久し振りに実家の喫茶店に帰って来たら不良(レディース)のたまり場になっていた件

アカヤシ

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プロローグ

第4話 灯士夜子 その3

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「お前らもいい加減にやめさせろ!!!」

「男気さん・・・俺達は頭(ヘッド)について行くだけです」

「男気!!!よそのチームのてめえには関係ないことだろうが!引っ込んでろ!それとも決着をつけるか!ブルーウェイVS『レッドナイト』でよ!!!」

「はあ、余計な奴もいるしパトロールの途中だから。今日は引くよ。じゃあね」

そういうと三人組は私達を横を通り過ぎていった。

「・・・帰るぞ、夜子」

家に帰りつくと部屋へと案内された。

「そういえば部屋に入れるのは初めてだったな」

ごめんなさい、さっき侵入しました!

今までは一子さんに言われたから部屋には近付かなかった。

『いい?夜子ちゃん、男の子の部屋はね、魔窟なの。年頃の男の子の部屋はとくにね。例え入る用事があっても枕の下とかベッドの下とか本棚の奥とかは見ちゃ駄目よ!もしね!もし万が一、『何か』あっても見て見ぬフリをしてあげるのよ!ゴミ箱とか漁っちゃ駄目よ!何が出てくるかわかんないから!』

「まあ、入れよ」

「お、おじゃましま、」

・・・・真っ赤な部屋だなオイ!!!ビックリした!!!

さっきは電気が消えてたから分からなかったけど。

机、椅子、本棚、ベッド、布団、パソコン、タンス、ジュークボックス型のオーディオ、冷蔵庫、壁紙など部屋にあるあらゆるものが真っ赤だった。闘牛が見たら何処に突っ込んで行けば分からず立ち尽くすレベル。
その部屋の壁に一枚の布が貼っていた。
白い布に赤色で西洋風の甲冑を着た騎士が五人描かれており、その騎士にはそれぞれ名前が書いてあった。

真ん中の騎士には『男気一本(オトコギイッポン)』
右側の騎士には『助虎創地(スケトラソウジ)』
右側の2番目の騎士には『女峰覇鷹(ニョホウハタカ)』
左側の騎士には『剛角拓海(タケズミタクミ)』
左側の2番目の騎士には『一条闘魔(イチジョウトウマ)』

そして布の一番上に『真赤騎士(レッドナイト)』

「ん、ああ、それな、俺は小学生の頃一度この町を離れたんだ。その時に思い出に作ったやつだ。いつもつるんでた連中とな」

「この真赤騎士(レッドナイト)って名前は?」

「俺が赤色が好きだったからダチがテキトーにつけた。小学1年の終わりくらいかな?あんまり難しい漢字や英語が書けなかったから簡単なやつだろ?」

「へぇ、あ、これ可愛いですね」

私はベッドの枕元にあった真っ赤なライオンのヌイグルミを手に取る。

「ん?マッカーサー君か?・・・欲しいならやるよ」

「え?けど、」

「マッカーサー君も男より女の子の側にいたいらしいぞ」

『そうだ!我輩はむさ苦しい男より可愛い女の子と一緒にいたいガオ』

腹話術ですか、しかも凄い上手い!!!って今、可愛いって言ってた!私のことを可愛いって言ってた!

「ありがとうございます!その大切にしますから!一生大切にしますから!」

「ははは、一生なんて大袈裟だなあ、はははは!そのマッカーサー君は勇気をくれる頼もしい奴だ!大切にしてやってくれ!」

これってプレゼントってことでいいよね!ちょっと催促したみたいになっちゃたけどプレゼントってことでいいよね!いいよね!男気先輩からの初めてのプレゼント!大切にするからね!マッカーサー君!だから私のさっきの夜這いはナイショにしてね!

結局、ブルーウェイ、青園彩夏、春陽、色々あったけど聞けずじまいに終わった。男気先輩が珍しく、いや、初めて聞かないでくれオーラを出していたから。

そして時は流れ、男気先輩の家にお世話になり一年が経過した。私はその間一度も家に帰らなかった。ただ親からは一度だけ電話があった。

『進学でも就職でも好きにしろ』

くどくど何かを喋っていたが簡単にまとめたらこの一言で終わる。相変わらず心配するどころか完全に放置することに決めたらしい。家は義理姉と義理弟と私で自由に使って構わないらしい。時々は帰るから綺麗に使えと。金や住む場所を与えさえすれば親の義務は果たしていると思っているのだろうか?まあ、義理姉は喜ぶだろうが義理弟は私と同様に家に、姉に近付きたくないと言っていた。しかも私達は毎月1人10万もの生活費を貰っているにもかかわらず毎日のようにメールや電話で金を貸してと頼み込んでくるらしい。ちなみにアイツは私の連絡先は知らない。教えてないからだ。

