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第1話 私の名前は・・・
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「キャアアアアアアアア!もう駄目!こっち来ないで!」
革の防具を身につけ弓を背負っているが矢筒がない、どうやら落としたのか矢を使いきって軽くするために矢筒を捨てたのか知らないがとにかく赤毛の女の子が泣きながら全力で走っていた。
その後ろにグレーウルフと呼ばれる狼系の魔物が三匹ほど走ってはいたが。
「・・・グレーウルフより僅かに速い?何あの子?」
見たところその女の子の靴には、私のロングブーツにも付与されている速度上昇のような特殊な上昇付与された靴には見えない。
しかし直線だけならグレーウルフよりも僅かだが速く走っていた。
相手もそれが分かっているのか三匹が連携して直線に走らせないようにしている。
体力が無限ならあの子は自力で助かるだろうがもう息が上がってきているようなので割って入った。
私は一匹すれ違い様に細剣で斬り捨て、残りの二匹は風を細剣に纏わせてからミンチにしてやった。
「・・・・大丈夫?」
少女の方に目を向けると顔から盛大に転んだのか真っ赤になった顔を手で押さえ泣きながら地面を転がっていた。
「はうっ!痛いです、とっても痛いです、アッ!あの助けていただきありがとうございます!」
少女は正座して地面に額を擦りつけながら礼を言ってきたので慌てて起き上がらせる。
「礼はいい、立って話そ、ねっ」
土下座させているところを他の人に見られたら勘違いされてしまい兼ねない。
「すみません、私の名前はサミっていいます。この近くのラジム村っていう村に住んでます」
「近く?村の近くにグレーウルフなんて出るの?」
すぐそこの森には駆除されたとはいえゴブリンの巣があるような場所に?
「あ、ご存知ないんですね?ラジム村は元々別の場所にあったのですが、国の命令で退去させられたんです。代わりにここに移れと」
いくらなんでも酷すぎじゃない?
「何で退去させられたの?」
「・・・ラジム村にある泉が聖女様がかつて体を清める為に使っていたと判明したからです。聖女がお使いになられた清き泉は国の管理下に置き保存しなくてはならないと言われて追い出されました」
聖女関連か、神よりも聖女が信仰されているこの国ならやるな。
「最近よくある事なんです。住んでいた人達が国の退去命令で土地を追われるのは」
「最近?」
「少し前に結婚式があったじゃないですか。そのせいで、」
「結婚式?」
「え?第1王子のライオネル様と公爵家のナオミ様の結婚式ですよ?大々的に報じられたから国中に知れ渡ってると思っていたんですけど」
「え?え~と、私ちょっと、籠ってたから部屋に」
嘘ではないゴブリンの巣穴の隠し部屋に閉じ込められてましたから。
サミという少女がなんか憐れみの表情を!バレた・・・ッ!違う!もしかして引きこもりと勘違いしてない!
サミという少女は優しく微笑む。
「そうですね貴女は悪くありませんよ。悪いのは貴女を受け入れない社会が悪いんです。大丈夫、私は貴女の味方です。分かってます」
・・・もうその設定でいこうか?
盗賊やゴブリンにされてきた事をわざわざ説明するのも嫌だし引きこもりと思われる方がずっとましだから。私はサミに話の続きを聞かせてもらう。
ファシーズ聖国の首都で盛大な結婚式がありました→
首都の中央広場でナオミ様が聖女であると発表→
聖女ナオミ様に聖剣を貸し与えられました→
ナオミ様が聖剣を民衆にもよく見えるように掲げました→
パッリィィィン(聖剣の刀身が粉々に砕けました)→
『『『『『『民衆大パニック』』』』』』
・・・・ッ!ざまぁぁぁぁ!あの女やりやがった!いや私ナイスタイミングで死んでんの!ナイスショットだわ~!
聖剣の死の肩代わりの発動が神がかってる!!!
私はバレないよう笑いを必死に堪えながらサミに続き促す。
「首都はやばかったらしいです。新聞に書いてましたけど会場にいた数万人の大混乱で死者が出ましたし。国が自分達の都合のいい人間を聖女に仕立てようとしたんじゃないかとも王族の信用ガタ落ちらしいです。特に第1王子のライオネル様の王位継承が危うくなったって書いてました」
「で?王子の信用を取り戻す為に聖女にまつわるもの探し?」
「ライオネル様の主導の元で行われているらしいですけど信用が回復どころか急降下してますけどね」
「・・・そうなんだね、酷い話だね、」
「そういえばお名前聞いてませんよね?なんて呼べばいいんですか?」
名前、か・・・かつて婚約破棄され平民になった時は家名だけを捨て親から貰った名前をそのまま名乗ってた。だけどもうその名前も捨てようと思っていたがまだ新しく名乗る名前を考えていなかった。
「ヤミ・・・ヤミっていうの」
やらかした!咄嗟で思いつかなかった!
