上 下
18 / 102

第18話 七瀬万桜の本性

しおりを挟む
「それにしても月島君いくら異世界だからってその『悪魔の腕』は目立ちすぎないかい?」

誰が悪魔だ!誰が!んん?

「お前なんでそれを知ってるんだ?」

認めたくないが、この『悪魔と火竜の右腕』は1週間前に手に入れた物だ!なんで知ってるんだ!

「私は地球にいた頃からずっと君を見ていた。いや、『監視』していたよ。君がもし人に仇なす『悪魔』なら君を滅殺する為にね!」

え?ちょっと待って?それってもしかして?

「私は『デビルハンター(悪魔を狩る者)』だ!!君の邪気は王都にいてもビンビンっ!感じ取れたよ!」

もしかして『悪魔』って。

いや、認めたくなかったが、万が一コチラ側の世界に来た影響で『悪魔』になってしまったのかなあ?

なんて密かに考えてた事もあるよ。

けどコイツの話が本当なら。

まさか、ひょっとして俺『地球産』の悪魔ですか!!

「やっぱり貴方悪魔だったのね」

「まあ、ゼロのやらかすことは悪魔じみてるからな」

「まあ、ゼロだし・・・やっぱりなって程度だよね?」

「お兄ちゃん悪魔だったのだ?」

あれ?もう皆の中では俺、悪魔で通っている?

変なフラグたてやめろよ!!

この世界にも悪魔はいるらしいから、この世界の悪魔と戦うことになったりしたら『オラ、地球育ちのサ○ヤ人だ」みたいなノリでいくのコレ?

「お前なんで悪魔退治なんてやってるんだ。金持ちなんだろ?」

「はあ?私の父親は確かに少し前まで金持ちだったけど、だいぶ前に離婚して私は母親についていったのだよ。で、母親の実家が代々悪魔退治を営んでいるんだけど、雀の涙程度の報酬しか貰わないから生活が苦しんだよ。困っている人がいたら助けるのは当たり前てね」

「ん?光ヶ丘の婚約者ってのは?」

「あんなの父親が勝手に決めたものだよ。家族の縁を切ったのに図々しいにも程がある!って!話を変えるな!!」

「で?俺を始末しに来たのか?」

「まあ、そうだね。場合によってはそうなるだろうね」

俺は『竜の宝物庫』から火竜の財宝の一つ『火剣』を取り出し構える。

「君が私達をこの世界に転移させたのかい?」

んん?どゆこと?

「君が私達をこの世界に転移させたのかい?」

いや、何で俺になるんだよ!!

「君の父親が『世界を渡る』のが得意だったから?」

え?親父?

「君の父親は魔界にある4つの国の一つを支配していた。『次元跳躍(ディメンション・ジャンプ)』を得意としていて戦闘にも好んで使っていたからだよ。君の父親は『魔界最強最悪の悪魔』にして人間に唯一友好的な魔界の王の一人だ。」

ええええええええ!!親父が悪魔だった!!

「気に入らない悪魔がいればとことんぶちのめし!輝く金銀財宝は無理矢理独り占め!傍若無人!傲岸不遜!『ダークロード(闇の帝王)』と呼ばれし大悪魔!それが君の父親なのだよ!」

ぶふっほ!親父とんでもない大物悪魔らしい。

「じゃあ、母さんも悪魔なのか?」

「いや、君の母親は人間だよ?」

どうやら悪魔と人間のハーフのようだ。良かった。

「まあ、君の母親は世界最強のデビルハンター、だけどね?」

コイツ、ナニ、イッテルノカ、ワカラナイ。

「二人の馴れ初めは君の方が詳しいだろうから省くけど、」

いや知らねえよおおおお!!

母親の職業や父親が悪魔だったなんて初めて知ったんだが!

