婚約破棄、絶望~そしてゴブリンの巣穴から始まる再生の物語

アカヤシ

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プロローグ 終

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私は地面についている冒険者のものらしき足跡を辿って歩き出した。


それにしてもさっき頭の中に浮かんだ文字や数字は何だったのだろうか?


私はその中で魔法の部分を思い出す。


魔法の風属性と信仰の闇属性。


この世界の魔法属性は、基本属性は火風土水の4つ、その他には4つから派生したとされる属性が存在するが基本1人1属性である。


ちなみに光魔法と闇魔法は他の4つの属性とは違うかたちで誕生したため別枠に分けられているが、基本1人1属性ルールを破った者はいないらしい。


私は公表してないので別で。


4つの属性は元々世界が誕生した瞬間には存在していて、他の属性は4つの属性から派生しただけ、しかし光属性と闇属性は別で、後に世界の均衡の為に人族に与えられたと云われているが真偽は不明。


私が生まれた国が信仰している聖女も光魔法と1つだった。


私が初めて魔法を発動させたのは3才の頃だった。


当時国に報告された中で最年少記録が5才なので新記録だったので褒めて貰えると思い母親に報告して魔法を見せた。


魔法を見た母親は私を突き飛ばした。


母親は私の体の上に膝を乗せ動けないようにすると頬をぶってきた。


最初は平手打ちだったが次第に拳を握り殴られる。


『アンタなんて産むんじゃなかった!』


私は暫く人前に出れないほど顔が腫れ上がるまで殴られた。


私の生まれた国では聖女が使っていた光魔法が優遇され、その真逆の闇魔法は侮蔑の対象だった。


『絶対に人前で魔法を使うんじゃないわよ!いいわね!もし使ったりしたら殺してやるから!』


そして1年が経過して4才になった頃、私がやらかしてしまう。


ある貴族のパーティーの最中、魔法を暴走させ暴発させてしまった。


だが何故か1人1属性、私は闇魔法のはずがその時は風属性の魔法が発動してパーティー会場を暴風でめちゃくちゃにしてしまったのだ。


会場をめちゃくちゃにしてしまったが私が罰せられることはなかった。


そのパーティーには王様が出席しており暴走させたものの私の魔法力の高さをかわれて次期国王となる第1王子の婚約者に選ばれた。


『貴女みたいなゴミにもようやく人の役に立てる時が来たのです。絶対に失敗は許されません!いいですね!』


母親は私を憎んでる。


父親の髪は金色、母親の髪も金色、兄弟も金色。


私だけが何故か髪の色が黒色だった。


私は父親とは違う他の男の子供ではないかと疑われた事があるから。


周りの貴族達が疑いの目を向け陰口を母親へと。


その疑いは血縁を調べる魔法の道具があったのおかげで晴らすことができたがそれ以来母親は私にきつく当たってきた。


嫌な事を思い出してしまった。


私は思考に耽っている間に、森を抜けて人の手で整えられた道を発見。


私はあることに気付いた。


身分を証明できる物がない。


お金もない。


それに私はほぼ全裸。


まず大きな町には入れない。


行き着いた先が小さな村なら誤魔化せるかもしれないけど。


せめてこの格好をどうにかしないと。


『貴女の履歴から一番利用回数が多いものを選択します』

『パンツ(85000)』
『ノースリーブシャツ(3700)』
『スパッツ(6000)』
『ロングの巻きスカート(5000)』
『アームカバー(5000)』
『ブーツ(7000)』


合計111700E

課金残高9888299E


気が付くと私はかつて冒険者時代の格好をしていた。


へそを出してる黒のノースリーブシャツに黒のスパッツにロング巻きスカート、腕には斬撃耐性が付与された黒のアームカバーに爪先に鉄板が仕込んである速度上昇が付与された黒のロングブーツ。


服の色が黒が多いのはただ自分が黒色が好きなだけです。


パンツも黒色ですが何か?


自身の格好をどうにかしないとと考えた矢先に服が勝手に換わった。


困っていたら助けてくれるのか。


あと何故か下着がやたらと高いのは気になるが今は置いておこう。


この力は本当に買い物をする能力なのか?


そもそもE(エクスード)とはどこの通貨なのだろうか?


ファシーズ聖国の通貨はF(フォル)だ。


『エクスード』、この世界に存在する国なのだろうか?


その答えは考えても無駄だろうと思った。


とりあえずは服装の問題は解決。


次は魔物や盗賊が出て来てもいいように武器を想像してみる。


武器下さい、武器下さいと誰に向かってかは分からないがとりあえず祈ってみた。


『一番利用回数の多かった武器である細剣を選択します』


私の腰に鞘付きで長年愛用していた細剣が出てきた。


私は細剣を鞘から抜いてみたが違和感を感じた。


私は気付いた、履歴という言葉は分からないが過去というからには私が昔に所持していた物を出したのかと思ったが違った。どうやらこの能力で買った物は性能とデザインは同じだが過去に着ていた、所持していた物とは全くの別物であると直感的に理解した。


愛着はあったが仕方がない・・・魔物か盗賊出ないかな?


