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第7話 新聞記者バーブラ、そして『鬼神』の情報
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「え?お前それ地毛なの?」
「いや、王都の『チェーリーボム』って店で染めてもらった」
「え!あそこ行った事あるけどメニューになかったぞ」
「ふっ、追加料金が必要だけだ・・・給料一月分だがな!」
「え?お前その眼帯してたけど失明してなかったのか?」
「ワリー、目の周りを傷付けられたことはないぜ」
「俺も包帯巻いてるけど怪我はしてない」
・・・・コイツら全員魔法使いらしいが魔法使いにはこういう奴等が多いのか?
「ちょっと、いい?」
おっと降りてきた女性が話しかけてきた。
「はっ!何なりとお申し付けください!」
グレゴリオ・・・お前ら、完全やられちまってるよ頭を。
「ここから先は耐性があろうと死んでしまう毒の世界が広がってるわよ。引き返すことをお薦めする」
「それは無理です!我々には毒界に住まう毒竜ヒュドラを討伐し人々の笑顔を、平和の日々を取り戻すために闘わなければならないのです!」
魔法使い集団がさも崇高な使命の為にとカッコつけるように告げる。
「触れるどころか近付いたら死ぬわよ」
「悔いはありません!我々は最後に神に出会えたのですから!」
「・・・・死ぬのが怖くないの?」
「今代の聖女は役に立ちません色に溺れた愚か者です。今もライオネル殿下と身体を重ねている最中ですよ。そんな連中に任せてはおけません!」
グレゴリオ!お前自ら志願して戦いに行くようなこと言ってない?カッコいいところを見せたいのか見栄をはっている。
「・・・・奴等、ここにいるの?」
女性の雰囲気が少しピリッとしだした。
「はっ!いえ、遥か後方に陣がございます!今回の遠征に聖女が参加している体裁をとりたいのかと」
「・・・・爆破してやろうかな?」
おいいいいい!この人過激すぎだろ!聖女を爆破したいとか!
まあ俺達もそう思ったけど。
「そうせよと命令していただければ直ちに部隊を編成し奴等のテントに我々の魔法を一斉射撃を撃ち込んできます!」
グレゴリオ・・・お前はもう脳ミソがやられちまってるよあの女に。
「いえ、光魔法の結界を張っている可能性が高いしこちらとしても奴等が留まっているのは好都合」
「あの、よろしければお名前をお聞かせ願えませんか?」
「・・・・ヤミ」
闇魔法使いのヤミ?完全に偽名だろそれ?やっぱり怪しくない?怪しいよね?どこかの監獄から脱走してきたんじゃないだろうか?
「ヤミ様・・・・最後に貴女に出会えたことを感謝いたします」
グレゴリオや魔法使い組が覚悟を決めちまった。
「貴方達は今から出撃するの?」
「いえ、明日の朝です。実は昨日この部隊を率いるはずの貴族が死ぬのを恐れ逃げ出したのですが、いやその貴族はもう捕まり我々の目の前で見せしめに処刑されたのですがライオネル殿下が1日だけ覚悟を決める時間をやると」
「・・・・この中でライオネルがどこかに兵士を差し向けたとかいうことを聞いた人いる?」
「いえ、そのような事は聞いていません」
「まだ時間はある、か」
女性は自分の世界に入ってしまったのか思案の相を浮かべる。
「グレゴリオ、さすがにこれ以上部外者に話すのはヤバくないか?」
「どうせ死ぬんだ関係ないさ。俺はヤミ様の為に死ぬなら本望だ!」
「ちょ~と失礼!割り込ませてもらいますよ!」
そこにこの場に相応しくないスーツ姿の男が現れた。
こいつは新聞記者の『バーブラ』だったか?こいつは今回特攻させられる俺達の取材に来た男で、無意味に特攻させられる気分はどうかと聞いてくるような無神経男だ。
「ちょっとそこのヤミさんに質問があるんですけど」
バーブラがヤミと名乗る女性に近づこうとするがグレゴリオがそれを阻止する。
「ヤミ様は考え事の真っ最中だ消えろ」
「いやいやあんた達の取材は終わったんですよ。それより特ダネの予感しかしない彼女の事を取材したいんですがね?」
「俺達は消えろと言っているそれとも戦いに巻き込まれて死んだ事にしてやろうか?」
「いいんですか?そんな過激な事言っちゃって後で後悔しますよ?」
「今から死ぬ奴が記事なんて書けるのか?それに明日俺達は死ぬんだぜ関係ないね」
グレゴリオが先頭に立ちその後ろの大勢の魔法使い達と共に睨み付けるがバーブラは怯まない。
バーブラはお構い無しにその集団を跳び越えヤミの前へと降り立った。
「なっ!ただの記者じゃねーだろてめえ!」
「俺はただの記者だぜ。ただ危険が付きまとうこの仕事で自分の身くらい自分で守れるくらいじゃないとな・・・って無視しないでくださいよ」
ポンッ!
