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第九章 化学反応
34話
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病室へ戻ると八時半を回ったところだった。
「蒼兄、遅くまでごめんね?」
「いいよ。今日は鎮痛剤打ったって聞いていたから心配してたんだけど、意外と元気そうで良かった」
蒼兄は目を細めて笑った。
「明日相馬先生が帰国するんだろ? 空港からその足で来るって聞いてる」
「うん……」
どんな治療が始まるのか、少し不安で怖いと思っている自分がいた。でも、湊先生が治療自体は痛くないと言っていたので、その言葉だけは信じている。
ベッドへ上がると、藤原さんがやってきた。
「今日は早く休んだらどうかしら? 明日の治療は午後からになるから、午前にお風呂に入れるようなら入っちゃいましょう」
「はい」
薬を飲むと、蒼兄は藤原さんと一緒に病室を出た。
病室の照明を落としても、私は眠れずにいた。
明日から始まる新しい治療のことも気にはなる。けれども、心の大半を占めているのはツカサのことで――
佐野くんには申し訳ないくらい、ツカサのことを考えていた。
ツカサのことを考えると、ものすごくそわそわしてしまう。ツカサがどんな人で、ものごとをどんなふうに考えるのか、感じるのか。何が好きで何が嫌いなのか。完璧主義者で隙がないように見えるけれど、実は苦手なものがあったりするのかな、とか。
知りたい、という欲求を強く感じる。
「彼女とか、好きな人とか……いるのかな」
――ん? えぇと……いやいやいや、そうじゃなくて……。
別に何がどうというわけではない。ただ、気になるだけなのだ。
「なんだろう……。心がモヤモヤする」
ツカサのことを考えていると、こんな気持ちになることが多い。
一緒にいられたらそれだけでいいはずなのに。会話も続かないし、共通の趣味があるようにも思えない。でも、ここ数日間、一緒にいてくれた時間はひどく安心できるものだった。
こういうの、友達や家族、はたまたツカサ本人に理解してもらえるものなのかな……。
そんなことを考えているうちに眠りに落ちた――
痛い、かな……。
目を覚ましたのは夜中だった。時計は三時を指している。
「この痛みは引いてくれるのかな……」
どのくらい痛くなるのだろう。そんなことが不安で仕方ない。
夜の病院はどこまでも静かで暗い。そして、この階には私しかいないのだ。
その事実が静かさに拍車をかけ、孤独をよりいっそう引き立てる。
「こういうのは良くないな……。何か楽しいこと考えないと」
「そこで、ナースコールって選択肢はないのか?」
「っ……!?」
暗闇の中に昇さんが立っていた。
「あんまり我慢しなくていいって言っただろ?」
言いながら、昇さんは私と視線を合わせるためにしゃがみこんだ。
言い方も視線も、いつものようなぶっきらぼうな感じではなく、どこか哀れむような色がある。
私、そういうの好きじゃないんだけどな……。でも、人には「かわいそう」に見えるのかもしれない。
「昇さん、飲み薬をください。できれば睡眠薬も一緒に……」
「……薬を血中に入れることだってできるんだぞ?」
「一日に二回はちょっと……。まだそこまではひどくはないから、だから飲み薬がいいです」
言うと、白衣のポケットからピルケースを出してくれた。
「……予防的に三段階目の薬と睡眠薬でいいですか?」
「胃が荒れるぞ?」
「わかってます。でも、あの注射だって連続使用はあまり良くないのでしょう?」
「それはそうだが、明日には相馬が着くし、今日くらいはいいだろう。……なんで楽になれる方法を選ばない?」
一番手っ取り早く楽になれるのは注射を打ってもらい意識を手放すことだ。でも――
「楽になりたくないわけじゃないです。でも、そんなに簡単に楽になっちゃだめな気もするの」
