探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず

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吐き出そう、全てを。

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女神の魂が安置された地下室から出た後すぐに、女神教の方達は拘束されました。
もはや信仰する女神様にあんなことを言われてしまっては暴れる気すらも起こらないらしく、だらりと脱力したまま、地下牢へと連れられていました。
その背中をぼぅっと眺めていると、人形操術使いの少女2人が私に声をかけました。

「ねえ! 私達も地下牢、入ったほうがいいじゃない?」
「そうよ! 神子を殺そうとした!」

己の罪を大声で告発する2人に、女王様は静かに首を横に振りました。

「あなた達の身柄は……私が引き受けます。こんな幼児に、洗脳まがいな教育をしていたなんて。もういい加減、ロマドとは手を切らなければなりませんね」

女王様が悲しげに2人の頭を撫でると、2人はキョトンとして女王様を見つめます。

「怒ってないの? どうして?」
「私達、悪い子だよ? なんで?」

そう言っていた2人でしたが、「「あ」」と声を揃えて、女王様にまくしたてました。

「風魔! 風魔が来る!」
「え?」
「攻めてくる! 風魔が!」
「どういうことで……」
「一旦、外に出たほうがいい」

エリクル様の言葉に、女王様が固まります。

「風魔が攻めてくるか、確認しないと」
「……従いましょう」
「いいのかよ」

不満げにレオン様がエリクル様を睨みつけますが、女王様は従うように促します。
舌打ちを一つして、そのまま外へ走って行ってしまいました。
私達もそれを追いかけると、何と信じられないことに、上空に大きな風魔が見えました。

「なっ」
「へぇ……あれ、どうにかするのか」

王宮は人形で荒らされた後。
動ける兵士も少ない状況で、絶望的に思われたその時。

『止まれ』

聞き覚えのある声が、頭に直接響きました。

「旦那様……!」

旦那様が風魔の前に飛び、風魔を睨みつけていました。
きっと中の人達に言っているのでしょう。

『これ以上進めば、俺はお前達を敵とみなす。俺はアルジェルド・マルシムだ』

名を名乗り、最大限の警戒を引き出す旦那様。
風魔はしばらく沈黙した後、不利だと思ったのかゆっくりと向きを変えて、そのままロマドへ向かって行きました。

「………旦那様!!」

私が旦那様を大声で呼べば、旦那様が振り返りました。
顔色がとても悪いです。
私の元まで降りてくると、旦那様はキュ、と私を抱きしめました。

「無事で……よかった」
「あ、え、旦那様」
「お前に何かあったら、俺は」
「はいそこ。イチャつかない。アル、限界だろ」

ずい、と間に入ってきたエリクル様に、旦那様は目を見開きました。

「何でお前がここにいる」
「何だっていいじゃないか。どうせ後から地下牢行きだし。アル、全力で戻ってきたんだろ。今、体力死んでるんじゃないか?」
「む……」

図星だったようで、そのままずるりと旦那様は私に倒れ込みました。

「旦那様!?」

旦那様がここまで衰弱しているのは初めて見ました。
オロオロしていると、旦那様が小さな声で、「気持ち悪い……」とつぶやきます。

「大丈夫ですか?」
「ラティアンカに背中さすってもらったら、治る」
「そ、そうですか」
「何だ。案外余裕そうだな」

茶化すようなエリクル様の発言に、「うるさい」とだけ返して黙り込んでしまう旦那様。
私はその背をとりあえず、言われるがままさすってみせます。

「エリクル様。地下牢に入る前に、教えてください。何で裏切ったのか」

ロールがエリクル様に詰め寄りました。
エリクル様は気まずそうにロールから顔を逸らします。

「それはちょっとできないかな」
「ハドル」

ふと、女王様がエリクル様に向かってそう言いました。
ハドルとはなんでしょう。
ポカンとしていると、女王様がエリクル様に向かって頭を下げました。

「は、母上……!?」
「おいクソババァ、なにやって」
「任を解きます。これ以上、辛い思いをしないでください」
「………それは、ズルいんじゃないか? 女王様」

くしゃり、と泣き出す寸前の幼子のように歪ませて、エリクル様は小さくそう言いました。

「酷いなぁ。僕、最後まで悪役やろうと思ってたんだよ?」
「ごめんなさい。でも、話してやってください。あなたなら全て、知っている」
「はは……酷いな。本当に。僕があなたに逆らえるわけないじゃないか」
「どういうことですか?」

うまく理解ができません。
状況を呑み込めずにいる私達に、エリクル様がどこか、諦めたように言いました。

「話すよ、全部。何で裏切ったのかも」
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