いまだ自分の世界に入っていたヤミの肩に手を置いたバーブラに気付いたヤミ。
「ッ!やめっ!触らないで!」
怯えた少女のような声をあげたヤミの声を聞いたアレックスはいつの間にかバーブラの側まで駆け首根っこを掴み無理矢理引き剥がし投げ飛ばした。
「ぐへっ!」
投げ飛ばされたバーブラは無様な声をあげながら地面を転がされた。
「お前ら!ヤミ様から離れろ!ヤミ様はどうやら男が苦手なようだ距離をとれ!」
グレゴリオの声に魔法使い達は統率のとれた動きで素早く下がる。
「・・・・チンコもいだら女ってことにならないかな?」
「ナイフで切って傷口を火で焼けば問題ないだろうか?」
「クソ!なんで僕は男に生まれたんだ!母さんの馬鹿!」
ならねーよ!ただの玉無しになるだけだからな!あと誰か知らんがかーちゃんは悪くねーだろ!馬鹿だろお前ら!
「ごめん、なさい、男の人が苦手な、いえ、嫌い、じゃなくて」
「いいのですヤミ様!あのクソはあとで処刑してカラスの餌にでもしておきます!ご安心ください!」
グレゴリオが過激派と化していってる・・・・コイツとは子供の頃からの付き合いのはずだがどうやら知らない事の方が多いようだ。昔は飼っていた猫が死んだだけで3日も部屋に閉じ籠ってたくらい優しい奴だったが。
「そこの人、記者ってほんと?それって文春鳥ってやつが運んでいる新聞を書いてるとこ?」
「ええ、コイツはそこの記者です」
ヤミがバーブラの側まで歩み寄る。
バチーーーーーーーーーーン!!!!
ヤミはバーブラの胸元を掴み女性の細身のどこにそんな力がとツッコミが入るくらい軽々と成人男性を片手で持ち上げ平手打ちを浴びせる。
「アンタのところの馬鹿鳥に糞をぶっかけられたのよ。どういう教育してるの?」
「いや、鳥だから!動物だから仕方な、ぶへっ!」
バチーン!
「言い訳はいい」
バチーン!バチーン!
「ぶへっ!あひん!ヤメッて!止めてください!」
「私は肩に、友達は頭に落とされたんだけど?」
「なんとか教え込むので止めてください!」
ヤミはバーブラの胸元を掴んでいた手を離す。
「いたたた、俺こう見えても元中級冒険者だったんだけど君何者なの?」
「・・・ところで今朝の新聞書いたの貴方?」
「読んでくれたの?そりゃ光栄だね」
「いいの?王族のライオネル殿下や世間で聖女と呼ばれているナオミを批判するような記事を書いて?」
「ん?大丈夫だよ。ウチの新聞屋には強力な後ろ楯がいるのさ」
「後ろ楯?」
「そう!たとえ王族だろうと簡単には手を出すことが出来ない元大貴族!ヴィザイア公爵家だ!」
ヴィザイア公爵家!