この言葉には心底不思議そうな顔をされた。
「痛みって、なってみないとわからないでしょう? 実際にそれはつらいし発狂したくなることもある。でも、ここから何か得られるものはないのかな……って、最近少し考えるんです」
昇さんは何も言わずに私を見ていた。私は視線を落とし、
「この痛みで死ぬことがないのなら、どうして私はこの痛みを背負っているのかな、って……」
視線を昇さんに戻し、少しの笑みを浮かべた。
「知ってますか? 神様はね、その人に乗り越えられない試練は与えないんですって」
「キリスト教では有名な話だな」
「はい。私はキリスト教じゃないし、絶対的に神様を信じているわけでもないんですけど――でも、その教えは信じてもいいかな、って思えるんです」
「……それなら、痛みだって甘んじて受ける、か?」
そうではない……。
「たぶん、そんなきれいごとじゃないです。きっと、何か自分に存在価値を見出したいだけ」
存在価値、存在意義──考え始めてどのくらいの時間が経っただろう。それでもまだ答えは出ない。
「翠葉ちゃん、君は自分が無力だと思っているかもしれないけれど、君がいるだけで救われている人や幸せを感じる人間はいるんだぞ」
今日の昇さんはいつもと少し違う。どこか擁護されている気がした。
これは突っぱねたらいけないところ。でも、受け入れられるものでもない。
説明をしなくちゃ、説明を――
「昇さん……今まで何人の人にもそう言われてきました。でもね、上手に呑み込めなかったし消化することもできなかったの。たぶん、自分が納得できないとだめなんだと思う」
「……そうか」
昇さんは立ち上がってからスツールに座りなおした。
「せめて眠るまではついてる」
いつかツカサがしてくれたように左手を握ってくれた。
大きな手で、私の冷たい手を温めるように包んでくれた。
翌朝、基礎体温計の音で目を覚ます。と、昇さんが左手を握ったままベッドに突っ伏して寝ていた。
あのままずっとついていてくれたんだ……。
そこに藤原さんが入ってきた。
「おはよう」
「おはようございます」
少し小さな声で答えて基礎体温を計り始める。
藤原さんは容赦なく昇さんに声をかけた。
「ほらほら、こんなところで寝るくらいなら仮眠室にいきなさい」
「お~……朝か、寝なくちゃな」
昇さんは頭が回っていないみたい。
「痛みはどうだ?」
昇さんに訊かれ、口に計測器をくわえたままだった私は、「少し」の意味を表すために、右手の人差し指を親指を使って「このくらい」と表現した。
「そうか。相馬が到着する前には戻るから」
と、昇さんは壁に激突しながら病室を出ていった。
ピピッ――計測が終わり、やっと口が自由になる。
「昇さん、大丈夫かな……」
「大丈夫でしょう。どういう風の吹き回しか知らないけれど、愛妻家の男が今日は自分が夜勤するっていうから私はぐっすり眠らせていただいたわ」
これはなんて返したらいいのかな。
「どうやら相馬医師に御園生さんを会わせるのが相当不安みたいね」
口と柄が悪い人、だっけ……。せめて人相だけはいいことを祈りたい。
「ふらつきや頭のぼーっとした感じは取れてるかしら?」
「あ、はい。大丈夫です」
「なら、朝食の前にお風呂に入っちゃいましょう」
こんな朝早くに、とは思ったけれど、私の身体に合わせて動いてくれていることがわかるから、私は藤原さんの好意に甘えることにした。
お風呂に入り、頭からシャワーを浴びたものの、
「髪の毛、洗うのつらい……」
三十センチ切ったとはいえ、それでもロングヘアーに分類される長さだ。シャンプーやトリートメントを流しきるのにはそれなりに時間を要する。
洗っている間はずっと腕を上げていなくてはいけないし、筋力が落ちた自分にとってはとてもつらい作業だった。
「やっぱり切っちゃえば良かったかな……」
鏡に映る自分を見てそう思う。
「お母さんが来たら相談しようかな……」
髪の毛をタオルで巻き、クリップを留めるときにあることに気づく。
