婚約破棄、絶望~そしてゴブリンの巣穴から始まる再生の物語

アカヤシ

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第19話 美容院チェリーボムの店長、フェイ=ボマーン登場

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ずううううん!

只今王都の公園にてヤミ様絶讚落ち込み中です。ベンチにも座らず地べたに足を抱えて座り込んでいてぶつぶつと何かを呟いていた。

グレゴリオはヤミの気分転換に王都に連れて来たのだ。オマケのバーブラも一緒にであるが、ヤミに王都の最近流行しているお菓子を食べさせるために。ラジム村での甘味はあくまで果実類位のもので生クリームや砂糖菓子の類いはあまり食したことがないと言っていたので落ち込んでいるヤミを元気付けるために来たのだが王都にあるお店や露店にいたるまで買い物を拒否られたのだ。

理由はグレゴリオとヤミの黒髪が原因である。

忌み子、闇の象徴たる黒髪は田舎町では物珍しく見られるくらいだったが、王都では酷い扱いだった。いや昔はここまで酷くはなかったはずだが、突き飛ばされたり石を投げられたり店には入れず露店ですら物を買うことができないかった。挙げ句何もしてないのに通報されそうになった。

「だから言ったじゃん。寄り道しないで光竜神殿に行こうって」

「バーブラは知ってたのか?」

「あのアバズレ聖女ナオミが教会の大司教の息子を取り込んだだよ。でその息子が大司教になった。それから光魔法&聖女を称えるために闇魔法の使い手&黒髪を貶すことが多くなったね」

しかも前大司教は数日前に謎の変死、死の間際に大司教の後継者に息子を選んだんだ。

それから王都や近隣の町でナオミは聖女じゃないと噂になっていたのがパッタリと止んだ。
最近黒髪の人間の犯罪が多発している。
黒髪の犯罪者は全員が地毛ではなく染めているものだった。
おそらくナオミが自分の悪評を塗り潰すためにやらせたのだろう。
犯人の身元はスラム街の住人などが多く、犯行現場にはライオネル派の貴族の息が掛かった兵士が真っ先に駆けつけ、犯人全員が抵抗が激しかったとの理由で兵士に殺害されていた。口封じの為に殺されたのだろうか?

新たに大司教となった男は部下を使い各地にその話を広めた。

忌み子が闇の象徴たる黒髪の人が犯罪を犯して回っていると。
黒髪は犯罪者の印だと。

ここ最近の悪い出来事は全ての原因はこいつらのせいだと。

ナオミが聖女であると民達から認められたわけではないが、一時的に聖女がナオミではないという噂は上書きされた。

黒髪は元々物凄く珍しい髪色であり地毛の黒髪となると見ることなく一生を終える者がいるくらいだ。黒髪の犯罪者は全員染めていると噂を聞いており結果、染めていようが染めてないにしても関係なく黒髪は犯罪者の証みたいに皆が捉えられているのだ。

グレゴリオは王都に行くのを渋るヤミに対して、散々甘々で美味しいお菓子の話を聞かしてようやく行く気になってくれ、さあ来ましたでコレだ。

ヤミもやはり女の子、なんだかんだで甘いお菓子を期待していたのだろう。はしゃぎはしなかったが目は爛々と輝かせていたのに、今ではいつも通りの死んだ魚のような目に戻ってしまってる。

「生まれてきてごめんなさい」

なんか口走りだした!ヤバい、また『僕 』が出てきたら面倒だ。早くなんとかしないと。

先ほどバーブラを一人で買いに行かせたが、王都中に黒髪達の連れであると話が広がっていて売ってもらえなかった。

ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

「み~~~~つ~~~~け~~~~た~~~~わ~~~~よ」

ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

「ん?何かがこっちに走ってくる」

身長が180cm以上ある長身のイケメン。鮮やかな紫色のショートヘアで、上は豹柄の服に下は裾が大きく広がっている赤いズボンで厚底のブーツを履いた男が砂煙を巻き上げながらこちらに全力疾走してきた。

「そこの黒髪二人!!!動くんじゃないわよおおお!!!」

チュザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!! 

その男がグレゴリオの前で急停止して、グレゴリオの頭を両手でグワシッと掴み、ジロジロと黒髪を観察する。

『何だコイツ!手を引き剥がせない?なんつうパワーだ!アレックス並みのパワーじゃないか!』

「・・・・ちがう」

「へ?」

「天然じゃ、ないじゃない!!!!」

ブオン!!!

「どええええええええええ!!!」

ヒュウルルルルル、ボッチャアアアアアアアア!!!

謎の男に投げられたグレゴリオは天高く宙を舞い公園の噴水付きの池に落ちた。

「あら?あらあらあらあらあらあら!!!まさか!!!本当にいたなんて!!!」

謎の男がヤミに気付き、黒髪を優しく触れる。

「ちょっと何をしているんだ!」

バーブラは謎の男をヤミから引き剥がそうと肩に手をかけるが。

『ッ!動かない!ビクともしないだと!』

「ちょっと何よこの黒髪は!!!手入れがなってないじゃない!!!髪はパッサパサだし、油でギトギトじゃない!女の子なんだからもっとしっかりお手入れしなきゃダメじゃない!ウチに来なさい!ピッカピカのツヤッツヤにしてあげるわ!って肌もがさついてるじゃない!」

「・・・・僕お菓子食べたい」

『僕』が漏れちゃってる!!!

「まずは綺麗にしてからよ!さあウチのお店に来なさい!最近暇になっちゃったから時間をじっくりかけて貴女を仕上げてあ・げ・る♪その後に私が美味しいお菓子を出すお店に連れていってあげるわよ」

「美味しいお菓子!!!行く!!!」

「知らない人についていっちゃダメだよヤミさん!」

グレゴリオは池から上がりずぶ濡れのまま謎の男に問い詰める。

「ヤミ様から離れろ!変態オネエ野郎が!何勝手に話を進めている!お前は何者だ!」

「んんん?ああ!そういえばまだ自己紹介してなかったわね。私は『フェイ=ボマーン』。この王都で『チェリーボム』ってお店で美容院をやっている者よ。よろしくねん♪」
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