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Chapter 3
①
しおりを挟む月曜日の朝、わたしは今までになく清々しい気持ちで、職場のあるSAKURAヒルズの敷地内に入った。
SAKURAヒルズは、オフィスビルやショッピングモールはもちろんレジデンスや総合病院までも備えた「複合タウン」だ。
特に四月初旬のこの時期は、その名にちなんで植樹された桜並木が見頃となり圧巻だ。
土曜日の夜、出会ったばかりの男と一夜限りのセックスをしたことについては、一ミリの後悔もない。
むしろ、コンプレックスの塊だったこのおっぱいを「パフィーニップル」だと崇め奉ってくれて、何度もわたしを絶頂に誘ってくれた彼には、感謝しかない。
翌朝、わたしは彼がまだ寝ている間に、部屋からそーっと出た。
彼とはあんなに一晩じゅうセックスしまくったけれど、お互い名前も訊かなかった。彼にとってもわたし同様、One Night Only(ワンナイ)の相手だったからであろう。迷惑にならないように、とっととズラかるに限る。
——なんだか、こういうのに手慣れていそうな男だったしな。
わたしは満開に咲き誇る桜の木を見上げた。
そのとき一陣の風が吹いて、はらはらはら…と桜の花びらが舞い落ちた。
「春ってやっぱり……出会いと別れの季節なのね」
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
「向井、おはよう。……早速だけど、光彩先生があんたを呼んでるわよ。土曜日、休出だったんでしょ?なにかやらかした?」
オフィスビルに入居する職場に到着したわたしが自分のデスクに着くと、挨拶も早々に同期の斎藤 いづみが、訝しげに訊いてきた。光彩先生というのは、わたしの付いてる上司のことだ。
「えぇーっ、やらかしてなんかないよ。むしろ、いつもの時間まで働かせて悪かった、って言って、黒毛和牛のフィレコースを奢ってもらったもん」
「へぇ、そうなんだ。それってお台場にある外資系ホテルのとこのでしょ?」
「そうそう、それそれ」
「とにかく、光彩先生急いでるみたいだからさ。早く行きなよ」
斎藤に促されて、わたしはボスのブースへと向かった。
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