「進路、か。どうしようかな」

私も今年で中学3年だ。そろそろはっきりさせなければいけない時期だと思ってる。男気家の優しさに甘え続ける事は無理なんだ。

「一年も経てば、初恋も冷めるものだと思ってたのに」

男気先輩の事が時間が経てば経つほど益々好きになっていく。

そういえば最近気になる事がある。

男気先輩が最近学校に行っていないようだ。

男気先輩は今年で高校3年だ。男気先輩は面倒だからサボるというような人じゃない。休むにしても何かしら理由があるはずなのだ。ただそれとなく聞いても答えてもらえず、喫茶店の調理場にも入らなくなった。朝は私の鍛練には付き合ってくれて朝食も三人一緒に食べるが、その後はいつもの赤の学ランではなく私服(赤色が主なのは変わらないが)で外出して深夜に帰ってくる。
一子さんに聞いたがこんな事は初めてらしくよくわからないそうだ。

ある日、この町を揺るがしかねないニュースが飛び込んできた。

ブルーウェイの青園彩夏とレッドナイトの男気一本が決闘(タイマン)!!!

私はその話を聞いたのは学校で、昼休みにクラスの悪がっているが実は不良じゃない男子が興奮ぎみに友人と話していたのが聞こえてきて、ついソイツの腕を掴んで屋上まで連れ出して話をさせた。逃げようとしたので壁際に追い込んで両腕を壁に突き出して逃げ道を塞ぐ。

「さっきの話、詳しく聞かせてよ」

何故かは知らないがソイツは顔を赤くして照れながらポツポツと語り出した。

ソイツの先輩が決闘を目撃したらしい。
昨日の深夜、その先輩が彼女にフラレた腹いせに丑の刻参りをしてやろうと護国神社を訪れたそうだ。

まあ、訪れた理由はとりあえず無視だ。

ライダースの青園彩夏に赤色の短ランの男気一本が向かい合って立っていた。

何やら話しているようだったが、バレると怖いため少し離れた場所から見ていたため会話は聞き取れなかったらしい。

すると男気一本がコインをポケットから取り出し真上に弾く、両者が各々の構えをとりコインが地面に落ちた瞬間に殴り合いが始まったらしい。

「で!結果は!赤くなってないでさっさと答えなさい!!!」

いや、結果は分かってる。だって今日の朝もいつも通りだったから。

「男気一本です!!!灯士さん顔が近い!近いって!!!」

最初の方は青園彩夏が一方的に攻めてたけど男気一本には全然効いてなかったらしく、その場から一歩も動かす事が出来ずその後は男気先輩が一方的に攻めだし最後は強烈なアッパーで青園彩夏を撃破したらしい。

その決闘を目撃した先輩とやらが救急車を呼んで、成り行きで付き添いすることになり、青園彩夏は全治1ヶ月の入院コースと医師から聞いたらしい。

何でだろう凄く嫌な予感がした。私は急いで教室に戻り荷物をまとめて帰ろうとすると、ちょうど次の授業の先生、担任が教室に入ってきた。

「オイ!灯士!もう授業が始まるぞ!」

「義理姉が亡くなったので帰ります!」

「お前の義理のお姉さんは今月だけでも4回亡くなってるぞ!せめてマシな言い訳しろ!って止まらんか!灯士!」

私は担任を無視して、駐輪場へ行き自転車に乗り急いで男気家に帰った。帰ったが男気先輩はもう家にはいなかった。
喫茶店の方に行くといつも通りに営業していた。店に入ってきたのが私だと気付くと一子さんは悲しげな表情になった。

「男気先輩は?男気先輩はどこに!!!」

「もうアメリカ行きの飛行機に乗ってる頃よ」

「え?アメリカ?何で急に?」

「私も今日、夜子ちゃんが学校へ行った後聞かされたのよ。パパには話を通してあったらしいけど」

「男気先輩は何か言っていませんでしたか?」

私の質問に一子さんは首を横に振った。

私は暫く呆然としながら暮らしていた。気が付くと1日が終わってるそんな毎日。

せめて一言くらいあったらと思う。

男気先輩は何で黙って行ってしまったの。

私は所詮気紛れで拾われただけの可哀想な女だったんだろうか?

