ゲームで死職だった『ミュージシャン』がせっかく息を吹き返したのに異世界に飛ばされてしまう話

アカヤシ

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第2話 見捨ててはいなかったらしい

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俺はマイケルサンダースMk―Ⅱを背から下ろし構える。

マイケルサンダースMk―Ⅱの形状は『GRASS ROOTS G―FR―62GT』の形状を参考に音のためでも重量バランスのためでもなく、攻撃的なデザインのかっこ良さのみを追求して知り合いの鍛冶職の女に作らせた(実際は土下座で頼み込み『1日家具になる』という条件で格安で作ってもらった)。

~~~~~♪♪♪

指が勝手に動いてる。
おそらくシステムアシストが生きているのだろう。戦闘方面はどうなんだろうか?

このエレキギターは特注品で素材もレア素材を使用している。そこで思い出した。雷皇石は弦に使われていた素材の内の一つだったはず、FSOではまだあまり出回っていない鉱石で手に入るのに苦労したっけ。

弦が雷に変化する(弦が雷化しているのは演出だけで属性が付与されたわけではない)。

何故そんな仕様になっているのかはミュージシャンが不遇職の理由の一つ『武器磨耗』を防ぐためだ。
FSOには武器の磨耗ゲージが存在し磨耗しすぎると攻撃力が下がり武器等に備わっている特殊スキルが発動しなくなる。
ミュージシャンの攻撃手段はほとんどが楽器武器から繰り出す音の音響攻撃。つまり俺の場合はエレキギターで弦部分が破損した場合、その時点で攻撃も魔法も使えなくなり詰む。
ミュージシャンには声で攻撃するスキルもあるが、俺は楽器武器のスキルをメインにステ振りしているので覚える事はできたが初期値のままだ。しかも攻撃力の低い楽器武器より更に攻撃力が低い。
武器磨耗率は武器の種類によって異なるが魔獣を直接斬っているはずの剣等の武器より磨耗が激しいのだ。

しかも弦は矢や銃弾よりも高い!!!

さすがに特殊矢や特殊弾よりかは安いけど。磨耗率が攻撃力に見合ってない。
これではゲームを始めたばかりの人は手が出しづらくある程度他の職業でレベルを上げてきた者にはミュージシャンに変えるメリットがない。
しかしこの雷化した弦が武器磨耗しなくなりコスト問題を解決したのだ(鍛冶職の女が開発)。

あとエレキギター本体は『夢豊太閤(ムホウタイコウ)バクラ』の素材を使っている。

夢豊太閤バクラは中国の伝説にでてくる獏の姿をしている巨大な魔獣。

FSOでは料理や鍛冶や調合等の生産する際に失敗すると生ゴミや鉄屑といったゴミになる。そのゴミはアイテムとして残り、捨ててもその場に落とすだけで勝手には消えない。そこでとあるプレイヤーは産業廃棄物処理場のような店を始めて有料でゴミを集め始める。運営はあろうことかその産廃場に『面白半分に魔獣をぶっこんだ』のだ。

その魔獣こそ夢豊太閤バクラで、爆響竜ディエロスピッターと同様にFSOで数匹しか確認されていないレア魔獣。攻撃力と防御力に特化した魔獣でほとんど移動をしない要塞のような魔獣だった。

鉄屑を磁力で操り巨大な塊にして投げてきたり、体力が減ると象のような鼻で鉄屑を引き寄せ口に入れて食べて体力値の回復したり、睡眠状態異常にするガスや武器磨耗を早める腐食液を吐き出してくる。猪のような牙の攻撃、踏みつけ攻撃は凄まじくて高レベルプレイヤーを一撃で屠るほど攻撃力が高いのに、更に睡眠状態異常になったプレイヤーへの即死攻撃を持つ。

この魔獣を討伐するのに百人以上の高レベルプレイヤーが代わる代わる交代して戦闘を行い、三日間もかかった。

俺のマイケルサンダースMk―Ⅱは様々なレア魔獣素材をふんだんに使った結果、FSO唯一武器破壊スキルが効かない、武器磨耗をしない楽器武器なのだ!!!