指の力もだいぶ落ちている。今の私にピアノは弾けるのだろうか――
小さな不安は瞬く間に膨れ上がり、目頭が熱くなって涙が零れそうになる。
「顔――顔、洗おうっ」
シャワーをわざと冷水にし、冷たい水で顔を洗った。そしたら、少しだけしゃっきりとした気分になった。
身体も洗ってバスルームから出る。と、一気に血の気が引いた。
「上がった?」
藤原さんに声をかけられても、声も出せなかった。
「御園生さん、入るわね」
すぐにカーテンが開く音がした。
しゃがみこんでいた私は、藤原さんの顔を見ることもできないくらいの吐き気に襲われていた。
どうしたら楽になれるか必死で考えていると、バサ、とバスタオルが目の前に広がった。
「横になっちゃいなさい」
バスタオルの上に横になると、幾分か楽になる。
「すぐに戻るわ」
藤原さんは一言残し、カーテンのさらに向こうにあるドアを出ていった。
数分で戻ってきた藤原さんの手にはタオルケットがあり、それを身体にばさりと掛けられる。
「貧血だから少し横になっていれば楽になるわ」
藤原さんは頭のタオルを取ると、粗いコームで髪の毛を梳かし、新しいタオルで拭いてくれる。
「髪の毛、洗うのがつらければシャンプー台で洗ってあげるから、無理して自分で洗わなくてもいいわよ」
「……でも、切ってしまえば済むことなので」
「手が回らないなら仕方ないけど、現状洗ってくれる人がいるんだからそんなに急いで切る必要もないわ」
「でも……」
「蓮が残念がるわよ?」
え……?
「先日、蓮が来たときにはびっくりしたわ。御園生さん、蓮のお客だったのね」
回らない頭を必死に回す。
「あの……蓮って――」
「宮川蓮、エバーグリーンの店長は私の甥なの」
「えっ!?」
「正確には異母姉妹の子どもだから半分甥、かしらね」
だいぶ吐き気は治まったものの、今度は頭がいっぱいだった。
「着替えられそう?」
「はい。でも、謎がいっぱい……」
「じゃ、まずはルームウェアを着て髪を乾かしましょう。そしたら朝食」
藤原さんは全く関連性のない話をして立ち上がった。
「蒼兄、遅くまでごめんね?」
「いいよ。今日は鎮痛剤打ったって聞いていたから心配してたんだけど、意外と元気そうで良かった」
蒼兄は目を細めて笑った。
「明日相馬先生が帰国するんだろ? 空港からその足で来るって聞いてる」
「うん……」
どんな治療が始まるのか、少し不安で怖いと思っている自分がいた。でも、湊先生が治療自体は痛くないと言っていたので、その言葉だけは信じている。
ベッドへ上がると、藤原さんがやってきた。
「今日は早く休んだらどうかしら? 明日の治療は午後からになるから、午前にお風呂に入れるようなら入っちゃいましょう」
「はい」
薬を飲むと、蒼兄は藤原さんと一緒に病室を出た。
病室の照明を落としても、私は眠れずにいた。
明日から始まる新しい治療のことも気にはなる。けれども、心の大半を占めているのはツカサのことで――
佐野くんには申し訳ないくらい、ツカサのことを考えていた。
ツカサのことを考えると、ものすごくそわそわしてしまう。ツカサがどんな人で、ものごとをどんなふうに考えるのか、感じるのか。何が好きで何が嫌いなのか。完璧主義者で隙がないように見えるけれど、実は苦手なものがあったりするのかな、とか。
知りたい、という欲求を強く感じる。
「彼女とか、好きな人とか……いるのかな」
――ん? えぇと……いやいやいや、そうじゃなくて……。
別に何がどうというわけではない。ただ、気になるだけなのだ。
「なんだろう……。心がモヤモヤする」
ツカサのことを考えていると、こんな気持ちになることが多い。
一緒にいられたらそれだけでいいはずなのに。会話も続かないし、共通の趣味があるようにも思えない。でも、ここ数日間、一緒にいてくれた時間はひどく安心できるものだった。
こういうの、友達や家族、はたまたツカサ本人に理解してもらえるものなのかな……。
