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Chapter 15
心よりカラダが正直になってます ⑪
しおりを挟む海洋の「相手」は一人ではなかった。
少なくとも五人はいた。
——でも、わたしには、わかっていた。
そこに「心」はないことを……彼女たちがただの「サンプル」だ、ということを……
海洋がわたし以外なら「できるかどうか」を試していただけだったということを……
根っからの理系の彼が「仮説」を立てて「立証」していたに過ぎないことを……
——だけど、わたしにはわかっていた。
わたし以外の人となら、ちゃんとできていたことを……
わたしで「満足」できない海洋が、これからもいろんな女の人を抱く、ということを……
そのとき、わたしは決意した。
——海洋を……「解放」してあげましょう。
だから、わたしは二十歳になる前に一世一代の恋を終わらせた。
そして、幼い頃から抱き続けてきた「海洋と結婚して、彼の子どもを産んで育てる」というささやかな夢を……
——永遠に手放した。
今まで、派手で自信家で、わたしとつき合えば自慢になると思ってるような男の人ばかり、わたしに近づいてきた。
または、わたしも自分と同じようなタイプで「割り切ったつき合い」ができると思い込んだ人とか。
そういう人たちを……いや、そういう人たちだからこそ……自分から誘って枕を並べた時期がある。
人知れず、海洋と別れたすぐあとだ。
なにも知らない華絵からはずいぶん心配されたし、説教もされたけれど……自暴自棄になったわけじゃない。確かめたかったのだ。
わたしも、海洋以外なら、できるかどうかを。「慣れている」人なら、わたしを悦ばせてくれるかもしれないということを。
——だけど、やっぱり、わたしはその男たちも「秒殺」してしまった。
だから、彼らとは一回きりの関係だ。気の毒に、自信があればある人ほど、ダメージが大きいらしく、本当に悪いことをしてしまった。
偶然、再会してしまったときなんか、怯えた仔犬の目をして、わたしをおどおど見ていた。
——大丈夫よ、だれにもチクらないから。ウワサになんて絶対にならないから、安心して。
どんな男の人でも、世の中で一番イヤなことに違いないもんなぁ……
だからこそ、将吾さんにも……「最後」までさせないように、心を砕いてがんばってきたのに。
たとえ最後までしなくても……あんなふうにわたしを乱してくれたのは……
たとえ最後までしなくても……オンナとしての悦びを味わわせてくれたのは……
——将吾さんが「初めての男」だったから。
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