男気先輩がいなくなって3日後。

たった3日でこの町に異変が起きた。

私が教室に入るとドアに近い席に座る男子の顔が頬が腫れているのが目に入った。頬を腫らした男子の友人がどうしたのかを聞いていた。

「いきなり殴られたんだよ。金も巻き上げられて最悪だよ」

私のクラスだけではなく、他のクラスにもカツアゲにあった奴が出てきていた。それだけではない。夜遅く出歩いていた女生徒が車の中に押し込まれ拉致されそうになったり、空き巣に入られたり、スクーターを用いた引ったくりなど町の犯罪が急増したのだ。

皆口々に言う。

『男気一本がいなくなり、レッドナイトのメンバーも一人を除き全員が町を出て行った。いやその一人も学校を辞め就職し実質現役を引退。暗黒の時代が、ブラックドラゴンが町を支配していたような時代に戻ってしまう』

いや、実際はもっと酷いことになっていった。

ブラックドラゴンはあくまで闇に潜み、九頭神外道が頂点に君臨し絶対の支配を強いていた。ブラックドラゴンは統率のとれた軍そのものだった。しかしブラックドラゴンの残党共にそんな知能はなくただ暴れ回り、更には新規のチームが続々と現れて所構わず町中、一般人がいようがいまいが関係なしに大乱闘、抗争の果てに消えては新たに出てきての繰り返し。中にはヤクザが後ろ楯になってもらい見返りに薬を売り捌くチームがいた。

『ブルーウェイの青園彩夏は?アイツが退院して出てくればなんとかなるか?』

『いや、アイツは無理だろ。器じゃないよ。男気にボロクソにやられたし、なにより女だしな』

『警察は何やってんだよ!!!税金泥棒が!!!さっさと解決しろよ!!!』

『この前パトカーがひっくり返されて火をつけられたらしいぜ』

『男気が別格過ぎた。アイツがいるだけで馬鹿共は大人しかった。男気を本気で怒らせてはならないと知ってる。男気がこの町に来たばかりの頃、ブルーウェイが壊滅させられかけた時に現れて、一人でブラックドラゴンの兵隊、約五千人以上を叩き潰し、当時この町の最強九頭神兄弟を再起不能になるまで暴力をふるった『修羅』と呼ばれた頃の恐怖を知ってるから』

『アイツが出て行かなければこんな事にはなっていなかった』

『全部アイツのせいじゃね?』

日が経つごとに少数だったが男気先輩を悪く言う者まで出始めた。

私はそれが許せなかった。許せないならどうする?

そしてとうとう私の友達も被害にあった。

その友達は行きたかったコンサートのチケットが売りに出されており『急な仕事が入ったため行けなくなりました定額でお譲りします。連絡下さい』と張り紙があり、何で張り紙?と思いつつもどうしても行きたかったので連絡したのだ。そして受け渡しは『知り合いに持っていかせる。コンサート当日のドームの近くの○○○喫茶店の前』と連絡が返ってきたので安心しきってしまった。指定先は人通りが多いので妙なことにはならないだろうと。
コンサート当日に指定された場所に行くとごく普通の青年が座っていた。
そして青年が『頼まれた例の物です』と封筒を渡してきたので友人もお金を入れた封筒を相手に手渡した。

『さっき確認したんですけど、一応間違ってないか確認してもらっていいですか?』

青年にそう言われて友人も中身の確認をすると中にはチケットではなく白い粉が入ったパケ袋だった。
するといきなり後ろから肩を叩かれ振り向くと男三人が立っていた。

『おいおい、こんな人が多い場所で薬の取引はダメでしょ』

その友人は違うと否定するが、

『全部見てたんだよね。会話は聞こえなかったけど。何が違うの?そっちの彼が君に薬を渡して金を受け取り、君は金を渡して薬を受け取った。取引は成立してるよね?なんなら警察呼ぶ?監視カメラとか探せば君らの取引している映像なんてすぐ見つかるんじゃない?あとあんまり騒ぐと辺りにいる奴等が警察呼んじゃうよ』

友人に薬の入った封筒を渡した青年は友人と男達が話している隙に逃げ出したらしい。もしかするとソイツもグルだった可能性が高い。

『口止め料で50万だ。50万円で黙っててやる。払えないなら、そうだな、いい店を知ってるからちょっとその店で裸になって男にサービスする簡単な仕事をしてもらおうかな?』