周りがざわつく。
当然だヴィザイア公爵といえば今代の王ライブロスの兄であるライゼクス様がいるからだ。
ライゼクス様は自由奔放なお方で、護衛なしで下町をぶらついたり戦となれば最前線に立ち単身で突撃して敵大将を討ち取ったり仕事を放り出して友人である隣国の王子に知らせなしに訪れるような人であったとか。
この国では世襲制ではなく指名制だったので弟であるライブロスが王に選ばれた。
というよりライゼクスは次代の王を発表する大事な場にすら行かなかった。
ライゼクスは王になるつもりなど毛頭なかったがライブロスは王になりたがっていた。その後ライゼクスは『ヴィザイア騎士爵』に養子入りすることになる。
何故王族であるライゼクスは騎士爵入りすることになったのか?
その騎士爵は土地を有していたが痩せ細った大地に作物の育ちも悪く雨もあまり降らず魔物も多く出現しこの国で永住したくないナンバーワンの領地だった。
だがライゼクスはそれすら楽しんだ。
やがて二十年以上の月日が経ちライゼクスは周辺の領地を丸ごと呑み込み騎士爵から公爵に成り上がっていた。
一騎当千の武力を持ち多くの人を魅了するカリスマ性を持つ男。
嵐魔法使いで周辺諸国から『鬼神』と恐れられるライゼクス=ヴィザイア。
嵐魔法は風魔法と似ているが規模のレベル違う。
嵐魔法は小国を一撃で消し飛ばすほどの魔法が存在するほどの危険な属性の魔法でもある。
高い魔法力が要求され、一発放つのに一般の魔法使いが魔力枯渇で死に至るほどの魔力を使用する。
非常に広範囲高威力の魔法しかなく、規模や威力を上げることは出来るが、下げることは術者の技量に関係なく出来ない。
彼の半生をまとめた本も出されており、強力な魔物を倒す強さや彼の冒険に憧れ冒険者になるものも多く、戦や政で活躍し騎士爵から公爵家になった手腕に憧れる騎士や貴族も多い。
嫉妬や嫌悪する輩もいるが、はっきり言って今代の王ライブロスより人気がある。ライブロスよりライゼクスに味方する方が圧倒的に多いだろう無論民衆も含めて。
本人の強さもあるがヴィザイア家の兵はただの一兵でも他所の兵士の十人分に匹敵する強さを持ち、ヴィザイア家の領地には魔石油や魔鉱石や宝石の原石が大量に取れる土地を有しており(勿論全てライゼクスが発見した)他の高位貴族を上回る資産を持つ。
こんなヴィザイア公爵家の正面から挑む馬鹿などいるはずがない。
「ライオネル殿下とナオミ様がライゼクス様に書状を送ったんだよね王の許可なくね」
「なんて書いて送ったんだよ」
いつの間にか周りにいる人もバーブラの言葉に耳を傾けていた。
「・・・・ヴィザイア公爵家の全財産を王家が没収するってね。勿論領地も含まれてる爵位も没収、」
「・・・・は?いやいや大事件じゃねーか!」
アレックスは思わず大声をあげる。
「ふふふ、そうだよ。ライオネル殿下とナオミ様は正面からライゼクス様に挑んだんだよ。そして勝った・・・ライオネル殿下側がね。ライゼクス様は国外追放されたよ」
「爵位や領地もなくなって国外追放された男が後ろ楯?」
ヤミの疑問にバーブラは、
「嵐の前の静けさってね。ライゼクス様は素直に出ていったと思っているのは馬鹿なライオネル殿下と聖女(笑)ナオミ様だけだよ。あの人は必ず帰ってくるそう思っている奴等の方が多いと思うよ。第2王子は逃げ出したって未確認ではあるけど情報が入ってる。それにライゼクス様がいなくなったこの国はこれから多くの国から狙われる可能性が高いその価値はある。潤沢な資源にこの国でしか作れない魔道具の製作技術や他にもあるけど今は・・・話題の聖女、を狙ってね」
「いや、王都の『チェーリーボム』って店で染めてもらった」
「え!あそこ行った事あるけどメニューになかったぞ」
「ふっ、追加料金が必要だけだ・・・給料一月分だがな!」
「え?お前その眼帯してたけど失明してなかったのか?」
「ワリー、目の周りを傷付けられたことはないぜ」
「俺も包帯巻いてるけど怪我はしてない」
・・・・コイツら全員魔法使いらしいが魔法使いにはこういう奴等が多いのか?