そんなことを考えているうちに眠りに落ちた――
痛い、かな……。
目を覚ましたのは夜中だった。時計は三時を指している。
「この痛みは引いてくれるのかな……」
どのくらい痛くなるのだろう。そんなことが不安で仕方ない。
夜の病院はどこまでも静かで暗い。そして、この階には私しかいないのだ。
その事実が静かさに拍車をかけ、孤独をよりいっそう引き立てる。
「こういうのは良くないな……。何か楽しいこと考えないと」
「そこで、ナースコールって選択肢はないのか?」
「っ……!?」
暗闇の中に昇さんが立っていた。
「あんまり我慢しなくていいって言っただろ?」
言いながら、昇さんは私と視線を合わせるためにしゃがみこんだ。
言い方も視線も、いつものようなぶっきらぼうな感じではなく、どこか哀れむような色がある。
私、そういうの好きじゃないんだけどな……。でも、人には「かわいそう」に見えるのかもしれない。
「昇さん、飲み薬をください。できれば睡眠薬も一緒に……」
「……薬を血中に入れることだってできるんだぞ?」
「一日に二回はちょっと……。まだそこまではひどくはないから、だから飲み薬がいいです」
言うと、白衣のポケットからピルケースを出してくれた。
「……予防的に三段階目の薬と睡眠薬でいいですか?」
「胃が荒れるぞ?」
「わかってます。でも、あの注射だって連続使用はあまり良くないのでしょう?」
「それはそうだが、明日には相馬が着くし、今日くらいはいいだろう。……なんで楽になれる方法を選ばない?」
一番手っ取り早く楽になれるのは注射を打ってもらい意識を手放すことだ。でも――
「楽になりたくないわけじゃないです。でも、そんなに簡単に楽になっちゃだめな気もするの」
この言葉には心底不思議そうな顔をされた。
「痛みって、なってみないとわからないでしょう? 実際にそれはつらいし発狂したくなることもある。でも、ここから何か得られるものはないのかな……って、最近少し考えるんです」
昇さんは何も言わずに私を見ていた。私は視線を落とし、
「この痛みで死ぬことがないのなら、どうして私はこの痛みを背負っているのかな、って……」
視線を昇さんに戻し、少しの笑みを浮かべた。
「知ってますか? 神様はね、その人に乗り越えられない試練は与えないんですって」
「キリスト教では有名な話だな」
「はい。私はキリスト教じゃないし、絶対的に神様を信じているわけでもないんですけど――でも、その教えは信じてもいいかな、って思えるんです」
「……それなら、痛みだって甘んじて受ける、か?」
そうではない……。
「たぶん、そんなきれいごとじゃないです。きっと、何か自分に存在価値を見出したいだけ」
存在価値、存在意義──考え始めてどのくらいの時間が経っただろう。それでもまだ答えは出ない。
「翠葉ちゃん、君は自分が無力だと思っているかもしれないけれど、君がいるだけで救われている人や幸せを感じる人間はいるんだぞ」
今日の昇さんはいつもと少し違う。どこか擁護されている気がした。
これは突っぱねたらいけないところ。でも、受け入れられるものでもない。
説明をしなくちゃ、説明を――
「昇さん……今まで何人の人にもそう言われてきました。でもね、上手に呑み込めなかったし消化することもできなかったの。たぶん、自分が納得できないとだめなんだと思う」
「……そうか」
昇さんは立ち上がってからスツールに座りなおした。
「せめて眠るまではついてる」
いつかツカサがしてくれたように左手を握ってくれた。
大きな手で、私の冷たい手を温めるように包んでくれた。
翌朝、基礎体温計の音で目を覚ます。と、昇さんが左手を握ったままベッドに突っ伏して寝ていた。
あのままずっとついていてくれたんだ……。
そこに藤原さんが入ってきた。
「おはよう」
「おはようございます」
少し小さな声で答えて基礎体温を計り始める。
藤原さんは容赦なく昇さんに声をかけた。
「ほらほら、こんなところで寝るくらいなら仮眠室にいきなさい」