はっ、しまった!つい自慢をしてしまった!

とりあえずは武器は大丈夫そうだ。

『ならスキルや魔法を試したいが・・・それはここでは無理だな』

ミュージシャン不遇職になった理由の一つ、敵のヘイトを集めやすいということ。戦士系のスキル『ヘイトコントロール』と呼ばれる敵を注意を引くスキルがあるがそれ以上の効果がある。しかもミュージシャンが会得できるほとんどのスキルや魔法にその効果があるため、あるイベントで出現する魔獣を狩る為に、ミュージシャンを半ば強制的に連行して死ぬまでその魔獣に追われる囮役をやらせ、死んだからと報酬を渡さず使い潰す『ミュージシャン狩り』が横行したため表立ってミュージシャンを名乗る者がいなくなる原因を作った一つの事件。

いつ来るかもわからない見張りにどうするか迷う。

「どうする扉を開けた瞬間殴って気絶させて脱出するか?いや、ライアンとかいう奴が毎度一人で来るとは限らない。外に何人いる?そもそも窓がないから地下か高所かもわからない、」

「おいカナリア!今日の飯は家畜の豚と同じエサだぞ!嬉しいだろ!あと家畜であるお前に相応しい首輪を持ってきてやったぜ!これで引っ張り回してや、る、」

突然扉が開きひょろちそうなガキが入ってきた。

「・・・・・・・ども」

「あれ?部屋間違えたか?」

そんなわけないのだが俺が軽い感じで頭を下げて挨拶すると相手は戸惑いを隠せず一度部屋を出て確認しようとする。

ドバキャ!!!

俺は背を向けたガキの頭をエレキギターでぶん殴った。さっきのセリフからコイツが糞貴族の息子のライアンだろうと判断したので遠慮せず油断した奴の背後から殴らせてもらった。手加減したので死んではいない。

「おい、今の音は何だ?」

「まさかあの小娘が!」

「脱走だあああああ!!!」

「死なない程度なら傷付けていいと言われている全員抜刀!!!」

「「「「「「「おう!!!」」」」」」」

いや、何かめっちゃいるんですけど!!!こっちに向かってくる足音が半端じゃない数が近付いてくるんですけど!!!待って、ちょっとだけでも練習させて!

「くそ、カナリア!こうなったら強行突破だ!」

一週間以上部屋に閉じ込められ、まとまな食事を与えられず弱りきっていたカナリアには悪いが両手が塞がるとスキルや魔法を発動できないため抱えて走る事ができないため自力で走ってもらうしかない。

『装備条件クリア、腕輪を装備します』

脳内に突然聞き覚えのない女性の声が流れる。

『爆響竜ディエロスピッターの討伐報酬〈アンプファイヤー・オーバードライブ〉を装備しました』

両手首に紫色の腕輪が出現し雷化した弦の色が白の単色から赤・青・紫の三色にランダムで色が変化する。

「まさか・・・これは!!!」

エレキギターの音というのは信号が歪んだり特殊に変化させられていることがその音の醍醐味である。そのように信号を歪ませたり変化させたり周波数ごとに特殊な特性を持たせる機能を果たすのはギターのほうではなく大部分が『アンプ』である。
エレキギターはアンプ抜きでは成立せず、エレキギターという楽器は、それ単体では音が十分に出来上がっておらず、『エレキギターとアンプを合わせた状態が一つの楽器』と言えるような状態なのである。『エレキギターの奏者にとってアンプは非常に重要な要素ある。

エレキギターで例えたがこのアイテムは・・・ミージシャン職のテコ入れアイテム!!!運営~!!!もう見捨てられたと思ってたよいよいよい~!

「やっべっ!!!俺、ニヤニヤしちまってる」

俺も高校生だがやはりまだ子供だな。新しく手に入れたオモチャを早く試したいと心が騒ぎ立ててる。
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