「ちょっと、いい?」
おっと降りてきた女性が話しかけてきた。
「はっ!何なりとお申し付けください!」
グレゴリオ・・・お前ら、完全やられちまってるよ頭を。
「ここから先は耐性があろうと死んでしまう毒の世界が広がってるわよ。引き返すことをお薦めする」
「それは無理です!我々には毒界に住まう毒竜ヒュドラを討伐し人々の笑顔を、平和の日々を取り戻すために闘わなければならないのです!」
魔法使い集団がさも崇高な使命の為にとカッコつけるように告げる。
「触れるどころか近付いたら死ぬわよ」
「悔いはありません!我々は最後に神に出会えたのですから!」
「・・・・死ぬのが怖くないの?」
「今代の聖女は役に立ちません色に溺れた愚か者です。今もライオネル殿下と身体を重ねている最中ですよ。そんな連中に任せてはおけません!」
グレゴリオ!お前自ら志願して戦いに行くようなこと言ってない?カッコいいところを見せたいのか見栄をはっている。
「・・・・奴等、ここにいるの?」
女性の雰囲気が少しピリッとしだした。
「はっ!いえ、遥か後方に陣がございます!今回の遠征に聖女が参加している体裁をとりたいのかと」
「・・・・爆破してやろうかな?」
おいいいいい!この人過激すぎだろ!聖女を爆破したいとか!
まあ俺達もそう思ったけど。
「そうせよと命令していただければ直ちに部隊を編成し奴等のテントに我々の魔法を一斉射撃を撃ち込んできます!」
グレゴリオ・・・お前はもう脳ミソがやられちまってるよあの女に。
「いえ、光魔法の結界を張っている可能性が高いしこちらとしても奴等が留まっているのは好都合」
「あの、よろしければお名前をお聞かせ願えませんか?」
「・・・・ヤミ」
闇魔法使いのヤミ?完全に偽名だろそれ?やっぱり怪しくない?怪しいよね?どこかの監獄から脱走してきたんじゃないだろうか?
「ヤミ様・・・・最後に貴女に出会えたことを感謝いたします」
グレゴリオや魔法使い組が覚悟を決めちまった。
「貴方達は今から出撃するの?」
「いえ、明日の朝です。実は昨日この部隊を率いるはずの貴族が死ぬのを恐れ逃げ出したのですが、いやその貴族はもう捕まり我々の目の前で見せしめに処刑されたのですがライオネル殿下が1日だけ覚悟を決める時間をやると」
「・・・・この中でライオネルがどこかに兵士を差し向けたとかいうことを聞いた人いる?」
「いえ、そのような事は聞いていません」
「まだ時間はある、か」
女性は自分の世界に入ってしまったのか思案の相を浮かべる。
「グレゴリオ、さすがにこれ以上部外者に話すのはヤバくないか?」
「どうせ死ぬんだ関係ないさ。俺はヤミ様の為に死ぬなら本望だ!」
「ちょ~と失礼!割り込ませてもらいますよ!」
そこにこの場に相応しくないスーツ姿の男が現れた。
こいつは新聞記者の『バーブラ』だったか?こいつは今回特攻させられる俺達の取材に来た男で、無意味に特攻させられる気分はどうかと聞いてくるような無神経男だ。
「ちょっとそこのヤミさんに質問があるんですけど」
バーブラがヤミと名乗る女性に近づこうとするがグレゴリオがそれを阻止する。
「ヤミ様は考え事の真っ最中だ消えろ」
「いやいやあんた達の取材は終わったんですよ。それより特ダネの予感しかしない彼女の事を取材したいんですがね?」
「俺達は消えろと言っているそれとも戦いに巻き込まれて死んだ事にしてやろうか?」
「いいんですか?そんな過激な事言っちゃって後で後悔しますよ?」
「今から死ぬ奴が記事なんて書けるのか?それに明日俺達は死ぬんだぜ関係ないね」
グレゴリオが先頭に立ちその後ろの大勢の魔法使い達と共に睨み付けるがバーブラは怯まない。
バーブラはお構い無しにその集団を跳び越えヤミの前へと降り立った。
「なっ!ただの記者じゃねーだろてめえ!」
「俺はただの記者だぜ。ただ危険が付きまとうこの仕事で自分の身くらい自分で守れるくらいじゃないとな・・・って無視しないでくださいよ」
ポンッ!
