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第73話 謎が謎を呼ぶ

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地面に倒れ込んだ茶髪の女性は死に、彼女の首に刺さったレイピアは粉々に砕け散った。そして黒馬が彼女の亡骸をくわえると自分の背に放り乗せ、ゆっくりとどこかに向かって歩んでいった。

そこで現実に引き戻された。

今見た光景も気にはなるが先に・・・あの小僧をぶっ殺す!

黒馬が俺の意思を読み取り男を追う。

一足跳び、一瞬で男に追いつく。瞬間移動ではなく単純な移動、しかしあまりの加速に一瞬吐き気を催したのはナイショだ。
男の真上に来た馬は男の背に蹴りを入れ地面に叩きつけた。

チュドオオオオオオオオオオオオオオン!

地面に叩きつけられた男はすぐさま起き上がろうとするが、馬が男の体を踏みつけて移動できないようにする。

さて、俺は『竜の宝物庫』から槍を取り出し、男の背に生えた骨の翼を抉り千切った。

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」

俺は槍を男の胸を突き刺し、馬に足を退かすよう指示し退いたところで男を持ち上げた。

「・・・まあ、今更聞くことなんてねえから、サクッと殺す。お前よりこの馬と話したい気分なんでな」

俺は槍から火竜の炎を放出して謎の男を焼き殺した。

俺の神の名がつく『見神の眼』ですらコイツのことは見えなかった。コイツの事を聞いたところで嘘を吐かれる可能の方が高そうだし。興味ない・・・ただ三日月を撃ったから確実に殺す。それだけだ。

「おい、お前は喋れるか?人の言葉は分かるか?」

『少しなら分かる』

馬は直接発声したわけではなく、頭の中に声が聞こえてきた。

「お前、名は?」

『スバシル、それしか覚えておらぬ。だが、お主を見た時、我の背に乗る事を許せるのはお主しかいないと思った。ただそれだけだ』

「そうか・・・そいつは残念だ」

普段の俺ならこの駄馬が!役立たずが!くらいは言っていただろうが、この馬に関しては文句を言う気にはなれなかった。

「俺についてこい、スバシル」

『御意』

スバシルが装着していた黄金の装甲が光輝き、スバシルが変身した。

バイクに・・・・何でやねん!

しかもこれ地球で俺が乗ってたアレじゃん!

この独創性のあるボデー、個性溢れるデザインのヘッドライト、左右のポジションランプは肉食獣の牙をイメージしたと言われその中央にプロジェクタータイプの単眼ヘッドライト・・・カワ○キ・ニ○ジャH2じゃん!色は俺好みの黒色中心の金色に赤色になってるけど!

『この姿なら竜の宝物庫に収納可能だ。あと我は乗り物に変身出来る能力があるのでイメージしてもらえれば、そのイメージ通りの形の乗り物に変身できます。中身は我自身の性能になってしまう形・姿だけだな変えられるのは』

「・・・もう王都をぶっ壊す気が失せた、な。お前を仕舞う気はない。スバシル、馬の姿に戻れ、王都に向かう・・・ゆっくりでいい」

『御意』

パカッ 、パカッ、パカッ、パカッ

俺はスバシルの背に乗りゆっくりと歩き始めた。懐かしい気がする。そういえば地球にいた頃から乗り物が好きだったが馬はガキの頃以来かな?

ふふ、中々いいもんだ。

俺は久方ぶりの乗馬を満喫しながら王都に向かう。

月島が去り、その場に残されたのは謎の男の焼死体と身に付けていた物の燃えカスだけ。

その燃えカスの中にほとんどが焼けてよく読めないが手帳らしき物が残っていた。

『生徒⬛帳 ⬛⬛高⬛⬛校 2⬛⬛組 ⬛⬛ ⬛⬛』

暫くすると謎の男の焼死体から青い炎が発生し、死体そして所持品の燃えカス含め跡形も残さずに燃やし尽くした。

そこに一人の男が姿を現す。

「ああ、せっかく俺好みに『改造』して生き返らせてチャンスをあげたのに、クソの役にも立たなかったな。さよなら『異世界人』君、それにしても月島か・・・何者だ?『幽鬼化』させた奴をああも容易く葬るなんて、もしかして?くくく、あははははははは!そうか、そうか!遂に!遂に現れたか!早速報告しなくちゃな!我等の同族が成し遂げたぞ!さあ、戦争の準備だ!始まるぞ!奴等との戦争が!『神座が空位』の今が好機!神座から神が消え、神座は誰も継がず!『神の触角』たる『二人』はその座に着かず、前で立ち塞がり守り続けたがソイツ等も消えた!今こそ!我等同族を虐殺した奴等を葬り神座を手に入れる!!!そして・・・・」

高笑いしていた男の体はだんだん薄くなりその場から消えていった。
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