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モブにも驚くべき背景があるんですのよ5
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想像していたより筋肉質な背中をさらりと流れる白銀の髪。すっきりとした鼻筋に、眼鏡の奥の理知的な瞳。口元は少し意地悪そうで……そこがまたいい! 頭脳で勝負な文系キャラの王道であり、最高峰。二次元でも最高だったのに、三次元になるとこんなにも魅力が増すとは……キース様恐るべしだわ。
「やぁ、フィオナ壌。ようこそいらっしゃいました」
はぅ……声も麗しい。
「ごきげんよう、みなさま」
フィオナは悪役らしいツンとした声で言って、その場にいた全員の顔を順に見た。
「……殿下は?」
フィオナの問いにキースが答える。
「ラフェル殿下はまだのようですね。それから……」
「アリスもまだね」
どうやら、ヒロインのアリスと王子ラフェルの登場待ちらしい。
このゲームに登場するお妃候補は、全部で五人だ。大本命の侯爵令嬢フィオナ、上流貴族のシルビア、サラ、シャルロッテ。そして、手違いにより選ばれてしまった田舎育ちのアリスだ。
お妃選定の期間中、五人は【春風の宮】と呼ばれる離宮で共同生活を送るのだ。わかりやすく表現するならば、ラフェルの後宮といったところだろうか。西洋史にハレムの文化はなかったような気もするけれど、ゲームだし……そこをつっこむのは野暮ってもんだろう。
春風の宮の中でも、フィオナは一番広くいい部屋をあてがわれていた。それに対して、アリスは隅っこの物置部屋だ。離宮はめちゃくちゃ広くて、わざわざ物置部屋なんて使わなくてもって言いたいところだけど、とにかくヒロインは序盤はとことん不遇なのだ。ただ、その代わりにヒロイン特典も多数ある。今がまさにそうだろう。
「遅れてごめんなさいっ」
糖衣にくるまれた菓子のような甘い声で謝罪を口にしながら、満を持してヒロインアリスが登場した。
ユーザーに親近感を抱かせるためか、彼女の容姿は世界観に反して純和風だ。ストレートの黒髪に黒い瞳。白い肌に、桃色の頬と唇。背はフィオナより10センチは低くて、とても華奢だ。日本のアイドルを想像してもらえると、わかりやすい。
「あら、ラフェル殿下もご一緒で?」
苛立ちを滲ませた声でフィオナが問う。シルビア達も複雑そうな表情で、連れ立って登場したアリスとラフェルを見ている。
ラフェルは彼女達の微妙な空気を気にも留めず、にこりと笑ってうなずいた。
「そこで偶然アリスと会ったから一緒に来たんだ。なぁ、アリス」
「は、はい! 本当に偶然で……驚きました」
アリスははにかむような笑顔をラフェルに見せる。
「アリスのドレスがとてもいいなと話していたんだ。やはりお茶会には淡い色のドレスがふさわしい。キースとルークもそう思わないか?」
アリスは春らしい淡いピンクのドレスを着てきていた。裾にはお花モチーフの飾りがついている。頭には薔薇のベッドドレスだ。少女趣味すぎて私の好みではないが、愛らしい顔立ちのアリスにはよく似合っている。ラフェルもご満悦のようだ。
キースもにこやかに微笑んだ。
「えぇ、優しいピンク色がとてもよくお似合いです」
ず、ずるいわ。やっぱりアリスに転生すべきだった。私もキース様に褒められたい! モブのエマじゃ視界にすら入れないじゃないの。
「でも、他の皆さまも比べられないくらい素敵ですよ。特に……フィオナ嬢はいつもと雰囲気が違いますね」
キースが言うと、ラフェルもまじまじと彼女を見てうなずいた。
「たしかに。いつもより可愛らしい感じだな。私は好きだぞ」
「……別に。いつも通りですわ」
ラフェルのストレートすぎる褒め言葉をフィオナはそっけなく受け流した。……ように見えるけど、私は気づいてしまった。ぷいっと彼から顔を背けたフィオナの耳が、赤く染まっていることに。
……か、かわいすぎか! フィオナってば、ツンデレ! 彼女がお妃の座を狙っているのは権力欲なのか、ラフェルへの恋心からなのか、プレイ中はいまいちわからなかったのだけど……この世界の彼女は後者で間違いないだろう。ツンデレヒロイン好きの私としては、俄然応援したくなってきた。
「髪に飾った白いリボンも控えめでいいな」
