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第75話 やり過ぎじゃね!

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「逃げられないヨ、覚悟するネ」

神美の言葉に二人の女は撤退を決める。すると女達は姿が見えなくなった。

「ムダね、ワタシには通用しないお遊びレベルネ」

神美は拳に球状の邪気の塊を作り出すと何もない場所に撃ち込む。

パリィン!ドカアアアアン!

ガラスが割れたような音が鳴り球状の邪気が爆発する。すると女二人が出現した。

「へえ優しいネ、もう使えないヤツを助けてあげるなんて」

首を折られながらも生きている女を抱えて逃げようとしていたようだ。

「「・・・・・・・」」

二人は眼球がない青い光が灯る目でお互い無言で見つめ合う。

「別れを邪魔するのは悪いと思うがそろそろおひらきにしよう」

フォルテ、氷狐、真智子、神美が二人を取り囲む。

「・・・・確かにそうね。終わらせましょう」

首の折れた女が自身の胸に手を突っ込み心臓を取り出した。その心臓には青い水晶が埋め込まれており、その心臓をもう一人の女がかぶりついた。首の折れた女の体が青い光を放ち、もう一人の女の体に吸い込まれていく。
女の顔が削がれていた部分に眼球が肉が皮が付き復元していく。

女の顔には皆、見覚えがあった。

「お前、水谷朱里(ミズタニ アカリ)か?え?確かお前の能力って人魚みたいに下半身が変身する能力だったはず。というか何でこんなことしてやがる!」

能力がパワーアップすることはある。けど全くの別系統に変化するものなのか?

「フォルテ!落ち着いて聞いて!水谷さんは光ヶ丘に斬られて死んで遺体は教会に保存されているはずよ!・・・・ッ!いえ、この騒ぎに乗じて持ち出された?まさか本人?」

「死体を弄ぶ外道がいるということアルか?」

・・・・一人、月島側にも死体を弄ぶ輩(浅田源氏)がいるが多分違う。

「まあ1+1=2になったダケネ」

「ちょっと待って下さい!もしかしたら殺されたのを恨んでやったのかも。なら、」

「何を揉めてるのかしら?余裕ねもう勝った気になって」

水谷朱里?はアプリコットを襲おうとする。が、アプリコットの体が黄金の光が溢れてくる。

「いい加減にして下さい!何回も何回も私を狙って!私はこれ以上足出まといにはなりたくない!」

アプリコットの胸から何かが突き出て水谷朱里を弾き飛ばした。

『ヴィクシィラァム・アウローラ(曙光の旗)』

アプリコットの体から古めかしい旗が出現した。

アプリコットが旗を握ると旗が輝き、錆や汚れが消え黄金に輝く旗となった。

その瞬間、アプリコットに旗から『何か』が流れ込んできた気がした。

「ちっ!武器を手にしたところで!」

弾き飛ばされた女は再度アプリコットに襲い掛かる。

『ヴィクシィラァム・アウローラ(大鎌形態)』

黄金の旗が大鎌へと変化し、水谷朱里の両腕を『切り離した』。水谷朱里に接近し腕を切るまでのその動きはアプリコットではない。まるで歴然の戦士のような動きをした。

「アアアア!あ?何だ?痛くない?いや、腕の感触がある?なのに腕がない?透明になったわけでもない」

「この大鎌は振った刃の軌道上にあった物を異次元に跳ばす能力があるのです。降参しなさい。貴女では私には勝てません」

アプリコットの目に黄金の光が灯り、体から黄金の粒子が溢れている。

それは月島や銀月や皇のような『邪気』ではなく、七瀬のような『仙気』でもない、月島に宿る『聖気』でもない、ましてや幽鬼達に宿る『霊気』でもない。

これは『ドロシィ=バルバレス』が纏っていたものと『同質』だった。

「貴女、誰?さっきの娘とは雰囲気が全然違うじゃない」

「それを知ったところで勝率1%すら上がらないわよ」

アプリコットが水谷朱里を圧倒している。その光景を見ていた他の人は。

「お嬢?いや、そんなわけが?」

「へえ、こんな隠し玉があったアルか?」

『ヴィクシィラァム・アウローラ(トンファー形態)』

『ヴィクシィラァム・アウローラ(双銃形態)』

『ヴィクシィラァム・アウローラ(ブーツ形態)』

水谷朱里を滅多打ちにしていくアプリコット。水谷朱里の反撃する暇すら与えない。『殴られた箇所が爆発するトンファー』でボッコボコに殴り、双銃で中距離から『気弾』の連射で寄せ付けずボッコボコに、脚に黄金の金属ブーツを纏い、足首に位置するリングが変形して高速回転することにより電気が発生、雷属性が付与された強烈な蹴りが炸裂、水谷朱里が地面を転がり悶絶する。

「・・・・え?お嬢?あんな攻撃性のあるお人じゃなかったはず」

「中々いい攻撃ネ。後で手合わせして欲しいネ」

『ヴィクシィラァム・アウローラ(操糸形態)』

『ヴィクシィラァム・アウローラ(ジャマダハル形態)』

『ヴィクシィラァム・アウローラ(カード形態)』

『ヴィクシィラァム・アウローラ(十字架形態)』

黄金の糸が水谷朱里の体に巻き付き起き上がらせ、ジャマダハルを装着して体を斬りつけ、距離を取り様々な軌道で飛んでいくトランプのカードが水谷朱里を襲い、体に刺さると刺さったカードの数字の数だけ爆発し、十字架で槌のように何回も滅多打ちにしてトドメとばかりに水谷朱里を上空に打ち上げると十字架が変形していき、ガトリング砲に変形した。

ガガガガガガガガガガガガガ!!!ガチャガチャ!ガチャ!

ガトリング砲がバズーカに変形する。

チュドオオオオオオオオオオン!!!

上空で大爆発が起きる。

「「「やり過ぎじゃね!!!!」」」

アプリコットの格ゲーの無限コンボばりの攻撃にフォルテ、真智子、氷狐がツッコミを入れる。

「・・・リオナ=セキチュアーレ、アリチェ=カミーユ、貴女達も目覚めたのですね」

「お嬢じゃない?アンタ、誰だ?」

フォルテはアプリコットにパイソンの銃口を向けることが出来なかった。

向けてはダメだと許されないと、肉体がアプリコットだからと抜きにしてもそんな気がしてしまう。

「始めるのですね・・・・戦争が」

アプリコットではない何者かが物騒な言葉を呟く。

『ヴィクシィラァム・アウローラ(曙光の旗)』

アプリコットが旗を振る。その度にアプリコットの体から溢れる光がどんどん輝きが増していく。

そしてその光は王都を包み込みやがて消えていった。

アプリコットの体から光が消え、力尽きて倒れ込んだ。
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