期限は今日の21時まで、友人の工面できるのは15万で精一杯らしく親に相談できず、どうしたらわからず泣き付いてきたのだ。

金なら私や友人達でかき集めればなんとかなるかもしれない。今回はだ。脅迫し払えないなら風俗で働けという奴等が今回だけで終わるとは到底思えない。

「場所を教えて。私が一人で行ってくる。え?どうする気かって?大丈夫!!!私に任せておきなさい!」

私は学校を早退(今月に入り義理姉5回目のお亡くなりを使い)して男気家へ。今日は定休日で一子は出掛けていた。
私は自分の使っている部屋へ、枕元にあるマッカーサー君を力強く抱き締める。

『大丈夫!!!大丈夫!!!大丈夫!!!大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫!!!私は強くなった!!!怖くない!!!怖くない怖くない怖くない怖くない!!!毎日男気先輩が稽古をつけてくれた!!!自信を持て!!!男気先輩なら迷わずに突き進んでた!!!マッカーサー君勇気を頂戴!!!震えを止めてよ!!!お願い!!!』

マッカーサー君を抱き締めていた力が更に増す。

「ん?何か当たった気が、」

ヌイグルミの中に何が入ってる?

「あ、ファスナーあったんだ」

マッカーサー君の中にあったのは折り畳まれた紙が入っていた。
私はその紙を開いてみた。

『夜子へ、この手紙はお前にやる前に仕込んでいたものではなく俺がこの町を去った日、お前が学校に行った隙に部屋に入り、この手紙をマッカーサー君の中に入れておいた。断りもなく女の部屋に入るのは悪いと思ったが面と向かって話すのが無理そうなので手紙という形にした』

男気先輩からの手紙だ!!!

『はっきり言おう。夜子、お前は既にそこらの不良が束になっても相手にならないほど、いや、そこらの格闘技のプロ選手よりもはるかに強い。むしろ強すぎて一般人相手にしてはいけないレベルで強くなった。俺もお前の鍛練に付き合っていた時、こいつは俺よりも強くなると思っていた。内心いつもヒヤヒヤしていたもんだ。いつ抜かれてもおかしくないと』

これは嘘だな。だって最後の鍛練の時、実戦形式で戦ったけど一発もクリティカルヒットしなかった。しかも男気先輩はその数時間前に青園彩夏(春陽)とやり合ってるから。その後一方的に叩きのめされたし。

『この町で俺を抜き去っていくであろうと思える奴が三人も現れた。灯士夜子、鮫島希色、青園春陽だ』

んんんん?誰か分からない奴がいるぞ!誰だ鮫島希色って!!!

『俺は自分の事を猿山の大将くらいが限界だと思ってた。小さい町で最強とおだてられようと外に出れば大した事がない男だと』

・・・どこの世界に一人で数千人相手できる人間が大した事がない人間になるのだろうか?男気先輩の中の基準が謎。

『だがお前達と出会ってからというものの自分にはまだ上があると知った。まだ俺の上限はここじゃないとお前達が教えてくれた』

・・・まだ上があるんたですか!!!あのひょっとして丸型の宇宙船で宇宙から飛来して来ませんでしたか?月を見たら大猿になるとか?変身とかしませんよね?金、赤、青に髪色変化しませんよね?

『だが今の俺の体ではその域には到達できないだろう。俺は謎の病に患っている。これを治さない限りは無理だろう』

え?病?あんな元気そうだった男気先輩が病?

『夜子、希色、春陽、お前らの顔を見ていると体が熱くなるんだ』

「・・・・は?」

『お前達の事を考えると集中力が乱れ、食欲不振になり、夜も眠れないほどに気になり出したりする。こんな事ではお前達とやり合うのに100%の力を発揮できない』

・・・・ちょっと待とうか。あれ?もしかしてアレだよね?謎の病じゃないよねコレ?

『これは青園彩夏と出会った頃に発症して、アイツが亡くなった頃くらいに治ったと思ってた』

完全アレやん!!!アレですやん!!!小学生かおのれは!!!

しくったああああああ!!!ワンチャンスどころか脈あったじゃん!!!三人というのは引っかかるけども!!!男気先輩カムバッアアアアアアアク!!!クソッ、過去に戻れるなら夜這いしにいったのに彼女発覚ショックで逃げた私を殴ってやりたい!!!いや、もういっその事私が男気先輩を押し倒すわ!!!

男気先輩・・・私の事好きになってくれてたやああああん!!!

『俺はこの病を克服し、強く、いや、強さだけじゃなく男気ある最高の男になって必ず帰る』

克服しなくていいから今すぐ帰って来て下さい!!!!
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