「ヤミさんですか!私と一文字違いですね!改めて先ほどは助けていただきありがとうございます!」
元気のいい子だね。思わず頭を撫でてしまう。
「どうしたんですかヤミさん?私の頭を撫でたりして?」
「あ、ごめん馴れ馴れしかったね」
「とんでもないです!寧ろもっと撫でて下さい!」
子犬みたいな子、可愛いわね。
「貴女は冒険者?」
「え?いえいえとんでもない!私はただの村娘です!昨日村の畑を作る予定地に猪系の魔物ワイルドボアが出まして、村の男衆が狩猟したんですけど怪我人が多くて」
ワイルドボアで怪我人が多くでた?
私はその言葉を聞いてサミの村はかなりヤバイ状況にあると考える。
猪系の魔物ワイルドボアは普通の猪より体が大きく力はかなり強いし速いがはっきり言って冒険者の中では比較的低級者向けのモンスターだ。
直線的な動きが多いからね。
素材の良し悪しが関係なくただ駆除するだけならモンスター用のトラバサミ等の罠を設置して罠に掛かったら複数人で弱点の鼻や頭をタコ殴りにすれば結構簡単に倒せるのに。
複数の罠を設置して掛からなかった罠を解除をし忘れて罰金を食らう新人冒険者が必ずはいるのよ。私は使わなかったけどサポーター(冒険者補助員)をしていた頃に足の速かった私はよく囮係をやらされたけど。
「国に別の場所に移してくれと申請した方がいいんじゃない?」
「できないんです・・・ライオネル様は私達ラジム村の人達には死んでもらいたいんだと思います。けど直接手が出せないからこんな」
実はラジム村の泉が聖女が使っていたと判明した際にライオネルとナオミが護衛をつれて村を訪ねてきたらしい。
その泉でナオミも聖女として体を清めようと入ろうとしたが泉に住まう精霊に拒絶されたらしい。
『お前じゃない!』
ライオネルは慌てて村人達に箝口令を出した。
『ここに住まう者は長年この泉を管理し綺麗にしてくれている。その者達に手を出すことはけして許さんぞ』
ライオネルからしてみれば小さい村なんて滅ぼして完全に口封じがしたかったんだろけど。
直接手を出すことは出来ないが追放するのは止められていないってところか?
ライオネルはこんなセコい奴だったのか?
「あのヤミさんは今後の予定とかありますか?」
全くありませんがそれが何か?(キリッ!)
「もしよかったら私の村に住んでもらえませんか!」
革の防具を身につけ弓を背負っているが矢筒がない、どうやら落としたのか矢を使いきって軽くするために矢筒を捨てたのか知らないがとにかく赤毛の女の子が泣きながら全力で走っていた。
その後ろにグレーウルフと呼ばれる狼系の魔物が三匹ほど走ってはいたが。
「・・・グレーウルフより僅かに速い?何あの子?」
見たところその女の子の靴には、私のロングブーツにも付与されている速度上昇のような特殊な上昇付与された靴には見えない。
しかし直線だけならグレーウルフよりも僅かだが速く走っていた。
相手もそれが分かっているのか三匹が連携して直線に走らせないようにしている。
体力が無限ならあの子は自力で助かるだろうがもう息が上がってきているようなので割って入った。
私は一匹すれ違い様に細剣で斬り捨て、残りの二匹は風を細剣に纏わせてからミンチにしてやった。
「・・・・大丈夫?」
少女の方に目を向けると顔から盛大に転んだのか真っ赤になった顔を手で押さえ泣きながら地面を転がっていた。
「はうっ!痛いです、とっても痛いです、アッ!あの助けていただきありがとうございます!」
少女は正座して地面に額を擦りつけながら礼を言ってきたので慌てて起き上がらせる。
「礼はいい、立って話そ、ねっ」
土下座させているところを他の人に見られたら勘違いされてしまい兼ねない。
「すみません、私の名前はサミっていいます。この近くのラジム村っていう村に住んでます」
「近く?村の近くにグレーウルフなんて出るの?」
すぐそこの森には駆除されたとはいえゴブリンの巣があるような場所に?
「あ、ご存知ないんですね?ラジム村は元々別の場所にあったのですが、国の命令で退去させられたんです。代わりにここに移れと」
いくらなんでも酷すぎじゃない?
