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プロローグ
第2話 灯士夜子 その1
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とある高校の廊下
「おい、あれって!」
「馬鹿目を合わせるな絡まれるぞ!」
昼休みに廊下でだべっていた男子生徒の前を通りすぎる一人の女生徒。
しかしその女生徒は普通の生徒とは違っていた。
校則違反の塊である。
髪は真っ赤に染めて、女生徒でありながら制服は学ラン、しかも改造している。
上は短ラン下はボンタンしかも色は赤色。
ベルトの左右にはアクセサリーですよと言わんばかりにメリケンサックをつけていた。
耳には赤色の水晶がついたピアスをつけている。
が、教師陣は一切彼女を注意することはなかった。
『一学期期末試験順位』
一位 灯士 夜子 500点
二位 ■■ ■■ 468点
三位 ■■ ■■ 458点
廊下に張り出された一枚の張り紙が物語る。
「夜子満点かよ!スゲーな!」
張り紙を見ていた夜子の隣に女生徒が一人近づいてきた。
髪は茶髪にサイドポニーで制服は女生徒用だがスカートは校則で決められた丈よりかなり上げてチラチラと下着が見えてしまいそうなくらいに。
この女生徒の名前は猿飛雛(さるとびひな)。
勿論この女の子も不良であり灯士夜子とは幼馴染である。喧嘩も強くスピードで撹乱しつつアクロバティックな攻撃繰り出すスタイル。パンツをチラ見させ油断を誘ったりするぞ。
この学校の喧嘩ナンバー2の実力の持ち主。
「ヒナか、一年の一学期期末なんて授業聞いときゃ普通に取れるだろ?」
「うわっ!できる子の理論だろ!英語や数学とかいらねーだろ生きてくのによー、足算引算の算数だけ充分だろ?海外に行かなきゃいいじゃん!」
「ろくな職につけないぞお前、けどお前が一番点数がとれてる理科なんて一番いらなくね?」
「・・・・確かに!こうなったら将来の夢はお嫁さんだな!誰かこのプリティーヒナをもらっておくれ!」
「それよりなんか用があったんじゃねーのか?」
「そうだった!とりあえずいつもの空き教室に行こうぜ!」
そして二人は空き教室にやってきた。そこには三十人の女生徒が集まっていた。
この三十人こそ灯士夜子の率いる『クリムゾンナイト』のメンバーである。彼女達全員が格闘技や護身術を嗜み並外れた運動能力とセンスを持った女子達で並みの男では歯が立たないくらいの実力がある。
「「「「「お疲れ様です夜子さん!!!」」」」」
「おう、お疲れさん。で?何があった?」
「はい、昨日の夜に繁華街で『イエローシャーク』の奴等が暴れ回ったらしいんですが相手は『ブラックドラゴン』の残党だったようです」
「ブラックドラゴン、か」
この町に住んでいる不良で『ブラックドラゴン』の名前を知らない奴等はいない。
奴等に境界線なんて存在しない。
不良だろうが一般人だろうが関係なく襲う。
特にブラックドラゴンのリーダーと副リーダーの九頭神兄弟はヤバかった。
兄の九頭神外道(くずがみげどう)は、窃盗・暴行・レイプ・薬売買・詐欺などの犯罪に手を染めヤクザとも繋がりがあったとか。殺し以外の大抵の犯罪はやってるんじゃと噂されていた男だ。
弟の九頭神悪徳(くずがみあくと)も兄に劣らないクズ野郎で交番に複数人で襲い警官をボコったとかパトカーに火をつけたとか通っている学校の女生徒や女教師を脅して売春や美人局をやらせたり噂は酷いものだった。
だが県外からこの町に越してきたばかりの頃の男気先輩が九頭神兄弟を倒し二人は現在兄は刑務所、弟は年少に入ってるはず。
「なんで今さらブラックドラゴンの残党狩りなんてしてんだ?」
「多分あの噂のせいだな。『九頭神の妹』がこの町に来るって噂」
「は?妹なんていたのかよ」