いまだ自分の世界に入っていたヤミの肩に手を置いたバーブラに気付いたヤミ。
「ッ!やめっ!触らないで!」
怯えた少女のような声をあげたヤミの声を聞いたアレックスはいつの間にかバーブラの側まで駆け首根っこを掴み無理矢理引き剥がし投げ飛ばした。
「ぐへっ!」
投げ飛ばされたバーブラは無様な声をあげながら地面を転がされた。
「お前ら!ヤミ様から離れろ!ヤミ様はどうやら男が苦手なようだ距離をとれ!」
グレゴリオの声に魔法使い達は統率のとれた動きで素早く下がる。
「・・・・チンコもいだら女ってことにならないかな?」
「ナイフで切って傷口を火で焼けば問題ないだろうか?」
「クソ!なんで僕は男に生まれたんだ!母さんの馬鹿!」
ならねーよ!ただの玉無しになるだけだからな!あと誰か知らんがかーちゃんは悪くねーだろ!馬鹿だろお前ら!
「ごめん、なさい、男の人が苦手な、いえ、嫌い、じゃなくて」
「いいのですヤミ様!あのクソはあとで処刑してカラスの餌にでもしておきます!ご安心ください!」
グレゴリオが過激派と化していってる・・・・コイツとは子供の頃からの付き合いのはずだがどうやら知らない事の方が多いようだ。昔は飼っていた猫が死んだだけで3日も部屋に閉じ籠ってたくらい優しい奴だったが。
「そこの人、記者ってほんと?それって文春鳥ってやつが運んでいる新聞を書いてるとこ?」
「ええ、コイツはそこの記者です」
ヤミがバーブラの側まで歩み寄る。
バチーーーーーーーーーーン!!!!
ヤミはバーブラの胸元を掴み女性の細身のどこにそんな力がとツッコミが入るくらい軽々と成人男性を片手で持ち上げ平手打ちを浴びせる。
「アンタのところの馬鹿鳥に糞をぶっかけられたのよ。どういう教育してるの?」
「いや、鳥だから!動物だから仕方な、ぶへっ!」
バチーン!
「言い訳はいい」
バチーン!バチーン!
「ぶへっ!あひん!ヤメッて!止めてください!」
「私は肩に、友達は頭に落とされたんだけど?」
「なんとか教え込むので止めてください!」
ヤミはバーブラの胸元を掴んでいた手を離す。
「いたたた、俺こう見えても元中級冒険者だったんだけど君何者なの?」
「・・・ところで今朝の新聞書いたの貴方?」
「読んでくれたの?そりゃ光栄だね」
「いいの?王族のライオネル殿下や世間で聖女と呼ばれているナオミを批判するような記事を書いて?」
「ん?大丈夫だよ。ウチの新聞屋には強力な後ろ楯がいるのさ」
「後ろ楯?」
「そう!たとえ王族だろうと簡単には手を出すことが出来ない元大貴族!ヴィザイア公爵家だ!」
ヴィザイア公爵家!
周りがざわつく。
当然だヴィザイア公爵といえば今代の王ライブロスの兄であるライゼクス様がいるからだ。
ライゼクス様は自由奔放なお方で、護衛なしで下町をぶらついたり戦となれば最前線に立ち単身で突撃して敵大将を討ち取ったり仕事を放り出して友人である隣国の王子に知らせなしに訪れるような人であったとか。
この国では世襲制ではなく指名制だったので弟であるライブロスが王に選ばれた。
というよりライゼクスは次代の王を発表する大事な場にすら行かなかった。
ライゼクスは王になるつもりなど毛頭なかったがライブロスは王になりたがっていた。その後ライゼクスは『ヴィザイア騎士爵』に養子入りすることになる。
何故王族であるライゼクスは騎士爵入りすることになったのか?
その騎士爵は土地を有していたが痩せ細った大地に作物の育ちも悪く雨もあまり降らず魔物も多く出現しこの国で永住したくないナンバーワンの領地だった。
だがライゼクスはそれすら楽しんだ。
やがて二十年以上の月日が経ちライゼクスは周辺の領地を丸ごと呑み込み騎士爵から公爵に成り上がっていた。
一騎当千の武力を持ち多くの人を魅了するカリスマ性を持つ男。
嵐魔法使いで周辺諸国から『鬼神』と恐れられるライゼクス=ヴィザイア。
嵐魔法は風魔法と似ているが規模のレベル違う。
嵐魔法は小国を一撃で消し飛ばすほどの魔法が存在するほどの危険な属性の魔法でもある。
高い魔法力が要求され、一発放つのに一般の魔法使いが魔力枯渇で死に至るほどの魔力を使用する。
非常に広範囲高威力の魔法しかなく、規模や威力を上げることは出来るが、下げることは術者の技量に関係なく出来ない。
彼の半生をまとめた本も出されており、強力な魔物を倒す強さや彼の冒険に憧れ冒険者になるものも多く、戦や政で活躍し騎士爵から公爵家になった手腕に憧れる騎士や貴族も多い。
嫉妬や嫌悪する輩もいるが、はっきり言って今代の王ライブロスより人気がある。ライブロスよりライゼクスに味方する方が圧倒的に多いだろう無論民衆も含めて。
本人の強さもあるがヴィザイア家の兵はただの一兵でも他所の兵士の十人分に匹敵する強さを持ち、ヴィザイア家の領地には魔石油や魔鉱石や宝石の原石が大量に取れる土地を有しており(勿論全てライゼクスが発見した)他の高位貴族を上回る資産を持つ。
こんなヴィザイア公爵家の正面から挑む馬鹿などいるはずがない。
「ライオネル殿下とナオミ様がライゼクス様に書状を送ったんだよね王の許可なくね」
「なんて書いて送ったんだよ」
いつの間にか周りにいる人もバーブラの言葉に耳を傾けていた。
「・・・・ヴィザイア公爵家の全財産を王家が没収するってね。勿論領地も含まれてる爵位も没収、」
「・・・・は?いやいや大事件じゃねーか!」
アレックスは思わず大声をあげる。
「ふふふ、そうだよ。ライオネル殿下とナオミ様は正面からライゼクス様に挑んだんだよ。そして勝った・・・ライオネル殿下側がね。ライゼクス様は国外追放されたよ」
「爵位や領地もなくなって国外追放された男が後ろ楯?」
ヤミの疑問にバーブラは、
「嵐の前の静けさってね。ライゼクス様は素直に出ていったと思っているのは馬鹿なライオネル殿下と聖女(笑)ナオミ様だけだよ。あの人は必ず帰ってくるそう思っている奴等の方が多いと思うよ。第2王子は逃げ出したって未確認ではあるけど情報が入ってる。それにライゼクス様がいなくなったこの国はこれから多くの国から狙われる可能性が高いその価値はある。潤沢な資源にこの国でしか作れない魔道具の製作技術や他にもあるけど今は・・・話題の聖女、を狙ってね」
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