婚約破棄、絶望~そしてゴブリンの巣穴から始まる再生の物語

アカヤシ

文字の大きさ
23 / 29

第21話 もう一人の

しおりを挟む
「言うだけ言って帰ったけどどうする?」

「そのレオルド=ガウェインってやつに先回りして光竜神殿攻略の為のアイテムを貰うってのは?」

「貴方達も光竜神殿の攻略を目指してるの?」

「そうです。自分達はさっきの連中、いや、ナオミより先に光竜神殿を攻略する必要があるんです」

「・・・・なら奴等の開催する美少女コンテストで優勝するってのはどうかしら?こっちにはなんたってヤミちゃんが、」

「いや、ヤミ様は無理だ!って違いますよ!けしてヤミ様の美貌がナオミに劣っているというわけではなく!それに水着だと?大勢の前で下着に似た水着姿で出るなんて無理だ!というか俺がやだ!ヤミ様のあられもない姿は俺だけのだ!」

「いつからヤミさんがグレゴリオの物になったの。しかも水着がビキニタイプに勝手に選んでるし」

「音楽、ヤミ様の美声で歌われたら悶死してしまうかも!はっ!料理・・・ヤミ様の手料理!誰かに食わせるのは嫌だな」

「お~い、グレゴリオさ~ん、駄目だ妄想の世界へと旅立って行ったね」

「・・・・光竜は真っ正直から戦って勝てない相手なの?」

「う~ん、どうだろ。聖女しかクリア出来てないのとかなりの数の挑戦者がいたらしいけど返り討ちに合ってるし不確かな噂で流れた弱点にすがるくらい余裕がなかったんだろから」

・・・そうだよね。よりリスクが少ない方を選ぶのは当たり前よね。

「もし美少女コンテストが開かれるとしたら?」

「兄貴が1週間と言っていたから、多分金にものをいわせて無理矢理でも1週間後に開かせるでしょうね。まあレオルド=ガウェインを呼べるかはわかんないけどね」

「まさかヤミさんが出るの?」

「カルキノスの時、私は役立たずだった。だから今度こそ私が・・・けどその前にやることがある、いえ、1日だけ時間をちょうだい。グレゴリオ」

「はいヤミ様!!!」

「ラジム村に行くわよ、送って」

「了解しました!!!」

ヤミはラジム村にやってくるとグレゴリオを村の前に待たせて自身は聖女が清めに使った泉にやってきた。

「待ってたわよヤミちゃん」

「待ってた?」

「う~ん、そろそろ来るだろうなって思ってた」

「・・・・まあ、いいです。使わせてもらいますよ」

ヤミは服を全て脱ぎ泉の中へ入っていったはずだが気付くと異様な空間にいた。

暗い空間、地面には薄い本らしきものや用途が分からない何かが散乱しており空間の中心にはそれらが積み上がってできた山に一人の女性が胡座をかいて本を読んでいた。

顔は本で見えないが誰かはわかる。

「あれ?気付いてたんだ」

本を読んでいた女は本を床に投げ捨て私の方を見る。

「ごめんね、僕片付け苦手なんだよね。まあ汚いけどゆっくりしていってよ」

その女は私の姿をしている。が、私はわかっている。

「貴女が本物の、」

「ん~、ま~ね、僕の方が『主人格』ってやっぱり気付いてたんだ。あと泉のことも」

「泉の精霊ディーネはよく清楚さんの話を聞かせてもらってけどおしとやかに清めるってタイプじゃない。どちらかと言えば狭い泉であってもバタフライで泳ぐような破天荒タイプ。ディーネなら清めると言うより浸かりに来たとか泳ぎに来たって言いそうだから。何かあるとは思ってたしナオミを入れさせなかったのにも何か理由があるんじゃないかなと思ってたし。あとは勘かな?一つ聞いていい?何故私のままなの?貴女は自由に出てこれるはず。私を消し去ることもできるのに何故?」

「僕も悪いとは思っているんだよ『ヤミ』。僕は自分の『心』を守るために君という人格を『生み出し』嫌な事を全部押し付けて僕は引きこもってたからね。男達に犯されようともゴブリン達から犯されようとも助けなかった・・・だけど君は自力であの地獄から脱け出した。君はこの体を自由に使う権利がある。逃げ出して、殻にこもっていた、僕に自由を謳歌する権利はない。だから僕は『出る気』がなかった」