「九頭神の両親は離婚していて父親の方に兄弟が母親の方に妹が引き取られたらしいんだけど・・・」
「ん?どうした?」
「人を殺したらしいんだよそいつ」
「そんなヤベエ奴なのか?」
「噂じゃ正当防衛だったらしいけど・・・本当かどうかはわかんないけどな」
「ふうん、噂、ね。噂の出所は?」
「夜子の察しているとおりだよ。噂の出所はブラックドラゴンの残党だった。多分その妹を担いでまたブラックドラゴンを再結成しようとしてるんだよ。九頭神の傘下にいて散々甘い汁吸ってた奴等がまともに職についてるわけないっしょ。ほとんどが更正出来ずにプー太郎になってるし、もし警察沙汰になったら切り捨てればいいと思ってるんじゃない?妹は人を殺してるんだし」
「気に入らねえ奴ならブッ飛ばせばいい。それより気に食わねえのは鮫島だ。奴が町を守ってるみたいでよ」
「どうする夜子?」
「俺らも残党狩りするぞ。私は男気先輩のご恩ある喫茶店のバイトは絶対に休めねえからな。アジトの喫茶に20時集合でバイト終わりの21時30分くらいから残党狩りに出るぞ。ヒナはそれまでに残党の居場所を割り出しとけ」
「はいはい、了解!」
「いいか!鮫島希色にこの町の女王気取りを許すんじゃねえぞ!奴等とカチ会ったら構わねえからやっちまえ!負けんじゃねえぞ!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!!」」」」」
「そうだヒナ、九頭神の妹の名前はなんていうんだ?」
「黒神泡姫(くろかみありえる)だそうです」
「泡姫とか可哀想な名前だな。キラキラネームかよ」
「そうだな、しかも親には意味も分からずつけられたんかな?中年親父は喜びそうな名前だけどな(笑)」
「覚えとくぜ黒神泡姫、この町に来たら俺が仕留めてやるぜ」
キーン、コーン、カーン、コーン!
そして時間が過ぎ、学校が終わり灯士夜子はバイトまではまだ時間があるため帰宅した。
夜子が自宅の玄関を開けるとリビングの方から女の喘ぎ声が聞こえてきた。
夜子はその声を無視してリビングを通りすぎようとするが、
「あら夜子ちゃん、おかえり」
二人の男と体を重ねる声の主の女が夜子に気づき声をかけてきた。
「家に男連れ込むなっつたよな何度もな、クソアマ」
「お姉ちゃんにクソアマは酷くない?」
「義理だろうが!」
「まあまあ、落ち着きなよ妹ちゃん」
夜子の義理の姉を抱いていた男が全裸のまま夜子に近付いてきた。
「そのカッコ、コスプレっしょ可愛い可愛い」
「はあ?」
「オタク女子ってやつ?妹ちゃんも俺らと一緒に楽しもうぜ」
「そんな格好で近付いて来てんじゃねえ殺すぞ?」
「お姉さんもいいけど妹ちゃんみたいに気の強そうな子をチンコでアンアン喘がせるのも好きなんだよね。あれ?ひょっとして処女?勿体無いよこんなに可愛いのに」
「マジで!姉はヤリマンなのに妹が処女とかそそるわ~姉妹丼しようぜ!姉妹丼!こっちにこいよ!」
「ちょっとその言い方は酷くない?夜子ちゃん、その歳で処女とかダサくない?私なんて中1春には卒業してたし~」
「うるせえ、てめえには関係ないだろ、とにかく男連れて家から消えろ掃除してからな」
夜子は自分の部屋に行こうとするが、
「おいおい優しくしてやりゃ調子に乗りやがって!おら!犯してやるからこっちこいよ!」
男が夜子に掴もうと腕を伸ばすが、夜子が先に男の顔面に拳を叩き込み男が吹き飛ぶ。
「ぐあっ!てめ、ごあっ、やめ、やめろ!」
夜子は倒れた男に馬乗りになりベルトにつけていたメリケンサックを強引に外し装着すると男の顔面に加減せず振り下ろす。
暫く殴り続けると男が動かなくなった。息はしているので死んではいない。
夜子は義理の姉と男二人を裸のまま玄関の外に放り出し、情けでリビングに散らばっていた服を連中に投げ渡してやった。