「何で退去させられたの?」
「・・・ラジム村にある泉が聖女様がかつて体を清める為に使っていたと判明したからです。聖女がお使いになられた清き泉は国の管理下に置き保存しなくてはならないと言われて追い出されました」
聖女関連か、神よりも聖女が信仰されているこの国ならやるな。
「最近よくある事なんです。住んでいた人達が国の退去命令で土地を追われるのは」
「最近?」
「少し前に結婚式があったじゃないですか。そのせいで、」
「結婚式?」
「え?第1王子のライオネル様と公爵家のナオミ様の結婚式ですよ?大々的に報じられたから国中に知れ渡ってると思っていたんですけど」
「え?え~と、私ちょっと、籠ってたから部屋に」
嘘ではないゴブリンの巣穴の隠し部屋に閉じ込められてましたから。
サミという少女がなんか憐れみの表情を!バレた・・・ッ!違う!もしかして引きこもりと勘違いしてない!
サミという少女は優しく微笑む。
「そうですね貴女は悪くありませんよ。悪いのは貴女を受け入れない社会が悪いんです。大丈夫、私は貴女の味方です。分かってます」
・・・もうその設定でいこうか?
盗賊やゴブリンにされてきた事をわざわざ説明するのも嫌だし引きこもりと思われる方がずっとましだから。私はサミに話の続きを聞かせてもらう。
ファシーズ聖国の首都で盛大な結婚式がありました→
首都の中央広場でナオミ様が聖女であると発表→
聖女ナオミ様に聖剣を貸し与えられました→
ナオミ様が聖剣を民衆にもよく見えるように掲げました→
パッリィィィン(聖剣の刀身が粉々に砕けました)→
『『『『『『民衆大パニック』』』』』』
・・・・ッ!ざまぁぁぁぁ!あの女やりやがった!いや私ナイスタイミングで死んでんの!ナイスショットだわ~!
聖剣の死の肩代わりの発動が神がかってる!!!
私はバレないよう笑いを必死に堪えながらサミに続き促す。
「首都はやばかったらしいです。新聞に書いてましたけど会場にいた数万人の大混乱で死者が出ましたし。国が自分達の都合のいい人間を聖女に仕立てようとしたんじゃないかとも王族の信用ガタ落ちらしいです。特に第1王子のライオネル様の王位継承が危うくなったって書いてました」
「で?王子の信用を取り戻す為に聖女にまつわるもの探し?」
「ライオネル様の主導の元で行われているらしいですけど信用が回復どころか急降下してますけどね」
「・・・そうなんだね、酷い話だね、」
「そういえばお名前聞いてませんよね?なんて呼べばいいんですか?」
名前、か・・・かつて婚約破棄され平民になった時は家名だけを捨て親から貰った名前をそのまま名乗ってた。だけどもうその名前も捨てようと思っていたがまだ新しく名乗る名前を考えていなかった。
「ヤミ・・・ヤミっていうの」
やらかした!咄嗟で思いつかなかった!
「ヤミさんですか!私と一文字違いですね!改めて先ほどは助けていただきありがとうございます!」
元気のいい子だね。思わず頭を撫でてしまう。
「どうしたんですかヤミさん?私の頭を撫でたりして?」
「あ、ごめん馴れ馴れしかったね」
「とんでもないです!寧ろもっと撫でて下さい!」
子犬みたいな子、可愛いわね。
「貴女は冒険者?」
「え?いえいえとんでもない!私はただの村娘です!昨日村の畑を作る予定地に猪系の魔物ワイルドボアが出まして、村の男衆が狩猟したんですけど怪我人が多くて」
ワイルドボアで怪我人が多くでた?
私はその言葉を聞いてサミの村はかなりヤバイ状況にあると考える。
猪系の魔物ワイルドボアは普通の猪より体が大きく力はかなり強いし速いがはっきり言って冒険者の中では比較的低級者向けのモンスターだ。
直線的な動きが多いからね。
素材の良し悪しが関係なくただ駆除するだけならモンスター用のトラバサミ等の罠を設置して罠に掛かったら複数人で弱点の鼻や頭をタコ殴りにすれば結構簡単に倒せるのに。
複数の罠を設置して掛からなかった罠を解除をし忘れて罰金を食らう新人冒険者が必ずはいるのよ。私は使わなかったけどサポーター(冒険者補助員)をしていた頃に足の速かった私はよく囮係をやらされたけど。
「国に別の場所に移してくれと申請した方がいいんじゃない?」
「できないんです・・・ライオネル様は私達ラジム村の人達には死んでもらいたいんだと思います。けど直接手が出せないからこんな」
実はラジム村の泉が聖女が使っていたと判明した際にライオネルとナオミが護衛をつれて村を訪ねてきたらしい。
その泉でナオミも聖女として体を清めようと入ろうとしたが泉に住まう精霊に拒絶されたらしい。
『お前じゃない!』
ライオネルは慌てて村人達に箝口令を出した。
『ここに住まう者は長年この泉を管理し綺麗にしてくれている。その者達に手を出すことはけして許さんぞ』
ライオネルからしてみれば小さい村なんて滅ぼして完全に口封じがしたかったんだろけど。
直接手を出すことは出来ないが追放するのは止められていないってところか?
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