「・・・・でも」

「わかってるよ。君は『受け皿にすぎない』。僕が嫌な事から逃げ出す為に作り出した人格。だから作りが甘い。ちょっとのことで情緒が不安定になる。グレゴリオは何者かと入れ替わったと勘違いしていたようだけど、僕は一度たりともここから『出ていない』。ヤミという人格の限界が近付いている。壊れかけてバグっただけ」

「私が消えたらどうなる?」

「そりゃあ僕と混ざり合うだけで消えるわけじゃないよ。けど嫌だなあ。混ざり合うということは、結局は男達に犯されてきた記憶も経験も嫌な事も・・・・嫌だ」

「は?」

主人格である女が駄々をこねる子供のようになる。

「嫌だ!嫌だ!僕は嫌だ!僕はずっと引きこもっていたいんだ!ここで一生を過ごしたいんだああああああ!ヤミィィィィ!一生養ってよおおおお!」

「嫌な事から逃げ出した結果。後回しにしていたのを精算するだけ、行くわよ。いいから準備しなさい」

「嫌だああああああ!僕はこの腐界でニート生活を謳歌するんだあああああ!」

「出る資格がないやら言っときながら結局働きたくないだけかよ!私に・・・・腐界?」

ヤミは地面に落ちている本を一冊手に取る。するとさっきまでぼやけていた本の表紙が鮮明になる。

『俺の弟が父に寝取られ件』

「・・・・は?なにコレ?え?え?」

表紙は男同士で抱き合う絵。

「男同士で?何、胸の奥が熱くなるこの感覚は何?」

今度はページをパラパラとめくり、書いているセリフを読んでみる。

主人公の男は血の繋がった実の弟が好きになり告白。

「いやいやおかしいでしょ。相手は男なのよ。しかも弟で血の繋がってるどれだけ盛れば気が済むの」

そして二人は結ばれる。

「なんで!断りなさいよ弟!え?僕も兄さんのことがってこんな展開ありえないでしょ。兄弟愛でしょ!なんで恋仲にまで発展するのよ!でなんでいきなり脱いだの!告白して即セックスってありえないでしょ!」

そして付き合い始める兄弟。しかし兄が部活の合宿で家を空けた日、弟の部屋に忍び込む人影。静かに弟に近付き弟に襲い掛かる。弟が誰かに口を塞がれ腕を押さえつけらて目を覚ます。弟は必死に暴れるがビクともしない。体をヒモで縛られ服を切られて脱がされる。電気はついておらず真っ暗な部屋。弟は縛られた足を動かしカーテンを引きちぎる。月明かりに照らされ犯人の顔が、弟を縛り裸にした犯人は実の父親だった。

「なんでよ!なんで実の父親が襲ってるのよ!実の息子でしょ!娘ならってそれも犯罪だけども相手は男よ!目を覚ましなさい!」

『ああ、死んだ妻に似てなんて可愛いんだ○○○』

あ、お母さん似なんだね弟君。ていうか奥さん死んでたんだ。

父は息子の胸を撫で回し乳首を指でつまみ愛撫していき、固くなった男根を息子の口に・・・・

「いやいや、犯罪だよね!兄弟同士なら1000歩後退して若者の過ちでいいけどお父さんはダメでしょ。大人でしょ!」

『兄弟でイチャイチャしやがって嫉妬してしまうだろ』

「知ってたんかあああああい!止めなよお父さん!」

ヤミはツッコミを入れながら食い入るように読んでいく。

『ただいま~って、なんだよコレ』

合宿から帰って来た兄が玄関を開けると玄関や廊下が精液や尿まみれになっており、使用された感がある大人の玩具が転がっていた。

『おお、帰ったか○○』

『親父なんだよコレ・・・・え?○○○』

リビングから父の声が聞こえたので向かうとそこにはソファーに座る全裸の父に、父のアソコを頭を前後に動かししゃぶっている弟がいた。弟は女性物の下着を身に付け、その下着には使用済みで精液が入ったコンドームを数十結びつけ、弟はコンドームを着けた自分の男根を両手でしごいていた。