夜子はリビングの惨状を舌打ちしながら仕方なく片付けることにした。
夜子を産んだ母親は五年前に他界し、それから半年も経たないうちに父親は再婚した。
再婚相手には子供が二人いて、さっきの女とあと現在中学二年生になった弟がいるが、弟の方はこの家にはほとんど近寄らない。
弟も姉の事が嫌いらしく一緒の空気を吸いたくないと友達の家に泊まったりインターネットカフェで毎日を過ごしてる。
俺とは電話でよく話すし新しい母親と姉は嫌いだが、弟とは仲が良いとまでは言わないがそれなりの仲だ。
父親と再婚した女は同じ会社に勤めており、二人ともよく一緒に長期出張が多く中々帰ってこない。
というより俺は帰って来てほしくなかった。
「考えるのやめよ気分が下がる」
夜子は自分の部屋へ入ると学ランを脱ぎ捨て下着姿でベッドにダイブして枕元に置いてある大切なヌイグルミの真っ赤なライオン(マッカーサー君)を抱き締める。
このヌイグルミは貰い物だ。
『男気先輩にもらった大切なヌイグルミ』
俺は二年前まで喧嘩をするタイプの人間ではなかった。
二年前、『私』は家出をした。
突発的に家を出たため財布や携帯を家に忘れるという馬鹿をやらかしてしまい仕方なく暇をつぶせないか何日間か町を徘徊していた。
俺は中学時代よく学校をサボる生徒だったため学校には放置されてたため、親には連絡されずにバレることはなかった。
お腹を盛大に鳴らしてお腹すいたのを誤魔化す為に、夜に公園に設置されている水道でゴクゴクと大量の水を飲んでいると、うすらハゲの中年リーマンが話かけてきた。
「ね、ね、ね、君お金に困ってるんじゃないかな?セックスさせてくれるなら五万払うよ?」
「あっちいってください」
「そんなつれない事言わないで、ね?別に『生で』させてって言ってるわけじゃないんだし」
「ちょっと触らないで」
「ちょっ!叫ぶなよ!」
うすらハゲたリーマンは私の体を掴み口に手を押し当て声をあげれないようにする。
「ああ、くそ!くそ!こっちに来い!」
リーマンはそのまま公園の男子トイレに押し込み自分のしていたネクタイで私の手を後ろにキツく絞めてきた。
「誰にも言わないから離して!」
「そんなの信用できるか!そんな事言って後から警察にチクる気だろ!ああ!こんな事バレたら会社をクビになる!妻や子供達にバレたら、」
「なおさら離してください!絶対誰にも言いませんから!」
「黙れ!」
バキッ!
夜子は初めて殴られ痛みのあまり泣いてしまう。
「黙れっつたよな!もうこうなったら誰にも言えないように、お前の恥ずかしい画像や動画を撮らせてもらうぞ。バラしたらそれをネット上にばらまいてやるからな」
ガチャン!
リーマンは体を膠着させる。
どうやら個室トイレに人が入っていたらしく中から人が出てきた。
赤色の変わった学ランを着ていて、赤いヘッドフォンを装着していてそのヘッドフォンから洋楽が漏れている。腰まである髪を三つ編みに結び真っ赤に染めている背の低めの男が。
「ウンコひっこんじまったよたくっ」
「くそ!人がいたのかよ!おいガキ!痛い目、」
赤い学ランの男がこっちに気付いたのかヘッドフォンを外す。
「ああん?・・・おい、女を泣かしてしかも縛ってる、ただごとじゃねえな」
赤い男がリーマンを鋭い眼光で睨んできたのに怯みリーマンは逃げ出した。
「たくっ、おい大丈夫か?」
赤い男が夜子の縛っていたネクタイをほどき夜子に話しかけてきた。
夜子はその男に抱きつき泣き出した。
「怖かったんだな?もう大丈夫だ悪いオッサンは追い払ったから泣くなよ」
「怖かっ、初めて男の人に、殴られて痛くて、」
「そりゃひでえな、大丈夫だよ。どうやら携帯電話を落としていったようだし警察には俺が連絡しといてやるから、嬢ちゃんは今日は帰って、」
ぎゅっと抱き締める力を強める夜子。
「ん?何?家に帰りたくない?何で?え?家に義理の姉が連れ込んだ男が居座っていて怖くて帰れない?はあ、仕方ないな」
