転生侍女は悪役令嬢のお気に入り!

一ノ瀬千景

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私のご主人様は本当に悪人なのかしら1

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 王子ラフェルの最有力花嫁候補であるフィオナの朝は早い。手早く身支度を整えると、礼拝堂で朝のお祈り。
ささっと朝食を済ませ、外国語と歴史の勉強→楽器の練習→ダンスレッスン→乗馬の訓練→裁縫と刺繍の手習いとエンドレスにスケジュールがつまっている。その合間を見計らって、王宮主催の行事や夜会にも顔を出さねばならない。彼女は涼しい顔で日々こなしているが、なかなかの超人ぶりだと心底感心する。

 いいとこのお嬢様も楽じゃないのねー。今日なんて昼食もとれずじまいだったし、お付きの私までぐったりだ。

「お疲れではないですか?」

 すべての予定を終え部屋に戻ってきたフィオナの髪をほどきながら、私は彼女を気遣った。

「そうね……今日はちょっと忙しかったわね」
「香油で手足をマッサージしましょうか? ラベンダーの香りは安眠にいいそうですよ」
「お願いするわ」

 私は掌にたっぷりとオイルをのせて、フィオナのマッサージを始めた。マッサージも美容部員時代に勉強したから得意なのだ。凝りやむくみをとるだけで、メイクのノリが全然変わってくるのでオススメだ。

「加減はどうですか?」

 私はすっかり接客モードだ。

「ちょうどいいわ」

 フィオナの手は驚くほど冷え切っていて、手首なんて折れそうに細い。健康的とは言い難いコンディションだ。やはりどう考えても、無理しすぎのスケジュールなんじゃないだろうか。

「あの……余計なお世話かも知れませんが、もう少し睡眠と休息の時間を増やされてはいかがでしょうか? このままじゃ倒れてしまいますよ」

 フィオナは苦笑いで、小さく首を横に振った。

「睡眠は増やせるものなら増やしたいけどね。今のスケジュールから削れるものがないわ」
「ラフェル殿下に相談してみては? 殿下はお優しいですから、きっと」

 ラフェルは世間知らずのお坊ちゃんといった感じでやや頼りないのだが、悪人ではない。心根の純粋な優しい青年だ。フィオナのこの状況を知れば、きっとなんとかしてくれるのではないだろう。我ながらナイスアイディアだと思ったのが、フィオナにはきっぱりと拒絶されてしまった。

「殿下には殿下のすべきことがある。女のワガママで煩わせるべきじゃないわ」
「……はい」

 フィオナが男性だったら、確実にときめいてた……と思う。私のご主人様ってば、かっこいいじゃないの。

「それに、将来王妃となればもっと忙しくなるのよ。このくらいはこなせるようにしておかないと」
「なるほど、さすがはフィオナ様。でも……あまり無理はしないでください。心配ですから」

 身体を壊してしまったら、王妃にはなれないじゃないか。せっかく努力しているのに、本末転倒だ。
 フィオナは驚いたような顔で私を見つめている。

「心配なんてされたの、初めてかも知れないわ。エマは変わった子ね」

 そう言うフィオナの表情は柔らかく、なんだか嬉しそうに見えた。私のご主人様ってば、かわいいじゃないの。


 あれ? でも、このゲームのラストって……王妃になるのはアリスなのよね。フィオナはそのラブラブなふたりの婚約式を邪魔しようとした罪で流刑になるのだ。
 このラストって、どうやっても不変なのかしら。将来のためにと、こんなにも努力しているフィオナが罪人になってしまうなんて、あまりにもやるせない。

 う~ん、なんとかならないのかしら。ツンデレなだけで、悪い子じゃないのよね。別にラフェルがアリスを好きになるのは勝手だけど、フィオナにももう少しハッピーな結末にならないもんかしら。







 











 
 

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