『ほれ受けとれ』

父が兄の足元に袋を投げてきた。

『その中にお前の新しい住む場所の住所と鍵や通帳や印鑑などが入ってるからさっさと俺と○○○の愛の巣から出ていけ。お前の荷物はもう全部送っておいた。金はその袋に入ってる通帳に、足りなければ振り込んでやるから二度とこの家に、○○○に近付くなよ』

あまりのショックに立ち尽くす兄。

『・・・・何をしているさっさと、いや仕方がない』

父は弟を抱えて兄に見えるようにして弟に男根を挿入する。すると途端に弟がいやらしい喘ぎ声を出す。

『ほら教えてやれ○○○。お前は誰の物かをな!』

『兄さんごめんね!僕はお父さんの物になりましたあ、あん!兄さんより固くて大きい大人ので兄さんへの愛は粉々に砕けちりました!あん!お父さん!気持ちいいよ!兄さんより気持ちいい!』

『わかっただろ?だけどお前も私の息子だ。最後に一回くらいはさせてやってもいいが?』

『え~、嫌だよ僕、兄さんのされるの。だけどお父さんがどうしてもっていうならするけど』

『ははは、冗談だよ本気にするな。アイツに指一本触れさせるわけがないだろ私が?まあそういうわけだ。さっさと出ていけ』

『兄さんバイバ~イ♪』

『う、うあああああああああああ!!!!』

兄は逃げるように靴も履かずに全力で駆けていった。

数年後、

父は病によりこの世を去る。父にお供えをして手を合わせる○○○。

『よお、○○○久しぶり』

『え?兄さん、ッ!』

そこに現れたのは、この数年で音信不通になっていた兄だった。兄は後ろから弟に声をかけ、振り向く前に弟の頭を掴み父の墓にぶつけ押さえつけた。

『兄さん、痛い!やめっ!』

『あいつはくたばったんだ!もうあいつはいない!』

兄は弟のズボンをずらし無理矢理後ろの穴へと挿入する。

『痛い!痛い!やめてよ!兄さん!ダメだよ!人が、人が来るよ!』

『嘘つけ!お前は親父とも外で、人混みの中でもやってただろうがあ!』

二時間後、

『はあ、はあ、はあ、ざまあみろ、親父の野郎、てめえの大切な息子を壊してやったぜ』

父の墓の前に身体中精液まみれにされ、頭から血を流し地面に倒れ込んでいる弟。息はまだあり死んでいないようだ。そのまわりには大量の写真がばらまかれていた。父と弟の淫行現場の写真だ。

『お前の仕事先や住んでいる近所や親戚、友人にいたるまで関係者に写真や動画を送ってやった。あとネットにモザイクなし実名住所付きで載せといたぜ。じゃあな!あは、あははははははははははははははははは!!!!』

この日を境に兄を目撃したものはいない。

「・・・・重過ぎるわ!!!」

ヤミは地面に本を叩きつける。地面に散らばっている本をよく見るとそのほとんどが卑猥なエロ本だった。

「今すぐにここからでるわよ!」

「嫌だ、嫌だああああああああああああ!!」

『レヴィアタン(紅海の怪物)』

駄々をこねていた女が急に光だし姿を変え巨大化、巨大な翼が生えた蛇に酷似した竜の怪物へと姿を変える。

「僕に勝てたら大人しく出ていくよ。勝てたらの話だけどね!」

消えないとは聞いたが万が一混ざらず消えてしまう場合、私が消える可能性の方が高いのに主人格の方が拒否するなんて。

「一緒に出てもらうわよ。グレゴリオもアレックスもバーブラも私が巻き込んでしまった。私が途中退場は許されない。それに・・・・私を、好きだと言ってくれたグレゴリオに答えてやりたいし。今の私じゃ男に触るのも困難だからな」

ヤミは闇魔法を発動する。

十秒後、

「・・・・僕に勝てるわけないじゃん。僕が主人格なんだから」

竜の口から放たれた爆炎にのまれ一撃で吹き飛び気絶するヤミ。

「レヴィアタン、紅海の怪物の鱗は物理攻撃も魔法攻撃も反射する。光竜なんてはなから敵じゃない。ヤミの闇魔法や風魔法で僕に勝つなんて無理、方法なんて限られてるよ。見せてよ課金スキルを。たしかにあれは僕じゃないと上手くは使えないだろうね。使いこなすには僕を取り込む必要がある。あれは、おっと教えすぎはよくないかな?どう諦める?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

処理中です...