赤い男に連れられて来たのは喫茶店だった。
「ここ俺の家な、もう閉店時間過ぎてるけどキッチン使って何か作ってやるよ。その様子だと腹減ってんだろ?まず腹ごしらえをして、」
喫茶店に入ると、
「ごめんなさいもう閉店・・・いっぽちゃん?顔を腫れてる女の子?目には涙の後、」
「え?これは色々事情が、」
赤い男が事情を説明する前に店員らしき女性が泣き出した。
「こんな可愛い女の子を泣かせるような子に育てた覚えはないのにい~!こんな酷い事する子じゃなかったのに~!うえええええん!いっぽちゃんが不良になっちゃたああああ!」
「母さん誤解だから!俺じゃないから!俺助けたから!」
「あの、本当です。この人に助けてもらって」
それから男はキッチンに入り、卵でとじられたおじややぬるめのうどん等を作って夜子の座っている席に持ってきた。
「殴られて口の中を切ってるだろ?これなら大丈夫だろうから食いな。足りなかったら追加で作ってやるから。勿論金とかいいから気にせずガンガン食いな」
久しぶりの手料理を食べ、美味しかったので夢中で食べていると、
「俺の名前は男気一本、さっきのは男気一子(かずこ)俺の母親だ。で?お前名前は?」
「・・・灯士夜子(あかしよるこ)」
「そうか夜子か・・・まだ家に帰りたくないって思ってるか?お腹も満たされて時間も経ったし落ち着いてきたろ?家に帰るなら送ってやるよ」
夜子は目を反らし黙りこんでしまった。
「はあ、どうすっか。お前の家に居座ってるのが他人ならぶっ飛ばせばいいんだが姉の彼氏じゃな」
「ならウチで預からない?」
「はあ?母さんいきなり話しに入ってきて何言ってんの?」
「あの!私なんでもしますから暫くおいてください!お願いします!」
「じゃあ、ウチの喫茶店で住み込みのアルバイトしない?ウチは朝から夕方は地元の常連客中心でね、夕方から閉店までの時間けっこう人が入るのよね。私はのんびりしたいのだけど」
「気にするなウチってちょっとした金持ちなんだよ。この喫茶店も母さんが趣味で始めただけだから価格も利益もそこまで求めてないからかなり安めに設定されてるからな。まあそれを狙って飯時に混じまうんだかな。俺も手伝うが給士係が一人は欲しいなーて思ってたんだよ」
こうして夜子は助けてもらった男気一本の家の喫茶店で住み込みでバイトすることになった。
「おい、あれって!」
「馬鹿目を合わせるな絡まれるぞ!」
昼休みに廊下でだべっていた男子生徒の前を通りすぎる一人の女生徒。
しかしその女生徒は普通の生徒とは違っていた。
校則違反の塊である。
髪は真っ赤に染めて、女生徒でありながら制服は学ラン、しかも改造している。
上は短ラン下はボンタンしかも色は赤色。
ベルトの左右にはアクセサリーですよと言わんばかりにメリケンサックをつけていた。
耳には赤色の水晶がついたピアスをつけている。
が、教師陣は一切彼女を注意することはなかった。
『一学期期末試験順位』
一位 灯士 夜子 500点
二位 ■■ ■■ 468点
三位 ■■ ■■ 458点
廊下に張り出された一枚の張り紙が物語る。
「夜子満点かよ!スゲーな!」
張り紙を見ていた夜子の隣に女生徒が一人近づいてきた。
髪は茶髪にサイドポニーで制服は女生徒用だがスカートは校則で決められた丈よりかなり上げてチラチラと下着が見えてしまいそうなくらいに。
この女生徒の名前は猿飛雛(さるとびひな)。
勿論この女の子も不良であり灯士夜子とは幼馴染である。喧嘩も強くスピードで撹乱しつつアクロバティックな攻撃繰り出すスタイル。パンツをチラ見させ油断を誘ったりするぞ。
この学校の喧嘩ナンバー2の実力の持ち主。
「ヒナか、一年の一学期期末なんて授業聞いときゃ普通に取れるだろ?」
