる錯覚に陥る。
しかし、そこに、モルガの見たことがない、一人の女性が跪いていた。
赤い髪に、赤い瞳の、うら若い──けれども、どこか「母親」を思わせる、不思議な感覚を覚える女性。
誰……? モルガに向かって、彼女はにっこりとほほ笑んだ。思わずモルガが会釈を返すと、今度は女性が、驚いたように目を丸くする。
複雑な文様が浮かび上がる心臓の中央にルクレツィアが立つと、その動きを写し取るように、ハデスヘルが動く。
女性はルクレツィアに従うよう、そっと側に控えた。
「予想以上に、雑音が……ハデス。きこえるなら、連装砲の準備を!」
女性がこくり、と、うなずくと、胸に手を組んで、祈るようなしぐさをする。
すると、ハデスヘルの背中の装甲の一部がひらき、二対三本──計六本の筒が、静かに前方に向かって伸びた。
(この人が、ハデス……さん、なんかのぉ?)
なんとなく、モルガは思った。
しかし、すぐに首を横に振る。
そんなワケはない。ない……とは思うのだが──まがりなりにも、神が造りし守護者。「どう頑張っても人間には、完璧に複製することができない」と言われる、ブラック・ボックスの塊……。
ハデスヘルは飛行高度を徐々に下げてゆく。揺れも強く、モルガは思わず、口を押えた。
「VD相手……精霊機がそう簡単に、やられるモノかッ!」
先手必勝! とばかりに、ルクレツィアが連装砲を全弾撃つ。六発のうちのいくつかが、相手の一機に命中したらしく、閃光を放って爆発した。
しかし、もう一機にはかすり、よろめきはしたものの、動きを止めるには至らない。
「ちッ!」
「うわぁぁあッ! こっち来たッ!」
心臓の隅まで後ずさるモルガに、正面を見据えたままルクレツィアが叫んだ。
「黙れッ! 舌を噛むぞッ!」
ハデスッ! ルクレツィアの声に、再び、女性が祈るような所作をした。すると足の装甲が開き、棒のようなものが左右から飛び出て、ルクレツィアは、それを一つに繋げた。
ヴンッという音がすると、棒の先から暗赤色の光の刃が現れ──大きな鎌の形となる。
「っつぅ……動きが鈍いッ」
相手の剣戟を鎌で受け止めるも、ハデスヘルは、じりじりと相手に圧される。
ルクレツィアの額に、じっとりと汗がにじんだ。
「ど……どうしたもんかのぉ……」
見ているだけで何もできないモルガは、ただ、おろおろと事の成り行きを見守ることしかできない。
相手の白い機体が、ハデスヘルの鎌を振り払い、そして、一蹴りハデスヘルに入れる。衝撃でバランスを崩した機体は、そのまま地面に叩きつけられた。
かなり高い位置から落ちたが、それでも、簡単に壊れないのはさすが『精霊機』といったところだろう。
もっとも。
「うぇ……」
「痛たた──あ、コラッ! 吐くな!」
ハデスヘルに宿る精霊の『加護』で守られたルクレツィアはともかく、異物でしかないモルガのダメージは凄まじい。
骨に異常は無いとは思うが、背中と尻をしこたま打ち付け、視界もまだ、グラグラと揺れる。
心配そうな表情の女性が、赤い瞳を潤ませてモルガの顔を覗き込んだ。
彼女の長い、透き通るような赤い髪が、さらりと揺れる。
「あぁ、大丈夫……大丈夫じゃ……」
モルガは、女性に手を伸ばした。
女性に触れれないことから、本当に、彼女は『精霊』……か……。
『加護』というものは昔からあるけれど、精霊自体を目視するなど、モルガは聞いたことがない。
しかし、『伝説』の『精霊機』であるのなら、そんな事もあるのかもしれない。
美しき精霊に、モルガはにっこりと笑い、何度も繰り返した。
「大丈夫じゃ」
ワシは……ワシらは、こんな所で……。
「死にとぉは、ないからのぉ」
女性が、突然、何かを叫んだ。
しかし、その『声』は、モルガの耳には聞こえない。
でも、『精霊機』が、その『声』に、強く反応した。
「え……」
「なんだッ! コレは!」
突然、心臓全体に警報が鳴り響く。
「一体何なんだ……私は、こんな能力は知らないぞ」
警報と同時に、ルクレツィアの周囲に立体映像が浮かび上がる。そのほとんどは、周囲の地形や気温や風速。そして、敵の機体の『情報』だ。
「Chorus illusio……?」
その情報が一つにまとまり、ルクレツィアの命令を待つ。彼女は何が何だかわからないが……と前置きしつつも、愛機に命じた。
「ハデス! Chorus illusio!」
女性がこくりとうなずいた。すると、突然、敵の機体の命中率が格段に悪くなり、そして、動き自体が徐々に悪くなる。
動かない敵など、本来の能力が出せないハデスヘルでも、簡単に倒すことができる。
ハデスヘルは飛び上がると、ルクレツィアが鎌を振りかぶって一薙ぎし、白の機体は空中で体制を崩して、そのまま地上へ落下した。
◆◇◆
「あんたが、助けてくれたんか?」
爆発した敵機を背に、モルガは女性に語りかける。女性はというと、はにかんだようにモルガに微笑んだ。
「ありがと! 本当に、ありがとの!」
モルガは女性に、深々と頭を下げた。
声は相変わらず聞こえないが、女性は慌てたようにモルガに駆け寄る。
──しかし。
「お前は一体、先ほどから、誰と話しているのだ?」
「……え?」
ルクレツィアの言葉に、モルガは一瞬固まり、そして女性の方を見る。
「えっと、ここに……その……おらんかのぉ?」
一体モルガに何が見えているのか解らず、ドン引くルクレツィア。
女性はにっこりと……しかしながら、少し悲しそうに、微笑むだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる