婚約破棄、絶望~そしてゴブリンの巣穴から始まる再生の物語

アカヤシ

文字の大きさ
15 / 29

第13話 聖女ナオミ

しおりを挟む

私の名はナオミ。
前世の記憶の断片を持つ選ばれた存在。
光魔法が使える聖女なのだ。

なのに、なのに!

私は今日の朝刊を見る。

『毒神沼蟹カルキノス討伐!』
旧ラジム村の泉に封印されていた毒神沼蟹が復活し、カルキノスの魔法によって三千人以上の被害者がでるも三人の勇者がカルキノス討伐に成功。
ラジム村の住人は泉の精霊に泉の管理者として任命された。

という記事の一面を飾っており三人の姿が描かれていた。

なんでアレックス様とグレゴリオとバーブラが一緒にいるのよ!
バーブラなんて時系列でいえば物語にでるのは数年以上先でしょ!
しかも新聞の写真を見るかぎり覚醒してるじゃない!
何聖女の私の許可なく『覚醒してる』のアレックス様!グレゴリオなんて『黒獣モード』でバーブラは『賢者の従者』になってるのよ!

そもそも失敗したんじゃないの!

1週間前に毒竜ヒュドラの討伐の失敗と新ラジム村の襲撃した報告、残りの兵士達による毒竜ヒュドラ討伐も失敗したと報告を受けたのにこの記事は何よ!

しかも聖女の私の名前は一切出てきていない。

こういう時は聖女である私に手柄を譲るものでしょ!

ライオネル様も新聞を読んで激怒し、嘘の報告をした兵士を呼び出し処罰しようとするがその前に陛下に王城へ呼び出されたので急いで王城に向かう。

謁見の間には陛下や宰相や騎士団長などの国の重鎮達がすでに集まっており、謁見の間には来客。

今話題の三人の内の一人、アレックスがいた。

「遅れて申し訳ありません陛下」

「・・・・ライオネル、今回はナオミは呼んではいない。別室に連れていかせろ」

「陛下!私を除け者にするおつもりですか!私は聖女ですよ!」

「聖女なら尚更聞かせられない。聖女は政治に関わるべきじゃない。あくまで信仰の象徴であってもらわないとな」

「聖女である私はこの国では神と同列のはずですよ!陛下!病に伏していた間に気がおかしくなったのですか?」

そもそもなんで陛下がここにいるのよ!アンタはもうすぐ死んで物語から退場するはずだったでしょ!バグってんのこのオッサン!

「ライオネル、お前には言っておかなくてはならないことがある」

私をいない者として話を進め出した。

「ライオネル、お前は儂の子ではない。ここにいるアレックスこそ儂の実の息子であり、儂はアレックスに王位を継がせる気だ。ライオネルには公爵家に婿入りしてもらう」

「・・・は?陛下?何を仰って、」

「そもそもお前の母を儂は抱いてはいない。ただ都合が良かったから公にはしなかっただけだ。お前の母を苦しませていたのは悪かった。子が出来ぬからと周囲には、」

「俺が実の息子じゃないから王位を譲れないと!」

宰相がライオネルの側までやって来て新聞を渡す。

「それは今日出る筈だったが差し押さえた、読んでみるがいい」

私もライオネル様が広げた新聞の記事を覗きこむ。

『聖女の淫らな夜の生活!!!』

私とライオネル様と人気がない路地裏での性行為の写真。

『聖女の図書館での淫靡なお勉強!!!』

宰相の息子と普段人気が余りない図書館の端で宰相の男根を私が手で扱きながらお尻の穴を舐めている写真。

『聖女と騎士の子作り鍛練!!!』

騎士団長の息子と誰もいない鍛練場で全裸で私がバックで突かれている写真。

『聖女のペットの躾』

第2王子の男根を紐で結び射精できないようにして、王子に泣きながら懇願させている写真が載っていた。

『聖女と大乱交パーティー』

挙げ句の果てに、私が前に男根の形をした玩具を入れ、お尻にライオネルの男根を突き刺され、両手で宰相と騎士団長の息子の男根を扱き、12歳の子供の第2王子の男根を舌を伸ばして舐めている5人との性行為をしている写真も。

「何ですかこの卑猥な記事は!盗撮じゃないですか!」

「つまり真実だと?」

宰相の言葉に私は内心、しまったと叫んだ。

「今更虚偽を問いませんよ。私の息子も騎士団長の息子も逃げた王子も探しだして皆、公爵家に引き取ってもらうことが決定しました。あと公爵家の領地を縮小します」

「待ちなさいよ!それはもう決定事項なの!」

聖女である私の言葉を無視する宰相。

「陛下、私が息子ではない。それは認めましょう」

ライオネルは手から血が流れ出るほど強く握り込み、唇からも血が滲み出ている。

「私が陛下に愛されていないなど承知の上でしたから。だが!そこにいるアレックスが本当に陛下の子供かは分からないではないですか!私に王位を譲れないのはいいでしょう!ただポッと出のコイツに資格があるのですか!」

ライオネルは体を震わせ目には涙が。

騎士団長がライオネルにあるアイテムを渡す。

「これは血の繋がりを確かめるためのアイテム。昔、両親の髪色とは違う子供にその子供の母の不義を疑われた時に使用して疑いを晴らしたアイテムです。陛下、」

陛下は玉座から降りライオネルの側へやってきた。

「この水晶にお二人の血を一滴ほど垂らします。血の繋がりがあれば輝き無ければ光りません」

宰相はライオネルと陛下に針を渡す。

「ライオネル様、この水晶はけして嘘をつくことなく真実だけしか表れません。本当によろしいのですか?」

二人は指に針を刺し水晶に血を垂らす。水晶の表面を滴るのではなく、まるで水面に落ちたかのように波紋が拡がり水晶の中に入っていった。

水晶は光らず変化なし。

「アレックス殿、前へ」

が、検査をする前に水晶が飛来した光魔法によって破壊された。
光魔法は全魔法属性の中で最速を誇る歴戦の騎士団長でも反応できなかったのは仕方がないだろう。

「何をするナオミ殿!もし陛下に当たっていたらどうするおつもりか!」

「こんなの無効よ!無効!聞きなさい、このアレックスと新聞に載っていたバーブラという男は天才魔導具技師よ!インチキに決まってるわ!即刻その三人を牢に入れなさい!これは神と同列である聖女としての命令よ!」

「アレックス殿が陛下の子供であるのは事実です。何故ならアレックス殿は王家の血筋のみが扱える大鎚と大盾を見事に使いこなして毒神沼蟹カルキノスを討伐しています」

「それよりナオミ殿、貴女の今しがたの行為の方が問題だろ!貴女は希少な魔導具を破壊した。陛下がすぐ近くにいるにも関わらずにだ!」

結局、不問にされたものの私達は縮小された公爵家に詰められて領地から許可なく出ることを禁じられた。

「ああもう!なんなのよ!」

私は公爵家にある自分の部屋にある調度品を壁に叩きつける。

「第1部~第2部は普通の乙女ゲームだったから死にゲーに転職した第3部~第5部以降の攻略キャラより戦闘面で劣るのは当然じゃない!アレックス?グレゴリオ?バーブラ?何で出てくるのよ!第1部の攻略キャラをコンプできたから油断してたわ!」

私はアレックス、グレゴリオ、バーブラに勝てる訳がない。

まさかストーリーを進めない内にハーレムルートを攻略したからこの世界がバグったの?

「どうする?どうすればいいのよ!もし時系列を無視してくるなら第5部以降の『魔人シリーズ』も出てくるかもしれないじゃない!」

『魔人シリーズ』とは第5部以降に登場する攻略キャラの全員が一定値より下回ると出てくる敵魔人で、一人一人の強さはラスボスに匹敵するほどの十二人の魔人集団。
条件を満たしフィールド上にいると強制イベントに入って魔人に襲われる。その戦闘イベントに負けると聖女がそいつらの巣に連れ拐われ、18禁の場合は輪姦バッドエンドになり死ぬことも許されずに犯され続け永遠に魔物を産み続ける。
しかも、通常バッドエンドや戦闘での死亡はセーブした場面やアイテムを引き継いで最初から始められるが、魔人の輪姦エンドを迎えた場合は全てのアイテムや称号は全部削除される。
ただし、攻略キャラの全員の好感度が一定値より下回った時だけに現れるストーリーには全く絡まない魔人なので好感度に気をつけていれば全く問題ないはずだった。
この魔人を倒すと1体につき1種、全ての魔人を倒すと12種のチート武器が手に入るが負けると全てを失うというリスクがあるイベントモンスターのようなものだ。このチート武器は魔人戦には使えない。
しかもこの魔人、ストーリーの進行状況によって目安の数値が変化しているようだが、その数値を下回ってさえいれば序盤にすら現れる。

この魔人は攻略キャラに負けず劣らずのイケメン集団なのだ。

魔人のイケメン集団に犯されたいがあまりに、全てを投げ出すプレイヤーもいるが後々後悔する者が続出する。
この魔人イベントは最初の頃ならアイテムは少ないから死んでもいいやと思っているとストーリーの進行状況とアイテムや称号しだいで内容が変わるのだ。

ただ殺されて奪われるか、犯され続けて生かされるか。

例え魔人を倒しても油断ができない。

その場では去るが、攻略キャラの好感度が大きく下げてしまうと町中ですら魔人が現れ『自分を負かした聖女に惚れた』と言って執拗に迫ってくる浮気イベントが起きる。
18禁なら馬車の中や路地裏や攻略キャラとの愛の巣にまで押し入ってきて、早くに攻略キャラの好感度を上昇させないと拐われて監禁バッドエンドになる仕様。

もしアレックスやグレゴリオやバーブラに鞍替えしようとしたら今まで攻略してきたキャラ達の好感度が下がってしまうだろう。すると魔人が襲ってくるかもしれない。かといってお金の使用制限を定められ、領地を縮小され商人や領民が逃げ出し続ける公爵家で大人しくするなんてナオミには我慢できない。

魔人達は基本残忍な性格で人間を家畜程度にしか思ってない描写が描かれていた。
倒せば過保護が過ぎる監禁バッドエンドで済むだろうが輪姦バッドエンドはヤバい。

ナオミは考えることを放棄して、部屋にライオネル達を呼び出し性行為に耽る。

明日になれば良い案が浮かぶかもしれないと。

ナオミはまだ諦めない。

何故ならナオミは自分が選ばれた存在だと思っているから。

こんな逆境なんて越えてみせると。

昔、最大の壁であったライオネルの婚約者を排除した時のように今度も私の思い通りになるはずと信じて。

行為を終え身体が汚れまま全裸で、五人が一つのベッドで寝る。

その日ナオミは久し振りに前世の夢を見た。

忌々しい『前世の頃いた妹』の事を思い出してしまった。

私は起き上がり四人の下半身を刺激して無理矢理起こして行為を再開させた。

先ほどの夢の内容を忘れるために。

結局ナオミは、次の日の夕方まで性行為に耽るのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...