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第九話 飛ぶだけなんだけど
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「とっ……飛べっ!!」
呪文というか、命令を唱えれば、箒は浮いてくれる。
でも、制御が利かなくて、私は学院の壁に激突した。
「いっ、痛~」
「ルーシュさんっ! またですか!」
先生からの叱責もこれで何回目か。
空を飛ぶという授業は本当に厄介だ。
◆ ◆ ◆
「本日から、箒を使って空を飛ぶ授業を始めます」
魔道士として生きていくために必要な技術、空を飛ぶ魔法。
各自、箒を使って空を飛び、最終的には箒でレースをする。
この授業が始まり三日間、私は上手く飛べずにいた。
「きゃああああっ!?」
勝手に箒がぐわんぐわんと揺れて、とんでもないところへ飛んでいく。
その度に先生に助けてもらっているのだけど、周りの人の視線が痛い。
ついでに言えば、フォレットさんが面白そうに私のほうを見てくる。
気に入らない私が魔法を失敗してくれることが嬉しいのだろう。
でも、これは本当にシャレにならない。
クラスで飛べていないのは私だけだ。
「ルーシュさん……いいですか? 箒はあなたの従者です。思うがままに操るものですよ?」
先生が呆れ顔で、何度も何度も同じセリフを繰り返してくる。
情けない限りだ。
箒は言うこと聞いてくれないし、ステルスはできないし。
私ってば、ダメだな。
居残りでやっても上手くいかず、箒の暴走で1日が終わって帰宅した。
「リア」
「レオナルド……」
「やあ、リアちゃん」
「ライヴ先輩……」
見れば、寮の前で二人が立っていた。
待っていてくれたのだろうか。
レオナルドはため息をついて、私にこう言った。
「お前……箒で上手く飛べないらしいな?」
「うっ」
「今日はステルスじゃなくて、箒で飛ぶことを目標にしよう。それが第一!」
ライヴ先輩が明るくそう言ってくれたので、私はお言葉に甘えることにした。
自分の使う箒は自分の魔力をかけて、腕を捻ることによって空中に出現させる。
私は箒を出現させ、その上に跨った。
「試しに飛んでみろ」
「……飛べっ!!」
フワリ、と箒が風を孕んで空を飛ぶ。
ここまでは順調なのだ。
しかし。
「きゃあああああっ!!」
やはり箒の暴走が始まった。
ブンブンと空を飛び回る箒に私は振り回される。
このままじゃ、寮にぶつかっちゃう!
その時だった。
「……止まれ」
箒が急に空中で動きを止めた。
困惑していると、箒に跨ったレオナルドが私のところまで飛んできた。
「今、俺が風の魔法を使って箒を止めている」
「レオナルドの属性は水じゃ……」
「水と風だ」
2つも属性を持っているなんて、さすがレオナルドだ。
するとレオナルドは私の横に並んで、ゆっくりと説明していく。
「いいか? 今から魔法でお前の箒を操るから、その感覚を覚えろ。わかったか?」
「うん」
レオナルドに箒を操ってもらい、私は穏やかに空を飛んだ。
本当なら、空を飛ぶことはこんなにも楽しいことなんだ。
それをわかって、私はもっと空を飛びたくなった。
「よし、じゃあやってみろ」
「うん!」
一度地面に降りて、私はもう一度浮いてみる。
さっきの感覚を思い出さなきゃ……
「う、上手くいってる?」
「ああ。ちゃんと飛べてる」
安心したその時だった。
グラッ
「!?」
「わっ!」
突然箒が、地面に向かって一直線に落ち始めた。
下で慌てて私を捕まえようとしているライヴ先輩が見える。
でも。
「来ないでくださいっ!」
「リアちゃん!?」
これは私の箒だ。
私が何とかしないと!
「ううっ……動けぇえ~」
マズイ、地面が迫ってきてる。
私の考えを察してか、レオナルドの叫び声が聞こえてきた。
「リア! 箒に強く命令しろ! お前は空を飛べる! 先程のように!」
箒に、命令。
地面が本当に近くなった時、私は力強く叫んだ。
「飛べぇぇぇぇっ!!」
クンっと体が強い力で引っ張られ、私は思わず目を閉じた。
「………」
「り、リアちゃん」
ライヴ先輩の声が聞こえてきて、恐る恐る目を開けた。
地面スレスレで箒は空中で停止していた。
ほっと私は息をつく。
「よ、よかった」
「無茶しやがって」
レオナルドが空から降りてくる。
でも、これでようやく空を飛べるようになったのかな。
「と、飛べ」
命令してみれば、箒は思うがままに従ってくれた。
ようやく私、飛ぶことができるようになったんだ!
