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Chapter 3
②
しおりを挟む「……光彩先生、おはようございます、向井です。お呼びでしょうか?」
三回ノックしたわたしは、ドアの前で声をかけた。
「あ、向井さん、入ってきて」
ドアが開いて光彩先生が顔を出してきたので、中に入る。
「千葉先生、この子がわたしのアシストをしてくれているパラリーガルの向井さんよ」
光彩先生が傍らにいる人にわたしを紹介した。
主に、大企業向けの法務関係でのコンサルティング業に特化した民事専門の法律事務所・進藤綜合法律事務所がわたしの勤務先だ。
わたしはこの事務所の代表者の娘で弁護士の進藤 光彩先生の下で働いていた。
「初めまして、向井 真未と申します」
話がよく見えないが、紹介された限りは一応名乗って頭を下げておく。
「向井さん、新しく赴任した千葉先生よ。日本の弁護士資格はお持ちじゃないけど、アメリカのニューヨーク州の弁護士資格はお持ちなの」
頭を上げたわたしは、千葉先生を見た。
その瞬間、背中どころか全身から、冷たーい汗がどっと吹き出した。
——えっ、ま、まさか……っ⁉︎
「初めまして、千葉 佑亮です」
にっこりと微笑んだその人は——あの夜はなかったスクエアの眼鏡をかけてはいるけれど——紛れもなく、土曜日の夜中じゅうお互い盛りのついたサルのようにセックスしまくった、あの「One Night Only(ワンナイ)」だった。
——う、ウソっ⁉︎ な、なんで、この人がこんなところにいるのっ⁉︎
心臓がバクバクと音を立てて大暴走している。
——だれか自動体外式除細動器を持ってきて、わたしに然るべき処置を施してっ!
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