新しく手に入った武器を試し切りしたくなって本来の目的であった町又は村に行くのをやめて私は道から逸れて魔物を探し始めた。


ふふ、さっきまで昔の事を思い出して気分が下がっていたが今ではちょっと楽しく感じている。


私をこの世に繋ぎ止めてくれているのはこの謎の能力のおかげかもしれない。


そもそもこの能力がなければ私はゴブリンの巣穴で餓死していただろう。


『貴女は一度死にました』


・・・今なんか言わなかった?


『貴女は一度死にました』


・・・落ち着こう深呼吸しよう。


『貴女は一度死にました』


深呼吸させて!・・・って死んだの私!!!


『貴女の履歴を見る限りでは一度死んでいます』


履歴?やっぱり過去の事か?それより貴方は誰かと声の主に問いかけてみた。


『・・・・・・・・・・・・・・』


無視?答えてくれない?もしかして答えてられないのだろうか?


『99999999999999Eかかります。課金残高が足りません。チャージして下さい』


たかっ!!!全く答える気がない!


『個人情報です通報しますよ?』


誰に!!!通報ってやっぱりエクスードという通貨があるということは相手はどこかの国の人なのだろうか?


今は深く探るのはやめておこう。とりあえず私が死んだ事を聞こう。


合計10000E

課金残高9878299E


あれ?私の死亡情報ってたったの10000E?


え?下着より安いの?・・・安すぎない?


声の主の情報は途方もなく高いのに私の情報安くない!!!


価格設定の基準が本当に分からない!!!


『貴女は餓死して一度死んでいます。後に貴女の死を聖剣が肩代わりしたために貴女は蘇生されました』


・・・聖剣ってもしかしてファシーズ聖国の国宝の聖剣じゃないよね?かつて聖女の遺した聖剣じゃないわよね?


『正解です』


・・・ちょっと待って、私が死んで何で聖剣が死を肩代わりしてくれるの?


『貴女は聖女だからです』


・・・よし、落ち着こう深呼吸をしよう。


『貴女は聖女だからです』


だから深呼吸させてってば!!!


私が聖女?なら私を陥れたあの平民は聖女じゃないの?


『・・・・・・・・・・・・・・』


あれ?これの質問もダメ?


『他人の個人情報です通報しますよ?』


だから誰に!!!


どうやら自分以外の情報は基本的にはダメなようだ。


聖剣がどうなったか試しに聞いてみた。


『粉々に砕けました』


へえ、そうなんだ・・・私のせいって分からないよねそれ!


『問題なし、聖女の貴女なら聖剣に触れれば再生出来ます。死の肩代わりは無限に使えます』


・・・いやそういう意味で聞いたんじゃないから。


まあどうでもいいのよあんな国。


復讐する気はもうないけど関わるつもりもない。


・・・そういえばここどこだろうか?


盗賊にゴブリンの巣穴に連れて行かれた時は、目隠しされ手足を縛られ箱詰めにされてたから分からないのよね。それに精神状態が正常ではなかった。


『・・・・・・・・・・・・・・』


どうやら場所もダメなようだ。


しょうがないので魔物の探索に戻った。


そういえば人ではないが会話なんて正直いつぶりかな?


婚約破棄され下積みも含めた冒険者をやっていた時もまともに人と会話なんてしなかった。


娼婦の真似事をしていた時だって客が本番を狙って口説こうと話し掛けてくるが私はさっさと済まして料金を貰って無視してた。


あるのは事務的な受け答えだけ。


盗賊に捕まっている時もただの性欲処理道具として扱われて人間扱いされもしなかったから会話なんてあるはずがない。


ゴブリンなんて言語が違うので論外。


思い返せば貴族だった頃も私はずっと1人だった気がする。


兄弟には専属の従者がいたが私にはいなかった。


勉学も教師を付けられず教材だけ与えられて、決められた範囲ができなければ部屋からも出してもらえず、食事も1日1回冷めたく固まったパンにコップ一杯の水だけになり、ダンスの練習も同様で教材だけ渡されパートナーなしでずっと1人で踊って練習していた。


確かに謎の声の主とも私の質問に答えてくれるだけ、しかも料金とられる。


だけど何故かその声を聞いていると暖かい気持ちになり心が安らぎ元気が、


「キャアアアアアアアアアアアアア!」


どこからか聞こえる女性の悲鳴。


・・・・・台無しだよ!!!!


少なくとも元気は沸いた。


私は声のする方に走り出した。
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