「飛べた! 飛べたよ、レオナルド、ライヴ先輩!」
私が空の上ではしゃいでいた時、二人がこんな会話をしているとは知らなかった。
「可愛いだろ? 僕の妹は」
「俺の恋人だ」
「もう君の恋人じゃないだろ?」
「じゃあお前も兄じゃないはずだ」
「………」
「……………」
レオナルドとライヴ先輩は、とても仲良しに見えた。
呪文というか、命令を唱えれば、箒は浮いてくれる。
でも、制御が利かなくて、私は学院の壁に激突した。
「いっ、痛~」
「ルーシュさんっ! またですか!」
先生からの叱責もこれで何回目か。
空を飛ぶという授業は本当に厄介だ。
◆ ◆ ◆
「本日から、箒を使って空を飛ぶ授業を始めます」
魔道士として生きていくために必要な技術、空を飛ぶ魔法。
各自、箒を使って空を飛び、最終的には箒でレースをする。
この授業が始まり三日間、私は上手く飛べずにいた。
「きゃああああっ!?」
勝手に箒がぐわんぐわんと揺れて、とんでもないところへ飛んでいく。
その度に先生に助けてもらっているのだけど、周りの人の視線が痛い。
ついでに言えば、フォレットさんが面白そうに私のほうを見てくる。
気に入らない私が魔法を失敗してくれることが嬉しいのだろう。
でも、これは本当にシャレにならない。
クラスで飛べていないのは私だけだ。
「ルーシュさん……いいですか? 箒はあなたの従者です。思うがままに操るものですよ?」
先生が呆れ顔で、何度も何度も同じセリフを繰り返してくる。
情けない限りだ。
箒は言うこと聞いてくれないし、ステルスはできないし。
私ってば、ダメだな。
居残りでやっても上手くいかず、箒の暴走で1日が終わって帰宅した。
「リア」
「レオナルド……」
「やあ、リアちゃん」
「ライヴ先輩……」
見れば、寮の前で二人が立っていた。
待っていてくれたのだろうか。
レオナルドはため息をついて、私にこう言った。
「お前……箒で上手く飛べないらしいな?」
「うっ」
「今日はステルスじゃなくて、箒で飛ぶことを目標にしよう。それが第一!」
ライヴ先輩が明るくそう言ってくれたので、私はお言葉に甘えることにした。
自分の使う箒は自分の魔力をかけて、腕を捻ることによって空中に出現させる。
私は箒を出現させ、その上に跨った。
「試しに飛んでみろ」
「……飛べっ!!」
フワリ、と箒が風を孕んで空を飛ぶ。
ここまでは順調なのだ。
しかし。
「きゃあああああっ!!」
やはり箒の暴走が始まった。
ブンブンと空を飛び回る箒に私は振り回される。
このままじゃ、寮にぶつかっちゃう!
その時だった。
「……止まれ」
箒が急に空中で動きを止めた。
困惑していると、箒に跨ったレオナルドが私のところまで飛んできた。
「今、俺が風の魔法を使って箒を止めている」
「レオナルドの属性は水じゃ……」
「水と風だ」
2つも属性を持っているなんて、さすがレオナルドだ。
するとレオナルドは私の横に並んで、ゆっくりと説明していく。
「いいか? 今から魔法でお前の箒を操るから、その感覚を覚えろ。わかったか?」
「うん」
レオナルドに箒を操ってもらい、私は穏やかに空を飛んだ。
本当なら、空を飛ぶことはこんなにも楽しいことなんだ。
それをわかって、私はもっと空を飛びたくなった。
「よし、じゃあやってみろ」
「うん!」
一度地面に降りて、私はもう一度浮いてみる。
さっきの感覚を思い出さなきゃ……
「う、上手くいってる?」
「ああ。ちゃんと飛べてる」
安心したその時だった。
グラッ
「!?」
「わっ!」
突然箒が、地面に向かって一直線に落ち始めた。
下で慌てて私を捕まえようとしているライヴ先輩が見える。
でも。
「来ないでくださいっ!」
「リアちゃん!?」
これは私の箒だ。
私が何とかしないと!
「ううっ……動けぇえ~」
マズイ、地面が迫ってきてる。
私の考えを察してか、レオナルドの叫び声が聞こえてきた。
「リア! 箒に強く命令しろ! お前は空を飛べる! 先程のように!」
箒に、命令。
地面が本当に近くなった時、私は力強く叫んだ。
「飛べぇぇぇぇっ!!」
クンっと体が強い力で引っ張られ、私は思わず目を閉じた。
「………」
「り、リアちゃん」
ライヴ先輩の声が聞こえてきて、恐る恐る目を開けた。
地面スレスレで箒は空中で停止していた。
ほっと私は息をつく。
「よ、よかった」
「無茶しやがって」
レオナルドが空から降りてくる。
でも、これでようやく空を飛べるようになったのかな。
「と、飛べ」
命令してみれば、箒は思うがままに従ってくれた。
ようやく私、飛ぶことができるようになったんだ!
「飛べた! 飛べたよ、レオナルド、ライヴ先輩!」
私が空の上ではしゃいでいた時、二人がこんな会話をしているとは知らなかった。
「可愛いだろ? 僕の妹は」
「俺の恋人だ」
「もう君の恋人じゃないだろ?」
「じゃあお前も兄じゃないはずだ」
「………」
「……………」
レオナルドとライヴ先輩は、とても仲良しに見えた。
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