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Epilogue
③〈完〉
しおりを挟む——まずいわ。どうしても、そっちの方に行っちゃうわね……
麻琴はまた、話を逸らすことにした。
「あ、あのねっ、結婚指輪のことなんだけど……」
久城 礼子を裏切る形になって、とても心苦しいのだが、今も麻琴の左手薬指で輝く婚約指輪と同じモニ◯ケンダムで、気に入ったデザインを見つけてしまったのだ。
——久城さんデザインのオパールのピンキーはこれからも毎日つけるから、それで勘弁してもらおう、っと……
気に入ったマリッジリングは、今朝まだベッドの中で、激しかった夕べの「余韻」でぼんやりと微睡む麻琴に、『どれがいい?』と恭介が見せたタブレットのサイトにあったのだが。
——なんだか、ものすごい勢いで「結婚話」が進んでるような気がするんだけれども……
麻琴が気に入ったのは、プラチナとゴールドが重なりあったようなコンビのリングで、女性用にはハーフエタニティになったタイプもあった。
恭介が言うには、金属を叩いて加工する鍛造製法のそのリングだと、オーダーを受けてからの生産になるため早く決めるに越したことはない、らしい。
「僕はきみが選んでくれたものなら、なんだって毎日つけるよ」
恭介は麻琴のエンゲージリングに、ちゅ、とくちづけした。
「ねぇ、麻琴。ほかに……まだなにかある?」
上目遣いで黒い笑みを浮かべる。
——やっぱり、いつまでも話は逸らせないわね。
麻琴は肩を竦めて、首を左右に振った。
「And then…shall we get going,my wifey?」
〈それじゃあ…そろそろどうかな、僕の奥さん?〉
恭介の視線の先には、寝室が見える。
「Yes,let’s…my hubby.」
〈えぇ、いいわよ…あなた〉
麻琴は観念して、ようやく首を縦に下ろした。
だけど、その顔は知らず識らずのうちに、期待に満ちた華やかな笑顔に彩られていた。
「真実の愛」〈 完 〉
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