「うわっ!できる子の理論だろ!英語や数学とかいらねーだろ生きてくのによー、足算引算の算数だけ充分だろ?海外に行かなきゃいいじゃん!」
「ろくな職につけないぞお前、けどお前が一番点数がとれてる理科なんて一番いらなくね?」
「・・・・確かに!こうなったら将来の夢はお嫁さんだな!誰かこのプリティーヒナをもらっておくれ!」
「それよりなんか用があったんじゃねーのか?」
「そうだった!とりあえずいつもの空き教室に行こうぜ!」
そして二人は空き教室にやってきた。そこには三十人の女生徒が集まっていた。
この三十人こそ灯士夜子の率いる『クリムゾンナイト』のメンバーである。彼女達全員が格闘技や護身術を嗜み並外れた運動能力とセンスを持った女子達で並みの男では歯が立たないくらいの実力がある。
「「「「「お疲れ様です夜子さん!!!」」」」」
「おう、お疲れさん。で?何があった?」
「はい、昨日の夜に繁華街で『イエローシャーク』の奴等が暴れ回ったらしいんですが相手は『ブラックドラゴン』の残党だったようです」
「ブラックドラゴン、か」
この町に住んでいる不良で『ブラックドラゴン』の名前を知らない奴等はいない。
奴等に境界線なんて存在しない。
不良だろうが一般人だろうが関係なく襲う。
特にブラックドラゴンのリーダーと副リーダーの九頭神兄弟はヤバかった。
兄の九頭神外道(くずがみげどう)は、窃盗・暴行・レイプ・薬売買・詐欺などの犯罪に手を染めヤクザとも繋がりがあったとか。殺し以外の大抵の犯罪はやってるんじゃと噂されていた男だ。
弟の九頭神悪徳(くずがみあくと)も兄に劣らないクズ野郎で交番に複数人で襲い警官をボコったとかパトカーに火をつけたとか通っている学校の女生徒や女教師を脅して売春や美人局をやらせたり噂は酷いものだった。
だが県外からこの町に越してきたばかりの頃の男気先輩が九頭神兄弟を倒し二人は現在兄は刑務所、弟は年少に入ってるはず。
「なんで今さらブラックドラゴンの残党狩りなんてしてんだ?」
「多分あの噂のせいだな。『九頭神の妹』がこの町に来るって噂」
「は?妹なんていたのかよ」
「九頭神の両親は離婚していて父親の方に兄弟が母親の方に妹が引き取られたらしいんだけど・・・」
「ん?どうした?」
「人を殺したらしいんだよそいつ」
「そんなヤベエ奴なのか?」
「噂じゃ正当防衛だったらしいけど・・・本当かどうかはわかんないけどな」
「ふうん、噂、ね。噂の出所は?」
「夜子の察しているとおりだよ。噂の出所はブラックドラゴンの残党だった。多分その妹を担いでまたブラックドラゴンを再結成しようとしてるんだよ。九頭神の傘下にいて散々甘い汁吸ってた奴等がまともに職についてるわけないっしょ。ほとんどが更正出来ずにプー太郎になってるし、もし警察沙汰になったら切り捨てればいいと思ってるんじゃない?妹は人を殺してるんだし」
「気に入らねえ奴ならブッ飛ばせばいい。それより気に食わねえのは鮫島だ。奴が町を守ってるみたいでよ」
「どうする夜子?」
「俺らも残党狩りするぞ。私は男気先輩のご恩ある喫茶店のバイトは絶対に休めねえからな。アジトの喫茶に20時集合でバイト終わりの21時30分くらいから残党狩りに出るぞ。ヒナはそれまでに残党の居場所を割り出しとけ」
「はいはい、了解!」
「いいか!鮫島希色にこの町の女王気取りを許すんじゃねえぞ!奴等とカチ会ったら構わねえからやっちまえ!負けんじゃねえぞ!」
「「「「「おおおおおおおおおお!!!」」」」」
「そうだヒナ、九頭神の妹の名前はなんていうんだ?」
「黒神泡姫(くろかみありえる)だそうです」
「泡姫とか可哀想な名前だな。キラキラネームかよ」
「そうだな、しかも親には意味も分からずつけられたんかな?中年親父は喜びそうな名前だけどな(笑)」
「覚えとくぜ黒神泡姫、この町に来たら俺が仕留めてやるぜ」
キーン、コーン、カーン、コーン!