「お~……朝か、寝なくちゃな」
昇さんは頭が回っていないみたい。
「痛みはどうだ?」
昇さんに訊かれ、口に計測器をくわえたままだった私は、「少し」の意味を表すために、右手の人差し指を親指を使って「このくらい」と表現した。
「そうか。相馬が到着する前には戻るから」
と、昇さんは壁に激突しながら病室を出ていった。
ピピッ――計測が終わり、やっと口が自由になる。
「昇さん、大丈夫かな……」
「大丈夫でしょう。どういう風の吹き回しか知らないけれど、愛妻家の男が今日は自分が夜勤するっていうから私はぐっすり眠らせていただいたわ」
これはなんて返したらいいのかな。
「どうやら相馬医師に御園生さんを会わせるのが相当不安みたいね」
口と柄が悪い人、だっけ……。せめて人相だけはいいことを祈りたい。
「ふらつきや頭のぼーっとした感じは取れてるかしら?」
「あ、はい。大丈夫です」
「なら、朝食の前にお風呂に入っちゃいましょう」
こんな朝早くに、とは思ったけれど、私の身体に合わせて動いてくれていることがわかるから、私は藤原さんの好意に甘えることにした。
お風呂に入り、頭からシャワーを浴びたものの、
「髪の毛、洗うのつらい……」
三十センチ切ったとはいえ、それでもロングヘアーに分類される長さだ。シャンプーやトリートメントを流しきるのにはそれなりに時間を要する。
洗っている間はずっと腕を上げていなくてはいけないし、筋力が落ちた自分にとってはとてもつらい作業だった。
「やっぱり切っちゃえば良かったかな……」
鏡に映る自分を見てそう思う。
「お母さんが来たら相談しようかな……」
髪の毛をタオルで巻き、クリップを留めるときにあることに気づく。
指の力もだいぶ落ちている。今の私にピアノは弾けるのだろうか――
小さな不安は瞬く間に膨れ上がり、目頭が熱くなって涙が零れそうになる。
「顔――顔、洗おうっ」
シャワーをわざと冷水にし、冷たい水で顔を洗った。そしたら、少しだけしゃっきりとした気分になった。
身体も洗ってバスルームから出る。と、一気に血の気が引いた。
「上がった?」
藤原さんに声をかけられても、声も出せなかった。
「御園生さん、入るわね」
すぐにカーテンが開く音がした。
しゃがみこんでいた私は、藤原さんの顔を見ることもできないくらいの吐き気に襲われていた。
どうしたら楽になれるか必死で考えていると、バサ、とバスタオルが目の前に広がった。
「横になっちゃいなさい」
バスタオルの上に横になると、幾分か楽になる。
「すぐに戻るわ」
藤原さんは一言残し、カーテンのさらに向こうにあるドアを出ていった。
数分で戻ってきた藤原さんの手にはタオルケットがあり、それを身体にばさりと掛けられる。
「貧血だから少し横になっていれば楽になるわ」
藤原さんは頭のタオルを取ると、粗いコームで髪の毛を梳かし、新しいタオルで拭いてくれる。
「髪の毛、洗うのがつらければシャンプー台で洗ってあげるから、無理して自分で洗わなくてもいいわよ」
「……でも、切ってしまえば済むことなので」
「手が回らないなら仕方ないけど、現状洗ってくれる人がいるんだからそんなに急いで切る必要もないわ」
「でも……」
「蓮が残念がるわよ?」
え……?
「先日、蓮が来たときにはびっくりしたわ。御園生さん、蓮のお客だったのね」
回らない頭を必死に回す。
「あの……蓮って――」
「宮川蓮、エバーグリーンの店長は私の甥なの」
「えっ!?」
「正確には異母姉妹の子どもだから半分甥、かしらね」
だいぶ吐き気は治まったものの、今度は頭がいっぱいだった。
「着替えられそう?」
「はい。でも、謎がいっぱい……」
「じゃ、まずはルームウェアを着て髪を乾かしましょう。そしたら朝食」
藤原さんは全く関連性のない話をして立ち上がった。
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