「いや、なら親父がヤったかもしれないじゃ、」

「それはないのだよ月島君、君の父親は魔界に帰っている。それは私がこの世界に転移される前に確認済み。君の母親はデビルハンターの仕事でロンドンに言ったのは確実済みとなると、私の身近でこんな事出来る可能性があるとしたら君しかいなかった、という訳だ。わかるかな月島君?」

「もし俺じゃなくても、俺の悪魔の力なら地球に帰れるかもしれないって事か?」

「ピンポーン!!正解!正解なのだよ月島君!さあ!やってみてくれたまえ!」

・・・・・どうやって?

「え?月島君?どうした?早くやってみてくれ!」

だからどうやってだよ!

「え?出来ないの?その悪魔の腕は飾りなのかな?ん~邪気は感じ取れるから使えるはずなんだけどな?」

邪気って何!自分のでも感じとれねえよ!!

「うそっ!押さえる気がないくらい駄々漏れにしてると思ったらコントロール出来ていなかった訳ね。何か感じない自分から溢れ出すパワーを感じて」

もう少し詳しく説明してくれませんかね?ん?あれ?感じる?

体内で何かが蠢く感覚がある。これが邪気か?気持ち悪いな。

「あっ、出来てる!コントロール出来てる!さあ念じて!行きたい場所を思い描いくんだ月島君!」

地球!地球!地球!地球!地球!地球!日本!日本!日本!日本!日本!

懸命に念じるが跳ぶ気配は全くない。

「・・・ダメなようだね、残念だけど」

「そうだな・・・だが、全く駄目だった訳じゃない『ディメンション・ジャンプ(次元跳躍)』」

「え!ゼロが消えた!」

「え?え?ちょっとアンタがやったの!」

「お兄ちゃんが消えたのだ!」

No.3、ラクシャータ、アニスや皆が驚いてる。

「違うって、月島君の力だよ」

「そういう事だ」

俺は少し離れた場所に次元跳躍して、歩いて帰って来た。

「どの程度くらいは行けそうかね?」

「さあな、そこまではわからん。連続でも使えそうだからだ」

「どの道今は帰る方法がない、か。期待半分はしていたんだがね」

「で、俺を始末するか?俺はこの世界に来て沢山の人間を殺してるぜ」

「何言ってるの!ちょっとは誤魔化しなさいよ!」

「わざわざ敵を増やさなくてもいいだろゼロ!」

「好きにしたまえ」

「「「「え?いいの見逃して?」」」」

七瀬万桜の答えは意外にも『放置』だった。



「さっきは人に仇なす悪魔を狩るとは言ったけどね。本当はそんなのどうでもいい!私はね、『強者』と戦うのが大好きなの!!斬って斬られての激しい絡み合い(戦闘)に熱くなるんだ!心と体が!満たされるんだ!」

皆が理解した、『ああ、コイツも狂人なんだなゼロと一緒で』

「だけど地球にいた頃は全く満たされなかったんだ!君の父親が人間界にいる間は高位悪魔は人間界にやってこない!来るのは知能が低い低位の悪魔だけ!一方的な殺戮なんて全然気持ちよくないんだ!例えるならセックス!お互いで高め合わなければ駄目なんだ!私は処女だけど!」

いや、分かったから!もういいから!

七瀬万桜は初めは正義感が強い真面目な奴だと思ったが、

「君と絡み合い(戦闘)たいが、『魔王の息子に手を出すな!』『あの魔王がいるおかげで人間界の高位悪魔の被害は減少しているんだぞ!』と言われていてね!生殺しだったよ!君は全く邪気を押さえてなかったから!あんなに広くて深い、まるで大海を思わせるのような邪気を放ってるんだよ!こっちはいつでも受け入れる準備は出来てたのに!君が散々焦らすんだからお預けにもほどがあるよ!けど『今の君』より『成長した君』とヤル方が楽しそうだしね!」

頬を赤く染め、体に腕を絡ませて悶える七瀬万桜。

七瀬万桜はただの『戦闘狂』だった。

「ただし!私も仲間に、い・れ・て♪」
しおりを挟む

処理中です...