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Chapter 10
酔った勢いで素直になってます ⑤
しおりを挟む翌朝、わたしは将吾さんのベッドのコンランブルーのファブリックの中に包まれて目覚めた。
しかも、将吾さんとしっかりカラダを密着させて、抱き合って……お互いに一糸纏わぬ姿だった。
見事になーんにも身につけてなかった。
わたしは飛び上がるくらいびっくりした。
酔いがすっかり冷めたわたしは、昨夜の自分を反芻した。そして、自分のとった行動の大胆さを思い出して、驚愕した。昨日の自分は自分じゃないようだった。
約八年ぶりに再会した海洋と、キスしてしまったことも……
将吾さんの部屋に自分から行って、意識が飛ぶほどカラダを預けてしまったことも……
——お酒は怖い。特に、酔いが回る日本酒にはリキュールであろうと気をつけよう。
わたしは自分自身の迂闊さをものすごーく戒めた。
そして、朝に弱い将吾さんが目覚める前に、そっと離れて自分の部屋へ行こうと、衣服を探す。
ところが、同じベッドの中でごそごそしているのだ。
……将吾さんの目を覚ましてしまった。
寝起き直後の彼のご機嫌は、四方八方にひん曲がっていた。だけど、あどけない表情をした将吾さんは、まるで幼い子どものように見える。
以前、副社長のプライベートルームに仕事で入った朝に見たその表情を、まさか同じベッドの中で——最後まではしなかったとはいえ——熱い夜を過ごして目覚めた朝に見ることになるとは……
「……昨夜はよくも、煽りまくってくれたな」
覚醒した将吾さんはわたしに馬乗りになって、ベッドに引き留めた。
将吾さんは、せつなげにカフェ・オ・レ色の瞳を曇らせて、じっとわたしを見つめた。
「昨夜、おまえがあんなとろんとした色っぽい目でおれを誘ってきて……なのに、キスができないなんて……おれの方が『お仕置き』だった」
わたしは昨夜の恥ずかしすぎる自分を思い出し、真っ赤になって、将吾さんから目を逸らした。
「……ったく、おまえは」
将吾さんは、待ちかねて耐えきれないとばかりに、わたしの口を自分のくちびるで塞いだ。
たちまち、わたしの口は彼の舌でこじ開けられ、わたしの全部を吸い尽くしてやろうかと思ってるんじゃないかというほどの、激しいくちづけが襲ってくる。
それから、お互いの舌を探して、求めて……濃厚なやりとりが、長くながく続いた。
それは、わたしが昨夜してほしくてほしくてたまらなかった……将吾さんとのキスだった。
将吾さんの大きな手のひらが、わたしの乳房を包み込む。たちまち、その突端が硬くなる。
「……寄せて上げなくても、Cカップにはしてやる」
彼が不敵にニヤリと笑った。
——なんで、ブラのサイズがわかる?
これはさすがに彼の「経験の賜物」からだろうな、と思ったら、心の底からムカついた。
将吾さんがわたしの乳房の突端を口に含んで、舌で転がす。
「……ぅう……ん……っ」
昨夜の乱れたわたしが戻ってきそうだ。
わたしのカラダはもう、彼の愛撫に相当慣らされている。たぶん……もう、ちょっとやそっとでは離れられないくらいに。
——だけど。
「将吾さん、今、何時?」
今日は日曜日だ。仕事は休みだし、将吾さんの予定も特にないはずだけれども……
「うるさい。……おれだけを感じていろ」
そうは言っても……
わたしはサイドテーブルの時計を見た。
……七時四十五分だった。
「し…将吾さんっ、朝食の時間まであと十五分しかないよっ!」
わたしはものすごくあわてた。
この家の人たちは超多忙なので、なかなか一緒にご飯を食べることができない。
だから、せめて朝食だけはみんなで食べようと、仕事のある平日は午前七時、仕事のない休日は午前八時にダイニングルームに集まることが決まっているのだ。
家族のやりたいことを最大限に尊重する富多家にとっては数少ない、けれども家族の絆にとっては大切なルールだ。
「今朝くらい、いいから……それより、おまえを今度こそ最後まで抱きたい」
将吾さんはわたしを放す気はないらしい。
「わたしはイヤなの。日曜日の朝に二人して、朝ごはんに来なければ、やましいことしてるって思われるじゃん」
——いや、実際に疚しいことしてるんだけど。
「疚しくなんかねえよ。結婚して夫婦になるんだから」
将吾さんは至極真っ当なことを言って、わたしのくちびるにちゅっ、とキスをして、その先を求める。
——だけど。
わたしは彼の隙を突いてすり抜けて、ベッドの下に落ちていたもふもふの部屋着を拾い上げて、手早く身に着けた。
「お、おいっ!……おまえに欲情して勃ってるコレどうしてくれるんだ?」
将吾さんが指し示しながら、苦虫を噛み潰した顔の不機嫌の極致でわたしに問う。
——ごめんね。朝だから、ひときわ「元気」だよね?でも、家の人たちからあれこれ思われるのは、すっごく恥ずかしいから。
それに……やっぱり、最後まではしない方がいいから。
わたしは着替えと簡単なメイクをするために、自分の部屋のバスルームへダッシュした。
そして、大きな鏡に映し出された自分の肌を見て、気絶しそうになった。
将吾さんが、わたしのカラダのこんなところにもっ!っていうほど隅々まで、これでもかっ!っていうくらい、「真っ赤な花」を満開に咲かせていたから……
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