ラフェルってば、天然鈍感キャラのくせにいいとこに気がついてくれるじゃないの。そこに、フィオナの手下キャラであるサラがすかさず口を挟んだ。
「えぇ、本当に! 主役の白薔薇を邪魔しない配慮ですわね。さすがですわ」
サラは意味ありげな視線をアリスに注ぎながら言った。
「やぁ、フィオナ壌。ようこそいらっしゃいました」
はぅ……声も麗しい。
「ごきげんよう、みなさま」
フィオナは悪役らしいツンとした声で言って、その場にいた全員の顔を順に見た。
「……殿下は?」
フィオナの問いにキースが答える。
「ラフェル殿下はまだのようですね。それから……」
「アリスもまだね」
どうやら、ヒロインのアリスと王子ラフェルの登場待ちらしい。
このゲームに登場するお妃候補は、全部で五人だ。大本命の侯爵令嬢フィオナ、上流貴族のシルビア、サラ、シャルロッテ。そして、手違いにより選ばれてしまった田舎育ちのアリスだ。
お妃選定の期間中、五人は【春風の宮】と呼ばれる離宮で共同生活を送るのだ。わかりやすく表現するならば、ラフェルの後宮といったところだろうか。西洋史にハレムの文化はなかったような気もするけれど、ゲームだし……そこをつっこむのは野暮ってもんだろう。
春風の宮の中でも、フィオナは一番広くいい部屋をあてがわれていた。それに対して、アリスは隅っこの物置部屋だ。離宮はめちゃくちゃ広くて、わざわざ物置部屋なんて使わなくてもって言いたいところだけど、とにかくヒロインは序盤はとことん不遇なのだ。ただ、その代わりにヒロイン特典も多数ある。今がまさにそうだろう。
「遅れてごめんなさいっ」
糖衣にくるまれた菓子のような甘い声で謝罪を口にしながら、満を持してヒロインアリスが登場した。
ユーザーに親近感を抱かせるためか、彼女の容姿は世界観に反して純和風だ。ストレートの黒髪に黒い瞳。白い肌に、桃色の頬と唇。背はフィオナより10センチは低くて、とても華奢だ。日本のアイドルを想像してもらえると、わかりやすい。
「あら、ラフェル殿下もご一緒で?」
苛立ちを滲ませた声でフィオナが問う。シルビア達も複雑そうな表情で、連れ立って登場したアリスとラフェルを見ている。
ラフェルは彼女達の微妙な空気を気にも留めず、にこりと笑ってうなずいた。
「そこで偶然アリスと会ったから一緒に来たんだ。なぁ、アリス」
「は、はい! 本当に偶然で……驚きました」
アリスははにかむような笑顔をラフェルに見せる。
「アリスのドレスがとてもいいなと話していたんだ。やはりお茶会には淡い色のドレスがふさわしい。キースとルークもそう思わないか?」
アリスは春らしい淡いピンクのドレスを着てきていた。裾にはお花モチーフの飾りがついている。頭には薔薇のベッドドレスだ。少女趣味すぎて私の好みではないが、愛らしい顔立ちのアリスにはよく似合っている。ラフェルもご満悦のようだ。
キースもにこやかに微笑んだ。
「えぇ、優しいピンク色がとてもよくお似合いです」
ず、ずるいわ。やっぱりアリスに転生すべきだった。私もキース様に褒められたい! モブのエマじゃ視界にすら入れないじゃないの。
「でも、他の皆さまも比べられないくらい素敵ですよ。特に……フィオナ嬢はいつもと雰囲気が違いますね」
キースが言うと、ラフェルもまじまじと彼女を見てうなずいた。
「たしかに。いつもより可愛らしい感じだな。私は好きだぞ」
「……別に。いつも通りですわ」
ラフェルのストレートすぎる褒め言葉をフィオナはそっけなく受け流した。……ように見えるけど、私は気づいてしまった。ぷいっと彼から顔を背けたフィオナの耳が、赤く染まっていることに。
……か、かわいすぎか! フィオナってば、ツンデレ! 彼女がお妃の座を狙っているのは権力欲なのか、ラフェルへの恋心からなのか、プレイ中はいまいちわからなかったのだけど……この世界の彼女は後者で間違いないだろう。ツンデレヒロイン好きの私としては、俄然応援したくなってきた。
「髪に飾った白いリボンも控えめでいいな」
ラフェルってば、天然鈍感キャラのくせにいいとこに気がついてくれるじゃないの。そこに、フィオナの手下キャラであるサラがすかさず口を挟んだ。
「えぇ、本当に! 主役の白薔薇を邪魔しない配慮ですわね。さすがですわ」
サラは意味ありげな視線をアリスに注ぎながら言った。
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