追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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超大規模依頼編

第三十五話 荒れ果て屋敷

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そんなシオンのダイエット大作戦があった件の後、アレクは二日間離れていた間のことを問われた。

「アレク。家の用事って聞いていたが……そもそもアレクの家ってどこなんだ?」
「うぐ」

ライアンが目を輝かせて聞いてくる。
興味津々だ。
実はアレクはライアン達に粗方のことは吐いたものの、元ムーンオルト家出身だということだけは秘密のままだ。
別に喋ってもいいのだが、タイミングを忘れていた。
今回家の事情として片づけられたのは、学園長が担任であるアリーシャにそう伝えたからであろう。

「実は、家の用事じゃないんだよね」
「えーっ!? じゃあ、何だって言うんだ!?」

ライアンの大声で、シオンに縋りついていたユリーカが顔を上げる。
シオンもアレクのほうを見た。

「ギルドで超大規模依頼に参加してて」
「何だそのチョーダキボイライって」
「国から出される特別な依頼ってやつらしいよ」
「すげぇな! アレクいつの間にギルドに入ってたんだ?」
「本当は参加資格なかったんだけど、あっち側の人に頼まれてね……」

頼んできたヨークのことを思い出す。
今思えば、子供の自分に恥を忍んで頼み込むことは堪えただろう。
しかもアレクの役割は本来、妻であるミーシャが請け負うはずのものだったのだ。

「アレク君、お家の用事じゃなかったのね」
「うん。ちなみになんだけど……僕、前はムーンオルト家にいたんだよね」
「……え?」
「ムーンオルト家って、あの?」
「あの」
「英雄家?」
「うん」

しばらくの沈黙が教室を満たした。
次の瞬間、三人の叫び声が響き渡る。

「そっ、そんな凄いお家だったの!?」
「知らなかった……!」
「でもでもアレク! 俺、英雄家のことあんまり知らないけどさ! ガディさんとエルルさんもそうってことだろ!?」
「うん。後、ギルドのSSSランク持ってる」
「えーーーーっ!?」
「すっげぇな!」
「あの強さに納得がいったわ……」

三人共アレクの深い部分の、天族の秘密すら知っているというのに、こんな基本的な情報をアレクは伝え忘れていた。
双子の知名度は冒険者の間では高いものの、アレク達の世代にはそもそも冒険者というものに馴染みがない。
自由度が高く、荒くれ者が多いからかもしれない。

「でも、アレク君の苗字は確かサルトだったよね? ムーンオルトは名乗らないの?」
「そこにもちょっと色々とした事情が重なってて……」

そこで、アレク達のクラスメイトが教室に入ってきた。
今までは四人だけだったものの、クラスメイトが入ってくると話しづらい話題だ。

「放課後、みんな空いてる?」
「空いてるけど」
「よかった。来てほしい場所があるんだ」

アレクの発言に、三人は揃って首を傾げた。

◆ ◆ ◆

放課後、約束通りアレクは三人をとある場所へと案内した。
学園から徒歩で二十分ほどの位置にあるそこへついたアレクは、三人のほうへ振り返った。

「ここが行きたかった場所なんだよね」
「ここって……」
「わ、私知ってる! お母さんが言ってた!」

ここでシオンが顔を青くしてアレクに捲し立てる。

「ここ、荒れ果て屋敷だよ! 呪われてて、買い手がつかないっていう……!」
「え? でも、ナハールの町のど真ん中だぞ?」
「一年前くらいに持ち主が亡くなったらしくて。でも、改装工事をしようとすると、なぜか工事の人が事故で怪我をしちゃったりするから、放置されてたはず……アレク君、肝試しでもするの?」

シオンがそう尋ねたが、アレクは首を横に振る。

「実はね……」

キィ、とドアの軋む音がした。
続けて、トタトタという軽い足音。
噂の荒れ果て屋敷のほうから聞こえてくる。

「ゆゆゆ、幽霊!」
「こんな真っ昼間で?」
「おっ、俺が斬る~~っ!」

ユリーカだけ平然としているものの、二人はパニックだ。
しかし屋敷から出てきた影は、嬉しそうにアレクに抱きついた。

「お兄さん!」
「アリス、ただいま!」
「……え」

幽霊だと思っていたものが可愛い少女であったため、ライアンとシオンが困惑する。
ユリーカは事情が呑み込めず、別の意味で混乱していた。

「紹介するね、この子はアリス。僕、この子を引き取って、依頼の報酬として荒れ果て屋敷を貰ったんだ」
「よろしくお願いします」

ペコリとアリスが頭を下げる。
情報量の多さに三人は瞬きを繰り返す。
ライアンがぽけっと口を開けたまま尋ねた。

「アレク、パパになったのか」
「いや違うでしょ」

ユリーカのツッコミがやけに響いた。





アレクに案内され、三人は荒れ果て屋敷の中に恐る恐る足を踏み入れた。

「あ、アレク君。呪われない?」
「大丈夫! 昨日何とかしたから」
「何とかってなにぃ~っ」

怯えを隠せないシオンに、アリスが面白げに笑った。

「お姉さん、大丈夫だよ」
「あ、アリスちゃん……」
「この子達はお姉さんにいたずらなんてしない」
「この子達ってなに~~っ!?」

更にシオンが怯えてしまったため、アレクは苦笑いをしてキッチンへと通した。

「みんな、座って」
「お、おう」
「うん……」

遠慮気味で三人が席につくと、ポポンッ! と軽い音と共に、紅茶や茶菓子のセットが出現する。

「え、マジック?」
「違うよ。この子のおかげ」

アリスが手招きすると、家の天井から何か降ってくる。

「ぴぃっ!?」

シオンが悲鳴を上げたが、それはフワフワとした可愛らしいフォルムを持つ、羽を持った生き物だった。

「この子が家事を手伝ってくれてるの」
「むまっ」

独特の鳴き声を持つ生き物が一鳴きする。

「アレク君……」
「どういうこと」
「最初から説明させてもらおうかな」

アレクは超大規模依頼で起こったことを掻い摘んで説明し始めた。
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