そして時間が過ぎ、学校が終わり灯士夜子はバイトまではまだ時間があるため帰宅した。
夜子が自宅の玄関を開けるとリビングの方から女の喘ぎ声が聞こえてきた。
夜子はその声を無視してリビングを通りすぎようとするが、
「あら夜子ちゃん、おかえり」
二人の男と体を重ねる声の主の女が夜子に気づき声をかけてきた。
「家に男連れ込むなっつたよな何度もな、クソアマ」
「お姉ちゃんにクソアマは酷くない?」
「義理だろうが!」
「まあまあ、落ち着きなよ妹ちゃん」
夜子の義理の姉を抱いていた男が全裸のまま夜子に近付いてきた。
「そのカッコ、コスプレっしょ可愛い可愛い」
「はあ?」
「オタク女子ってやつ?妹ちゃんも俺らと一緒に楽しもうぜ」
「そんな格好で近付いて来てんじゃねえ殺すぞ?」
「お姉さんもいいけど妹ちゃんみたいに気の強そうな子をチンコでアンアン喘がせるのも好きなんだよね。あれ?ひょっとして処女?勿体無いよこんなに可愛いのに」
「マジで!姉はヤリマンなのに妹が処女とかそそるわ~姉妹丼しようぜ!姉妹丼!こっちにこいよ!」
「ちょっとその言い方は酷くない?夜子ちゃん、その歳で処女とかダサくない?私なんて中1春には卒業してたし~」
「うるせえ、てめえには関係ないだろ、とにかく男連れて家から消えろ掃除してからな」
夜子は自分の部屋に行こうとするが、
「おいおい優しくしてやりゃ調子に乗りやがって!おら!犯してやるからこっちこいよ!」
男が夜子に掴もうと腕を伸ばすが、夜子が先に男の顔面に拳を叩き込み男が吹き飛ぶ。
「ぐあっ!てめ、ごあっ、やめ、やめろ!」
夜子は倒れた男に馬乗りになりベルトにつけていたメリケンサックを強引に外し装着すると男の顔面に加減せず振り下ろす。
暫く殴り続けると男が動かなくなった。息はしているので死んではいない。
夜子は義理の姉と男二人を裸のまま玄関の外に放り出し、情けでリビングに散らばっていた服を連中に投げ渡してやった。
夜子はリビングの惨状を舌打ちしながら仕方なく片付けることにした。
夜子を産んだ母親は五年前に他界し、それから半年も経たないうちに父親は再婚した。
再婚相手には子供が二人いて、さっきの女とあと現在中学二年生になった弟がいるが、弟の方はこの家にはほとんど近寄らない。
弟も姉の事が嫌いらしく一緒の空気を吸いたくないと友達の家に泊まったりインターネットカフェで毎日を過ごしてる。
俺とは電話でよく話すし新しい母親と姉は嫌いだが、弟とは仲が良いとまでは言わないがそれなりの仲だ。
父親と再婚した女は同じ会社に勤めており、二人ともよく一緒に長期出張が多く中々帰ってこない。
というより俺は帰って来てほしくなかった。
「考えるのやめよ気分が下がる」
夜子は自分の部屋へ入ると学ランを脱ぎ捨て下着姿でベッドにダイブして枕元に置いてある大切なヌイグルミの真っ赤なライオン(マッカーサー君)を抱き締める。
このヌイグルミは貰い物だ。
『男気先輩にもらった大切なヌイグルミ』
俺は二年前まで喧嘩をするタイプの人間ではなかった。
二年前、『私』は家出をした。
突発的に家を出たため財布や携帯を家に忘れるという馬鹿をやらかしてしまい仕方なく暇をつぶせないか何日間か町を徘徊していた。
俺は中学時代よく学校をサボる生徒だったため学校には放置されてたため、親には連絡されずにバレることはなかった。
お腹を盛大に鳴らしてお腹すいたのを誤魔化す為に、夜に公園に設置されている水道でゴクゴクと大量の水を飲んでいると、うすらハゲの中年リーマンが話かけてきた。
「ね、ね、ね、君お金に困ってるんじゃないかな?セックスさせてくれるなら五万払うよ?」
「あっちいってください」
「そんなつれない事言わないで、ね?別に『生で』させてって言ってるわけじゃないんだし」
「ちょっと触らないで」
「ちょっ!叫ぶなよ!」
うすらハゲたリーマンは私の体を掴み口に手を押し当て声をあげれないようにする。
「ああ、くそ!くそ!こっちに来い!」
リーマンはそのまま公園の男子トイレに押し込み自分のしていたネクタイで私の手を後ろにキツく絞めてきた。
「誰にも言わないから離して!」
「そんなの信用できるか!そんな事言って後から警察にチクる気だろ!ああ!こんな事バレたら会社をクビになる!妻や子供達にバレたら、」
「なおさら離してください!絶対誰にも言いませんから!」
「黙れ!」
バキッ!
夜子は初めて殴られ痛みのあまり泣いてしまう。
「黙れっつたよな!もうこうなったら誰にも言えないように、お前の恥ずかしい画像や動画を撮らせてもらうぞ。バラしたらそれをネット上にばらまいてやるからな」
ガチャン!
リーマンは体を膠着させる。
どうやら個室トイレに人が入っていたらしく中から人が出てきた。
赤色の変わった学ランを着ていて、赤いヘッドフォンを装着していてそのヘッドフォンから洋楽が漏れている。腰まである髪を三つ編みに結び真っ赤に染めている背の低めの男が。
「ウンコひっこんじまったよたくっ」
「くそ!人がいたのかよ!おいガキ!痛い目、」
赤い学ランの男がこっちに気付いたのかヘッドフォンを外す。
「ああん?・・・おい、女を泣かしてしかも縛ってる、ただごとじゃねえな」
赤い男がリーマンを鋭い眼光で睨んできたのに怯みリーマンは逃げ出した。
「たくっ、おい大丈夫か?」
赤い男が夜子の縛っていたネクタイをほどき夜子に話しかけてきた。
夜子はその男に抱きつき泣き出した。
「怖かったんだな?もう大丈夫だ悪いオッサンは追い払ったから泣くなよ」
「怖かっ、初めて男の人に、殴られて痛くて、」
「そりゃひでえな、大丈夫だよ。どうやら携帯電話を落としていったようだし警察には俺が連絡しといてやるから、嬢ちゃんは今日は帰って、」
ぎゅっと抱き締める力を強める夜子。
「ん?何?家に帰りたくない?何で?え?家に義理の姉が連れ込んだ男が居座っていて怖くて帰れない?はあ、仕方ないな」
赤い男に連れられて来たのは喫茶店だった。
「ここ俺の家な、もう閉店時間過ぎてるけどキッチン使って何か作ってやるよ。その様子だと腹減ってんだろ?まず腹ごしらえをして、」
喫茶店に入ると、
「ごめんなさいもう閉店・・・いっぽちゃん?顔を腫れてる女の子?目には涙の後、」
「え?これは色々事情が、」
赤い男が事情を説明する前に店員らしき女性が泣き出した。
「こんな可愛い女の子を泣かせるような子に育てた覚えはないのにい~!こんな酷い事する子じゃなかったのに~!うえええええん!いっぽちゃんが不良になっちゃたああああ!」
「母さん誤解だから!俺じゃないから!俺助けたから!」
「あの、本当です。この人に助けてもらって」
それから男はキッチンに入り、卵でとじられたおじややぬるめのうどん等を作って夜子の座っている席に持ってきた。
「殴られて口の中を切ってるだろ?これなら大丈夫だろうから食いな。足りなかったら追加で作ってやるから。勿論金とかいいから気にせずガンガン食いな」
久しぶりの手料理を食べ、美味しかったので夢中で食べていると、
「俺の名前は男気一本、さっきのは男気一子(かずこ)俺の母親だ。で?お前名前は?」
「・・・灯士夜子(あかしよるこ)」
「そうか夜子か・・・まだ家に帰りたくないって思ってるか?お腹も満たされて時間も経ったし落ち着いてきたろ?家に帰るなら送ってやるよ」
夜子は目を反らし黙りこんでしまった。
「はあ、どうすっか。お前の家に居座ってるのが他人ならぶっ飛ばせばいいんだが姉の彼氏じゃな」
「ならウチで預からない?」
「はあ?母さんいきなり話しに入ってきて何言ってんの?」
「あの!私なんでもしますから暫くおいてください!お願いします!」
「じゃあ、ウチの喫茶店で住み込みのアルバイトしない?ウチは朝から夕方は地元の常連客中心でね、夕方から閉店までの時間けっこう人が入るのよね。私はのんびりしたいのだけど」
「気にするなウチってちょっとした金持ちなんだよ。この喫茶店も母さんが趣味で始めただけだから価格も利益もそこまで求めてないからかなり安めに設定されてるからな。まあそれを狙って飯時に混じまうんだかな。俺も手伝うが給士係が一人は欲しいなーて思ってたんだよ」
こうして夜子は助けてもらった男気一本の家の喫茶店で住み込みでバイトすることになった。
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私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
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